こげんたちゃんを襲った残酷な事件(福岡猫虐待事件)!世間を動かしたネットの声

この事件の特徴の一つは、有志によるウェブサイトが、事件を受けて次々と立ち上がったという点であることは、先に挙げた通りです。そのようなサイトを中心として、情報公開や、署名活動が展開されました。事件を世間に認知してほしい。犯人を正しく罰してほしい。ウェブサイトの多くは、そのような目的の上で作られたことは確かです。

しかし、サイトを立ち上げた人々や、彼らに賛同した人々の思いの根底にあったのは、残虐行為の被害にあった、一匹の猫への哀悼の気持ち、そして、二度とこのような痛ましい事件が起こらないでほしいという願いでした。彼らのそんな思いが集まって出来上がった本があることを、あなたはご存知ですか?

「Dear,こげんたーこの子猫を知っていますか?」

Dear,こげんた―この子猫を知っていますか?

ディルレヴァンガーによる忌まわしい投稿があった日から1か月ほど後、まだ松原被告が書類送検にとどまっていた頃の6月12日に「Dear,こげんた」というサイトが立ち上がりました。事件の広報活動や、犯人の逮捕を求める署名活動の中心となった場所です。このサイトでは、裁判が終わった後も、動物虐待の問題を訴える活動をしています。

そんな「Dear,こげんた」の活動記録、運営者の思い、そしてサイトに数多く寄せられたこげんたちゃんへの追悼文が、本にまとまられて出版されました。それが「Dear,こげんたーこの子猫を知っていますか?」です。「命の意味を考えさせられた」「読み終わった後、心に温かいものが溢れた」読者からはそのような声が上がっています。

犯行の舞台となるインターネット

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現代社会はインターネットの普及により、不特定多数との交流、コミュニティへの参加が可能となり、同時に個人が情報発信や自己表現を簡単に行えるようになりました。こげんたちゃん事件は、そのような社会状況の正の側面と負の側面が一体となった事件です。

ネット上で集った人々が、一致団結して犯人を追い詰め、司法を動かしたという点は、ネット社会の正の側面といえるでしょう。一方で、ネット掲示板は犯人が犯行を披露する舞台ともなってしまいました。こげんたちゃん事件のように、犯罪行為を堂々とネット公開する事件は、度々起こってしまいます。

掲示板での犯行予告

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2ちゃんねるをはじめとする掲示板サイトが、ネットコミュニティとして台頭した2000年代から、これらを使って犯罪を予告するという行為が多発し始めます。多くは予告のみで終わり、脅迫罪や営業妨害罪を問われるにとどまりましたが、中には、犯行を実行に移し、犠牲者が出たり、世間に大きな影響を与えた事件も発生しました。

西鉄バスジャック事件

2000年5月3日、当時17歳の少年がバスジャックを行い、2人が負傷し、1人の女性が殺害された事件です。犯人の少年は事件当日、2ちゃんねるに「佐賀県佐賀市17歳…」というスレッドを立て犯行予告を行いました。その時のハンドルネームから「ネオむぎ茶事件」とも呼ばれています。この事件の詳細はこちらの記事をご覧ください。

秋葉原通り魔事件

2008年6月8日に、東京都秋葉原の歩行者天国で起こった無差別殺傷事件です。この事件では10人が負傷、7人の命が奪われました。犯人である加藤智大被告は事件当日、携帯サイトの掲示板で「秋葉原で人を殺します」というタイトルでスレッドを立て犯行を予告しました。

SNSでの悪ふざけ

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TwitterなどのSNSが普及すると、さらに幅広くネットで情報発信をする人が増えました。犯行予告で取り締まられるケースは、なおも数多く発生しますが、より注目されたのは、犯罪行為や度を越えた悪ふざけをする様子を自ら公開する事件です。Twitterでこのような投稿をすることは、「バカッター」とも呼ばれ、問題となりました。

「バカッター」の事件

2010年代に入って以降、いわゆるバカッターの事件が頻発します。店舗のアイスケースに入った様子を撮影したり、店員に土下座を強要したり、飲食店の食品で遊んだりと、殺人などの重大な犯罪行為こそほとんどありませんが、企業、店舗、個人などに少なからぬ損害を与える事件でした。

投稿者本人も、懲戒や退学、賠償や刑事訴訟など、大きな報いを受けることになります。事件の多くのパターンが、犯罪とは思わず、または大きな騒ぎになるとは思わずに行為に及んだもの、もしくは、個人が特定されることはないだろうと考え、投稿したものだったと言われています。

動物福祉と動物愛護と動物の権利という考え方

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こげんたちゃん事件とは、一匹の猫が虐待され、殺害された事件です。多くの人間がその行いを許されないものと考え、犯人を野放しにしまいと奮起します。その結果この事件は、日本の動物虐待事件としては過去例を見ないほど世間に影響を与えるものとなりました。

こげんたのために立ち上がった人々は、何を守ろうとしたのでしょうか?松原被告という人間には、何が足りなかったのでしょうか?彼の犯した罪は、正しく裁かれたのでしょうか?人間が動物をいつくしむとはどういうことなのか、紐解いていきます。

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