現実は「水槽の脳」が見せる仮想現実?証明できる?否定意見も合わせてご紹介

デカルトは真理を発見するため、あらゆるものに対して懐疑的でした。現実どころか夢さえも疑う彼は、「もし全知全能の悪魔が私を欺いているとしたら、本当は1+1=5であるのに『1+1=』と私が思考する度に、悪魔に欺かれて『2』を導き出している可能性」があるとまで考えていました。

この思考法を「方法的懐疑」と呼びますが、日頃当たり前だと見過ごしているものが嘘かもしれないという点に、水槽の脳と酷似したものを感じませんか。目に映る現実は偽りで、本当の現実は認識の外にあるという点が共通しています。

ドイツの哲学者イマニュエル・カント

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カントによれば、私たちの暮らす世界は、生まれつき与えられた鋳型で加工されたものに過ぎません。それゆえ、私たちが本当の世界の姿を知ることは敵いませんが、一方で本当の世界は実在すると主張しています。なぜなら、元となるデータなくして加工はありえないからです。

このカント哲学をわかりやすい形にしたものが、水槽の脳であると考えることができます。もっとも本物の世界の実在を肯定するカントに対し、パトナムが出した結論は、本物の世界の有無は証明できないというものでした。

水槽の脳を否定する意見も多い

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この世界はコンピュータが構築したに過ぎず、本物の世界は別にあるのではないか。オックスフォード大学の教授であるニック・ボストロム氏やスペースX社CEOであるイーロン・マスク氏もこの説に賛同する一方で、物理学的観点からこれをありえないと主張する学者も存在しています。

世界を作り出せるコンピュータはありえない

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理論物理学者ゾハール・リンゲル氏とドミトリー・コブリジン氏は、論文の中で「世界をシミュレートするだけのメモリーを持つコンピュータを開発するには、全宇宙の原子を集めても足りない。だから、この世界が仮想現実であることはありえない」と証明しました。

しかし、ここでもう一つの仮説が浮かびます。私たちが認識している「現実」的にありえないとしているその「現実」もまた、水槽の脳が生み出した架空の「現実」に過ぎないのではないでしょうか。つまり、物量的観点から不可と証明したところで、それが正しいかはわからないということです。

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