ヒトガタの形代に名前を書くと、その時点で、自分の分身のような存在が現れることになります。それは、ヒトガタに他人の名前を書いたとしても、効力を発揮してしまいます。誰かの名前が書かれたヒトガタを傷つけると、場合によっては相手に危害が加わるおそれがあるのです。
実はあれも依り代
意外と身近に、依り代になるものは多く存在しています。ここでは少しだけ、聞いたことがある儀式について、あるいは小学生、中学生のころに手を出したことがある方もいるだろう儀式にまつわる、依り代についてお話します。
呪いの藁人形
これに関しては、説明するまでもないでしょう。「丑の刻参り」で有名な、あの五寸釘を刺される藁人形もまた、依り代として存在しています。藁人形は明らかに人間の形に仕立て上げられていますし、中に対象者の髪の毛なども入れたりします。人間の心理として、強い恨みを持っていると、「縁切り」だけでは済まなくなるのです。
こっくりさんの10円玉
こっくりさんの10円玉も、実は依り代なのです。10円玉にこっくりさんが宿って、質問に対する回答をしてくれるという、一種の降霊術ともいえる危険な遊びです。こっくりさんをしたあとの10円玉も、ずっと持っていると良くないことがおきるといいますから、何らかの穢れを帯びているのでしょう。
「人を呪わば穴二つ」です。
この言葉に尽きます。誰かを呪おうとしておきながら、自分は無事でいられると思うな、墓穴は相手の分と自分の分、二つ掘っておけということです。呪いとは振り子のようなもので、相手が呪いを受け取らなければ、そのまま自分に返ってきます。どうしてもというなら、それなりの覚悟を持ってください。
「ひとりかくれんぼ」における依り代
インターネット上でも話題になった、「ひとりかくれんぼ」という危険なあそび。それに使用される人形もまた、依り代には違いありません。人形を用意することにどのような意味があるのか、また、その危険性をお話します。
命の危険性も
ひとりかくれんぼの準備にあたって、必ず用意するものに「手足のあるぬいぐるみ」との指定があります。このぬいぐるみ、ヒトガタに近ければ近いほど良いとされています。腹を切り裂いて綿を抜き、代わりに米と自分の爪、可能であれば髪の毛や唾液、血を入れるよう促されます。そして赤い糸で縫い付け、最後に名前をつけます。
しかし、自分の体液を使用し、自分でぬいぐるみに名前をつけた時点で、それはもう「形代」になっているのです。その形代を刺してかくれんぼをスタートさせるのですから、生命が危険にさらされる場合も、当然出てくるのです。
きちんとした処理を
無事にひとりかくれんぼが終わったとしても、「形代」を粗末に扱ってはなりません。必ず、燃やして供養するようにしてください。燃やさずにゴミと一緒に捨ててはなりません。どうしても手に負えない場合は、神社で供養してもらいましょう。そのついでに、お祓いもしてもらうべきです。
ここでは、使用するぬいぐるみについての言及だけに留めたので、詳しく「ひとりかくれんぼ」の手順に触れませんでしたが、以下の記事で詳しい説明を読むことができます。興味がある方はぜひご覧ください。
「呪い返し」について
最近良いことがない、大きな事故に遭った、身内に不幸が続く…厄年なのかも!と割り切るのも良いかもしれませんが、もしかしてあなた、誰かに呪われていませんか?知らぬうちにかけられた呪いから解き放たれる方法にも、形代は有効なようなので、ご紹介します。
書くことが異なる
形代へ刻む文字も、お祓いのときとは少し違います。まず、ヒトガタの表の面には「秘符」と記します。そして裏面に、自分の数え年と、性別を書きます。書いた後に、「オン・バサラ・ギニハラジ・ハタヤ・ソワカ」という呪文を、100回唱えなければなりません。そして紙で形代を包み、封をします。隙間があってはなりません。
そして、今年の吉とされる方角を調べ、その先の川や海で形代を流します。帰り道は決して振り返ってはいけません。これで完了です。呪いはいつ誰がかけてくるかわかりません。今では呪い代行というサービスもあるようです。詳しくは以下の記事を参照ください。
ひな人形の原型
ひな人形もまた、形代のひとつとも言えます。ひな人形は、一般的にはその家の娘が嫁ぐまで、ひな祭りの期間に飾られています。このひな人形は、言うまでもなく娘の形代であり、子の健康を祈り、穢れを託し、愛でられます。そんなひな人形について、少しだけお話します。
流し雛が始まり
ひな人形の始まりは、「流し雛」という風習であると言われています。かつては三月の節句に、小さな一対の紙雛を飾っていたようです。その紙雛は、三月の節供が終わったら、供物と一緒に桟俵へと乗せられ、川に送り出されます。「流し雛」のルーツは、古代中国の「上巳の節句(じょうしのせっく)」です。
飾られていた紙雛は、平安貴族の間で流行っていた「ひいなあそび」の人形へと変化していきます。つまり、「上巳の節句」と「ひいな遊び」が合わさって、今の「ひな祭り」が誕生したというわけです。
ひな人形をひな祭りだけ出す意味
ひな人形は、3月3日だけ出せばよいというものではありません。立春を過ぎたころ、遅くとも2月末までには飾り、3月4日まで飾らなければなりません。また、3月2日に飾るのは「一夜飾り」と呼ばれ、葬式を連想させるため縁起が悪いとされています。
ひな人形は、形代としても古の形式をもっています。このひな人形の持ち主の、一生分の災厄を、ひな人形が引き受けるのです。何気なく受け入れていた「ひな人形を飾る」という行為は、祭祀的な意味合いがとても強い行動なのです。
形代に穢れを託して心晴れやかに!
形代は、自らの穢れを請け負ってくれるものです。6月と12月に大祓いをすることで、半年のあいだで自分に付随してきた穢れを一度リセットしてもらうことができ、前向きな気持ちへと向かわせてくれます。
形代の効用を理解し、「善用」として使用してください。決して悪用してはいけません。あまりにも形代に頼りすぎるのも良くはありませんが、半年という節目に、いま一度自分の行動を見直すという意味でも、大祓いに参加してみることをおすすめします。