その上「猫は逃がした」と供述し、罪を免れようとする松原被告。しかし、問題の画像を分析した見た人達からは、猫が生きていたとは思えないという声が上がります。このままでは、うやむやの内に事件は終息し、犯人には軽い処罰しか与えられないかもしれません。そう感じた人々の間から、彼を刑事訴追するよう求める署名運動が起こされるのです。
乱立するこげんたちゃんのウェブサイト
事件の痛ましさを知り、その血も涙もない行為に怒ったネットユーザーの中からは、事件の内容を拡散し、同時に犯人に社会的制裁を与えるようと試みる人が数多く現れます。彼らは次々と、事件に関するウェブサイトを立ち上げていきました。
そのようなウェブサイトは、事件の広報活動や、署名活動の拠点となったり、あるいは未公開だった犯人の個人情報を、特定、共有し、積極的に公表する場となりました。このようにして、松原被告がより厳しく罰せられるよう訴えかけたのです。
マスメディアもこぞって取り上げた!
ネット上で大きく騒がれるに至った凄惨な公開虐待事件に、テレビや新聞も飛びつきました。「インターネット猫虐待事件」とも呼ばれ、ネット時代特有のセンセーショナルな事件としてニュースで一斉に取り上げられ、ネットユーザー以外の人々からも注目を集めます。
そしてついにこげんたちゃん事件の判決!
捕まえた野良猫への虐待は、犯人が思った以上に大きく世間を揺るがせました。一匹の猫のみならず、ネットユーザーをはじめとした多くの人間を巻き込んだこの事件は、果たして、どのように結末にたどり着いたのでしょうか。そして、事件を起こした犯人には、どのような刑罰が与えられたのでしょうか。
書類送検を改め逮捕へ
署名運動の結果、福岡県警には逮捕と実刑を求める嘆願書が、併せて3000通以上寄せられるに至ります。それらを受けて、県警は獣医師に依頼し問題の写真を鑑定し、その結果、猫の死亡が確認されました。これにより松原被告の供述が嘘であると発覚し、証拠を隠滅する恐れがあるとして、逮捕となりました。8月7日のことです。
逮捕された松原被告は福岡地検により起訴されます。当時、動物虐待事件で刑事告訴されるケースは、極めて異例でした。地検は起訴の理由について「極めて悪質で、社会的影響も大きい」と説明しています。まさに、事件をうやむやにしたくないと思った人々の、活動の成果です。
社会的制裁を考えた減刑措置
松原被告は、逮捕後の取り調べにおいて猫の殺害を認めました。そして、9月30日に、福岡地裁において裁判が開始されます。この裁判に際しては、事件への高い注目度に加え、ネットによる呼びかけもあって、数多くの人が傍聴に訪れました。初公判では100人、判決時には60人以上が傍聴したと、新聞は伝えています。
10月21日に下った判決は、動物愛護法違反での有罪です。ただし、多くのウェブサイトにより顔写真や住所などの個人情報が流された松原被告は、すでに社会的制裁を受けているみなされました。これにより、減刑措置が取られ、最終的な刑罰は、懲役6か月・執行猶予3年となります。
「こげんた」とは亡くなってからつけられた名前
事件の犠牲となった一匹の猫は、本来受けるべきはずもなかった苦痛を与えられ、無残に殺されました。ネット上で事件の一部始終を見守り、事件解決のために活動してきた人々、あるいは、彼らの努力によって事件を知り、その思いに共感した人々にとって、この悲しみは深いものです。
事件は終息しましたが、ネットユーザーの間で、犠牲となった猫への追悼の声は上がり続けました。中でも、いち早く事件にスポットを当て、その成行きと犯人像を追っていた「探偵ファイル」というサイトは、身寄りのなかったこの猫のためにペット葬を執り行いました。「こげんた」という名前はこの時に付けられます。
僧侶による戒名
探偵ファイルの調査によって、犠牲となった猫が名前のない野良猫であることがわかります。サイトの運営者は葬儀をあげる際、僧侶に猫の戒名をつけてもらいました。それが、「こげんた」という名前です。この名前は後に続く他の追悼サイトでも使われ、定着するに至りました。
こげんたちゃん事件後、松原被告は今!
松原潤被告は有罪の判決を受けつつも、執行猶予を与えられました。その非道な行いと併せて、名前や顔写真、住所などの個人情報が不特定多数の人間に公開された彼は、実社会でその後、どのような人生を送ったのでしょうか。
実家に引き戻された被告
福岡で事件を起こした松原被告は、その後広島県の実家に引き戻されたとのことです。裁判が終了した後、探偵ファイルは松原被告と連絡を取り、ネットで謝罪するように促しました。その答えは「前向きに考えている」というものだったそうですが、その後しばらく松原被告に関する情報は途絶えました。
それから後、思わぬ形で彼の近況が伝えられます。事件から7年余り経った2009年9月13日、広島市の住宅で爆発が起こり、34歳の男性が重傷を負いました。この男性は、自宅でなんらかの薬品を熱するか火をつけるかして、事故を起こしました。この男性こそが、こげんたちゃん事件の松原被告であると言われています。
今も続く社会的制裁の痕
こげんたちゃん事件は、過去の動物虐待事件に類を見ないほど、多くの人に衝撃を与え、人々の犯人に対する怒りも大きいものでした。それ故に、この事件は闇に沈むことなく、その後も類似の事件が起こるたび、度々取沙汰されています。
そして、こげんたちゃん事件が取り上げられる度に、同時に上げられるのが、犯人の情報です。松原潤の名前と顔写真は、彼の犯した非道な行いと併せて、現在もネット上で晒され続けています。彼の生い立ちや実家の住所、家族の名前までもです。彼に対する制裁は、今なお終わっていないと言われています。