輪廻の中では、たとえ「天界」で生まれても天道の生命であるため、老いや寿命が訪れる苦悩から免れることはできません。仏教では「天人五衰」と表現されます。輪廻の中にいる限り、苦しみは続くのです。
仏教には、「仏界」という世界が「六道輪廻界」の上にあります。「六道輪廻界」から解脱すると、苦しみから解放された悟りの世界「仏界」に行くことが出来ます。「仏界」はすべての世界を超えた「如来の世界」を表しています。仏教の修行内容や即身仏について、詳しく知りたい方は、こちらもご覧下さい。
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バラモン教とヒンドゥー教はどこが違う?
仏教などの隆盛によってバラモン教の勢力が弱まり、「支配者の宗教」からの改革を迫られました。インド各地の土着宗教を吸収して形を変えながら、民族宗教である現在のヒンドゥー教へと変化していきました。
バラモン教はヒンドゥー教の前身
名前が無かったインドの民族宗教に、ヨーロッパ人が名前をつけました。アーリア人の定住から仏教興起までの間の古代ヒンドゥー教を「バラモン教」、仏教興起から現代までを「ヒンドゥー教」と、改革の前後を区別するために違う名前にしました。こういった経緯から、バラモン教はヒンドゥー教の前身といえます。
引き継がれる輪廻転生の考え
バラモン教から、ヒンドゥー教へと変化した際に、取捨選択により大きく変わった部分もありましたが、聖典は「ヴェーダ」のままです。輪廻転生やカーストも、そのままヒンドゥー教へと引き継がれました。
ヒンドゥー教はヴィシュヌやシヴァの神が主神
バラモン教では、「インドラ」「ヴァルナ」「アグニ」などが重要な役割を持った神でしたが、ヒンドゥー教では、「ヴィシュヌ」や「シヴァ」など、バラモン教の頃には脇役だった神が重要な役割を持った神となりました。
バラモン教から受け継がれるカースト制度は抜け出せるのか?
現代のインド国内におけるカーストに対する意識は、都市部では曖昧になってきており、ヒンドゥー教徒の中でも自分のカースト階級を知らない人もいます。しかし、農村部では今でもカーストの意識が根深く残っています。
他の宗教へ改宗する
カーストはヒンドゥー教内の身分を分ける制度なので、他の宗教に改宗することでカーストの枠から解放されます。差別される苦しみから抜け出して自由になるために、イスラム教へ改宗した人がたくさんいます。
インドでは消滅しかけていた仏教も、カーストによって苦しんでいた不可触民の受け皿となり、復活しています。不可触民の指導者であるビームラーオ・アンベードカルが改宗したのを切っ掛けに、約50万人の不可触民が仏教に改宗しました。
カーストと結びつかないIT関連の職業は救いの道
カーストの一部であるジャーティの中でも、固有の職業を持ったジャーティは世襲制なため、ジャーティから抜け出すのが困難です。IT関連の職業は、新しい仕事なのでジャーティ内に区分がありません。身分や区分に関係なく仕事に就けるので、インドでは人気がある職業です。
諦めるしかない
インドでは、憲法(1950年に制定)によって、カーストを理由とした差別を禁止しています。しかし、インド社会では国民の8割がヒンドゥー教徒なため、カーストによる差別が深く根付いています。抜け出す術を見つけられない人は、カーストを作ったヒンドゥー教の教えにある、来世での生まれ変わりに希望を持って生活しています。
仏教と同じ時期に生まれた宗教
紀元前500年頃、インドにはヴェーダの宗教ではない、新しい思想をする思想家や宗教家、修行者がいました。彼らのことを「サマナ(沙門)」といい、お釈迦様もその内の一人でした。この頃、「サマナ(沙門)」からは、新しい宗教や思想がたくさん生まれました。現代に生まれた世界一ふざけた宗教に興味のある方は、こちらもご覧ください。
ジャイナ教は厳しい苦行をする宗教
ジャイナ教とは、「ジナの教え」を意味しており「ジナ教」とも呼ばれています。同じ時期に生まれた仏教と同様に、バラモンによる支配やカーストを否定しています。ほとんど他国には伝わらなかった宗教ですが、国内では深く根付いており、インドの文化に影響を与え続けています。
現在も、450万人ほどのジャイナ教徒がインドの社会で生活し、事実上の1つのジャーティを形成しています。ジャイナ教では殺生を禁じているため、生物を傷つけない職業は限られています。大半の人が商業関係の仕事に就いており、宝石・貴金属小売業や金融業などの業種が多いため、比較的裕福な人が多いです。
ジャイナ教の三宝とは?
ジャイナ教徒として生活する上での、基本的な心得を「三つの宝」と呼んで重んじています。「正しい信仰(正信)」「正しい知識(正知)」「正しい行い(正業)」この3つは、解脱を目的として生活する上で重要だとされています。
ジャイナ教の五禁戒とは?
出家者の修行生活において基本となる「五つの大禁戒」と、在家者の「五つの小禁戒」は項目が同じです。「生き物を傷つけない(不殺生)」「虚偽の言葉を口にしない(真実語)」「他人の物を盗らない(不盗)」「性的行為を行わない(不淫)」「何も所持しない(無所有)」この5つの禁戒を守って、ジャイナ教徒は生活しています。
ジャイナ教にとっての不殺生は、「身体的行為」「言語的行為」「心理的行為」に適応されるので、言葉や心の中で他人を中傷することも、罪だと考えます。不殺生の厳守は極めて重要なので、根菜を食べてはいけません。虫も踏まないように注意しながら歩き、動物に襲われても反撃してはいけません。
アージーヴィカ教
アージーヴィカ教は、仏教と同じ時期に生まれた宗教ですが、その教えは仏教やジャイナ教とは違っていました。アージーヴィカ教では、運命論を説き、修行も解脱も、意思を持って行動することも否定しました。
碑文によって、13世紀まで南インドにアージーヴィカ教徒がいたと実証されましたが、その後の確認は出来ませんでした。一時期は、バラモン教・仏教・ジャイナ教に並ぶ大きな宗教でしたが、現在は信徒はいないとされています。
現在のインド国内で信仰されている宗教
現在のインド国内で信仰されている宗教は、大きく分けて6種類です。外務省の国勢調査(2001年)による信者数の割合は、ヒンドゥー教徒(80.5%)・イスラム教徒(13.4%)・キリスト教徒(2.3%)・シク教徒(1.9%)・仏教徒(0.8%)・ジャイナ教徒(0.4%)・その他(0.7%)です。
イスラム教
イスラム教は、唯一絶対の神アッラーを信仰する唯一神教です。預言者ムハンマドが、神から啓示を受けて語った内容が、「コーラン」と呼ばれる聖典になりました。「ムスリム」とはイスラム教徒のことをいいます。イスラム教徒は、コーランの教えで定められた、基本行動と行動範囲を守ることが義務とされています。
キリスト教
キリスト教は、イエスを救世主(キリスト)とし、神を信仰することで救われるとする宗教です。多くの信者は、「父なる神」「その子キリスト」「聖霊」を唯一の神(三位一体・至聖三者)として信仰しています。キリスト教は、世界で一番信者が多いといわれています。
シク教
シク教は、宗教家であるナーナクが詩歌によって教義を伝えて誕生した、インドでは比較的新しい宗教です。信仰心の厚いシク教徒は、詩歌を毎日朗踊します。ターバンを着用することが戒律の上で義務化されているため、インド陸軍では軍帽に代わる制式ターバンが定められています。
シク教の誕生時より、富裕層の帰依が多かったことから、社会的に活躍する人が多く、職務等で海外へ行く人もたくさんいました。海外で仕事をするシク教徒を見かけた外国人によって、ターバンの着用はインド人の風習であるとの世界的なイメージが出来上がりました。
カースト制度とともにインドに生き続けるバラモン教の考え
バラモン教は、ヒンドゥー教へと変化しました。しかし、カーストの思想は引き継がれたままです。憲法でカーストによる差別を禁止していても、インドの国民の8割がヒンドゥー教徒なため、生活に深く根付いたカーストによる差別は、今でも無くなっていません。
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