恐ろしい見た目の般若の面!本当は怖くない本来の意味と由来は?

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鬼を退ける般若心経とは?

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般若の面の名前の由来になったという説もある般若心経。名前くらいは聞いたことがあるかと思いますが、いったいどんなお経なのか知っていますか?そもそもお経に意味があったの?という人もいるかも知れません。その意味について解説していきます。

複数の宗派で使用される有名なお経

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正式名称を「般若波羅蜜多心経」といい、元々はサンスクリット語の経典を漢文に翻訳したものです。実は翻訳した人によって8種類ありますが、『西遊記』でも有名な玄奘三蔵法師が訳したものが最も一般的です。浄土真宗と日蓮宗では用いられませんが、天台宗や曹洞宗、真言宗など幅広い宗派で、それぞれの解釈のもと唱えられています。

262文字で仏教の真髄を説く

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般若心経自体は262文字しかない大変短いお経ですが、その中で本質的に変わらないものはないという「空(くう)」の概念を説いています。これは仏教で非常に大事な概念です。これを理解することが悟りを開き、智慧を完成させるためには不可欠です。では空とはどんな概念なのでしょうか。

例えばパンは、小麦粉などをこねて焼いてあればパンですが、材料があるだけではパンではないし、同じ材料でも違う人が作れば違う形や味になるかもしれません。仏教ではこの材料にあたるものを「因」、作る人や環境などを「縁」と呼び、全てはこの因縁が揃うことで初めて存在し、それが離れると別のものになると考えます。

般若心経は身近なお経

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般若心経は古くは病気を治すお経とも言われ、病にかかったときはお守りにしたり写経をしたりして祈願する風習があったほか、「耳無し芳一」などの物語でも登場しています。現在では病気平癒の信仰はありませんが、写経の際によく用いられるほか、手ぬぐいや扇子、帯などに印刷したグッズなども販売されています。

般若の面は鬼になった女の能面

この面は妬みや怨念などによって鬼になってしまった女を表しています。なんとなくのイメージはあると思いますが、じっくりよく見たことはないですよね。ここではその造形や表情を詳しく見ていきたいと思います。

嫉妬や恨みに満ちた鬼女の面

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悲しみや怒り、恨みなどが極限に達し、自らを鬼に変えてしまった女を表現した般若の面は、角が生え、目は金色に光り、眉をしかめて頬は硬直し、大きく開いた口からは牙も見えています。一方で、角の周りに髪の毛があったり、おでこの上の方に描いた置き眉が残っていたりと人間の女性であった面影も残しています。

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