メアリー・ベル事件|サイコパスと呼ばれた殺人鬼の生い立ちと現在

メアリーは12年間を少年院と一般刑務所で過ごしました。母親のベティは足繁く面会に訪れましたが、それは純粋な親心からではありませんでした。ベティの目的は娘の安否を確認する為ではなく、その下着姿を写真に収め、それをマスコミに売って金にすることだったのです。

仮釈放の間に女の子を身籠もる

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1980年の5月14日、23歳で一度メアリーは仮釈放されます。出所した後は職業を転々とし、大学へも通い始めますがすぐにやめてしまいます。やがて若い男性と付き合い始め、妊娠。1984年に女の子を出産しています。仮釈放の期限である1992年までは裁判所の監督下におかれていましたが、その間も育児は許可されました。

出所後は母親のもとへ

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大学をやめたメアリーは、なぜかあれほど酷い虐待をしてきた母親ベティのもとへ戻ります。その後出産・育児をしつつ別の男性と付き合い始め、小さな村へ移り住むも、またしてもベティによってメアリーの居場所がメディアへ売られてしまいます。

いくら匿名で暮らしていても母親の金儲けのせいでマスコミに追いかけ回され、正体を知った近隣住民らからはデモを起こされ、平穏とは程遠い生活を余儀なくされるのでした。出所後の生活を案じ、政府がメアリーに対する報道規制をかけるも、すべて無駄だったといいます。

メアリーを縛り続けた母ベティ

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この頃になると、ベティはアルコール依存症になっていたといいます。どれだけ世間に厳しく非難されようと、死ぬまでメアリーの情報をマスコミに売り、私腹を肥やす事しか頭にありませんでした。ベティがこの世から去った時、ようやくメアリーは本当の意味で解放されたのでしょう。

メアリー・ベルの現在

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イギリス中を恐怖に陥れた恐るべき少女。その後は人生をどのように歩み始めたのでしょう。『人間の根本的な性格は簡単には変えられない』と言いますが、再び社会に出た彼女は性懲りもなく手を血に染めたのでしょうか?それとも、悔い改めて日々を後悔の思いで生きているのでしょうか?

名前を変えてひっそり暮らす

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出所後は「メアリー・ベル」という名を隠匿し、別の名前で静かに暮らそうとしています。ですが、その努力は報酬欲しさの母親によってことごとく踏みにじられ、名前も住所もコロコロと変えなくてはなりませんでした。ここでも、娘をモノとしか見ないベティのせいでメアリーは苦しめられるのです。

子供の成人時に事件のことを明かす

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1998年のことです。とある記者がメアリーたちの住所を特定し、特ダネ欲しさなのか直撃します。それまで何も知らなかったメアリーの娘は、この時に母の犯した罪を知る事となってしまうのです。娘が成人すると、それを機にメアリーはかつての名を再び名乗り、自分のした全ての罪を打ち明けるのでした。

孫ができ祖母になる

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メアリーの娘は、母の過去を受け入れています。そして2009年、24歳で一児の母となった彼女は、母親にそうされたように我が子へ愛情をたっぷり注いでいます。こうして51歳のおばあちゃんとなったメアリー。酸鼻を極める虐待で心が壊れてしまった彼女ですが、娘を産んだことで人間として大切なものを取り戻せたのでしょう。

自伝での告白

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娘が成人したのを機に、再び本名を名乗りだしたメアリー。それは許されない過去を可愛い娘に打ち明けると同時に、自伝の本を出版するための一大決心でもありました。また自分と同じ境遇、同じ過ちを犯してしまう子供たちが増えないように、との願いも込められているのかも知れません。

「魂の叫びー11歳の殺人者、メアリー・ベルの告白」あらすじ

魂の叫び―11歳の殺人者、メアリー・ベルの告白

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1999年に出版されたメアリー・ベルの自伝「魂の叫び」。30年以上前の事件を振り返ったメアリーが、何故あのような事件を起こしたのか淡々と語る内容となっています。ここでも、かつて警官に語ってみせた「弱い存在を痛めつけることが好き」という言葉を残しています。

己の性癖や罪を暴露してはいるものの謝罪や後悔といった感情は読み取れず、また虚言癖があるとされるメアリーの言葉をどこまで信用するかは、読み手次第といったところでしょうか。この自伝の報酬は当然ながらメアリーの手に渡り、遺族には何の利益も産んでいません。

娘ができて感じた自分の罪への罪悪感

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母親の愛情を受けず、それどころかゴミ以下の扱いを受けて育ってきたメアリー。その壊れた心を、通常の精神を持った人間に戻すことは永遠にできないでしょう。それでも彼女の娘が同じような殺人鬼とならなかったのは、メアリーの中に残った人間性があるからです。

自分に子供ができたことで、子供を失う親の気持ちが初めて理解できるようになったというメアリー。歪んでしまった価値観の片隅で、私達と同じ人間らしく泣き、後悔し、罪悪感に苛まれ続ける事こそが、メアリーにとって一番の責め苦なのかも知れません。

自伝から読み解くメッセージ

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メアリーが自伝を出していると聞いて、率直な感想はいかがなものでしたでしょうか。かなり嫌悪感を持っている人は大勢いるでしょう。先程ご紹介した少年Aの「絶歌」もそうであるように、人殺しの過去で収益を得るメアリーには批判の声も数多くあります。

自分のような境遇の人間を生まないために

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今も昔も、子供の虐待やそれによる死亡のニュースが後を絶ちません。そんな地獄のような環境を奇跡的に生き残り、愛情を知らないまま成長した子供たちが第二、第三のメアリー・ベルになる可能性はゼロではないでしょう。メアリーは、そうした負の連鎖を彼女なりに少しでも食い止めようとしたのではないでしょうか。

不遇な環境に生き、人殺しと後ろ指をさされ、味方は決して多くないメアリー。そんなメアリーが過去と向き合い、消える事の無い罪を懺悔し、かなり遠回りしてしまった「普通」の人生を歩み出そうとする彼女の切なる思いも込められているのかも知れません。

メアリー・ベルはひっそりと暮らす

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2019年現在60歳を越えたメアリーは今もイギリスで執筆活動をしています。あれ以来誰かを殺めることもなく、母として、そして祖母として静かに暮らしています。2003年、最高裁にて勝ち取った匿名の権利も更新され、「メアリーのZ」という敬称で孫の匿名性も永久に約束されました。

普通ならしなくても良い苦労や苦境を数多く経験し、人の道を大きくそれてしまったメアリー。彼女の人格形成に遠因したのは、母親によって虐げられた幼少期であると考えられます。子供にとって、親が世界の全てです。その世界が愛情に満ち溢れ、不幸な子供たちが一人もいなくなるよう、メアリーも祈っているでしょう。

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