白鳥由栄4度の脱獄歴!「昭和の脱獄王と呼ばれた男の驚きの能力と方法とは?

まして、英雄扱いも本人のためにならないことは明白です。第二次世界大戦の敗戦で民主化の風潮が強くなり、囚人でも、人としての尊厳が認められてきました。ただ見えない場所だけに、未だに警察や刑務官に横暴な振る舞いをする者は潜んでいます。白鳥は訴え続けたのです。

個性際立つ日本の脱獄犯

Engin_Akyurt / Pixabay

日本は世界的にも脱獄が少ない国ですが、それでも脱獄は後を絶ちません。白鳥の他にも世間を騒がせた脱獄事件があります。脱獄に課せられる罪は、単純逃走罪で、懲役1年未満、手錠や鍵などを破壊したり、脅迫や暴力があれば、加重逃走罪が適用され、懲役3ヶ月以上5年未満になります。

西川寅吉

flo222 / Pixabay

1854年〜1941年、5寸釘の寅吉で知られています。もっとも脱走回数が多い男です。寅吉は14歳の時、賭場でイカサマをして殺された叔父の仇を討ち、親分と子分の4人を殺してしまいました。無期懲役になりましたが、まだ1人残っていると脱獄、賭場を探し回っているうちにイカサマを身につけました。

賭場の手入れで捕まり秋田の集治監に収監されます。ここも脱走、静岡の賭場で荒稼ぎをし、袋叩きにあうが相手数人に怪我をさせて逃走、非常線が張られました。逃げる途中で5寸クギを踏み抜いたまま12㎞を走り力つき捕まりました。当時既に全国に知られていました。

以後も壁に濡れ雑巾を張り付けて壁を越えたり合計6回の脱走をして、晩年はおとなしく服役して刑期を終えました。72歳になって出所する時に興行師が接近してきたため出所日をずらして対策を取りましたが、結局利用され「5寸クギの寅吉劇団」して全国をまわりました。最後は故郷の息子をたより静かな老後を送りました。

渡邊魁

Hruruk / Pixabay

脱獄犯でありながら裁判に勤めてていた人物です。1880年三井物産長崎支店の検印を盗み、銀行の金を横領しました。書類の改竄もしていたため終身刑になりました。長崎監獄に収監されました。規律を何度も犯したため三池集治監に移送されます。

レンガや石垣に囲まれた厳重な作りでしたが、21日間で脱走しました。大分で潜伏した後辻村庫太という偽名で大分始審裁判所で雇用され竹田治安裁判所で採用になりました。渡邊魁は裁判所判事まで登り詰めます。渡邊魁と辻村判事が似ていると噂がたち、検事と警察が調べた結果同一人物と断定します。

pixel2013 / Pixabay

辻村こと渡邊が出張中同居していた父親と弟を逮捕します。魁もその後旅館で逮捕されました。父親が長崎裁判所の職員であったため手引きをしたのです。懲役6年の判決を受けましたが、無罪の判決を受けています。法の裏をかき、後に法改正をしました。

市川一家4人殺人事件の全貌はこちらからご覧ください。

日本には塀のない刑務所がある

12019 / Pixabay

塀のない刑務所は全国に4箇所あります。正しくは解放的処遇施設とたいいます。1番新しくできた松山の施設でもすでに50年経っています。それ以来つくられていないのです。1955年の国連決議が契機となり被拘禁者処待遇最低基準規則が規定されました。

網走刑務所二見ヶ丘農場

20人が和牛の酪農作業をしています。1896年開設されました。740人の受刑者のうち、選ばれた20人のみが入れる施設で、半年から1年程度で仮出所して行きます。網走刑務所和牛はブランド和牛として、市場に出ています。農場の周囲に塀はありません。

尾道刑務支所有井作業所

昭和43年に有井作業所開設。刑期が10年に満たない者で、犯罪傾向が進んでいない者と進んでいる者、60歳以上の高齢者者の男性が主な収容者です。作業はサンダルや、すのこ、屏風張りなどを行なっています。

木工、洋裁、金属加工など様々です。開設50年を過ぎましたが、この施設では脱走は起きていません。開放型施設で、部屋には窓があり、鉄格子はありません。この施設はほとんどメディアにさらされることがないため、全貌は知らされていませんが、学校のような造りです。

松山刑務所大井造船作業所

大井造船所に行くのには審査があります。体力作りの訓練も受けます。大井造船作業は寮で生活です。鍵のない出入り自由な暮らしです。大西工場で一般の作業員と一緒に作業します。再犯率が少ないことで知られていますが、軍隊以上の厳しさです。

2018年までに、脱走事件が17件20人おきています。2018年4月の27歳の脱走は全国的に報道されました。刑期が終わるまで、あと半年を残すのみでした。メモに刑務官によるいじめが原因とありました。厳しいことで有名な施設ですが、厚生させるための指導です。行き過ぎはないですよね。

市原刑務所

交通刑務所です。交通刑務所は加古川刑務所と市川刑務所の2カ所しかありません。市原刑務所は交通違反者のみを受け入れているのに対して、加古川刑務所は犯罪性がある者や刑期が短い受刑者が入ります。

白鳥をモチーフにした作品

rawpixel / Pixabay

白鳥由栄をモデルにした小説や映画が多く作られました。彼の脱獄の美学と、運の悪さが人々を惹きつけたのです。運が悪いというのは、生い立ちであっり、特に厳しく当たる看守が担当についたり、白鳥だから生き延びたのです。

NEXT 吉村昭氏の小説