永野一男の生い立ちと凄惨な最期|豊田商事会長殺人事件の概要やその後も

まず、顧客に「金の地金」を購入する契約を結ばせますが、現物は会社が預かり、証券を代金と引き替えに渡すやり方でした。このため顧客は金を手に入れることがありませんでした。営業所で金の現物が見つかりましたが、後にそれも「ニセモノ」であったことが分かっています。

またこの詐欺の特徴として、勧誘においては主に単身老人がタ-ゲットにされたことです。電話での勧誘に引き続き、見込みありとなればその家を訪問します。家に上がると仏壇に手を合わせたり、身の回りの世話をしたり、人情に訴えるなど相手につけ込んでインチキな契約を結ばせていくものでありました。

会長永野一男の逮捕が目前だった

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豊田商事のペーパー商法では、全国で数万人が被害に遭い、社会的な問題になってきていました。強引に契約させられ老後のための貯金を失った被害者も多かったのです。その苦情を受け付ける専用電話が設置され、関連会社の役員が逮捕されことをきっかけに捜査が本格化していきます。

関連会社の幹部がすでに逮捕されていたことから、ついに永野会長自身の逮捕も時間の問題と思われていました。

豊田商事会長刺殺事件の概要

いよいよここからは、詐欺事件が引き金となり、世間を震撼させた刺殺事件の真相に迫ります。

右翼と名乗る二人組の男が乱入

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当日、永野会長の自宅マンションには、本日何らかの動きがあるとの情報を聞きつけた何十人ものマスコミ関係者が集まっていました。そこに被害者の関係者だと名乗る二人の男がやってきます。報道陣達の問いに「頼まれて殺しに来た」と答えます。

報道陣達もまさか殺す気があるとは思わなかったようですが、二人は本当に実行に移します。男たちは通路に面した玄関横のアルミサッシの窓ガラスを割って自宅に侵入します。そして衝撃的で凄惨な事件が起こりました。

テレビの生中継中に行われた犯行

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二人は自宅に籠っていた永野に襲い掛かり、「お前は死刑や」と叫んで刃渡り40㎝ほどの銃剣で頭部など全身13箇所を切りつけました。その様子は全て生中継されました。争う物音や怒号が放送され、アナウンサーがその際、「これは決して子供には見せないように」と叫ぶ場面に驚愕しました。

その後血まみれ姿の二人が出てきて何やら記者に話す様子や、全身を刺された永野一男が運び出される姿も映し出され、茶の間に衝撃を与えました。永野は病院に運ばれるも出血多量で死亡しました。又、犯人たちは通報で駆け付けた警察により現行犯逮捕となりました。

なぜ警察は動かなかったのか

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実は犯行の前日に警察は永野の自宅マンションを捜索しており、永野の在宅は世間に知れてました。既に豊田商事と永野に対する世間の非難も極に達してましたから、突発的な事態も予測できたはずで、この段階で建物の入り口を警察官が警備していれば、犯行は防げたはずでした。

あるいは、警察が一歩早く強制捜査で永野の逮捕に踏み切っていれば防げた筈です。しかし詐欺で立件するには、証拠不十分ということで躊躇しました。当時は、大型の経済犯罪に警察も慣れておらず、このような巨額の詐欺はあり得ないという認識が警察にあったろうことは十分予想されます。

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