白鳥由栄4度の脱獄歴!「昭和の脱獄王と呼ばれた男の驚きの能力と方法とは?

36回読売文学賞授賞。1983年11月24日初版発行。1985、2017年にテレビドラマ化されています。原作が重厚な作品なので、ドラマも重いかと思いきや、人間を描いたドラマでした。小説は時代の中で人間があがく様子を落ちついた目で観察しています。読み応えがあります。

あらすじ

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小説破獄は、白鳥の人生そのもの、4度に渡る脱獄の背景と、脱獄の方法を細部まで書き込んでいますから、たちまち引き込まれてゆきます。おそらく、白鳥が書いた私小説ではないかと、思えるほどです。人物に奥行きがあります。

だからドラマ化された時のキャスティングが的確でした。白鳥のような男が凶悪とレッテルを貼られ、酷い仕打を受ける世の中に救いなどないと、読みすすむうちに息がつまりそうになりますが、ちゃんと逃げ道は作られていますから、引き込まれるままに読みすすめても大丈夫です。

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かつて、人間の条件という映画をみてしばらく立ち直れなくなった苦い経験がありますから、人間を書いた小説は注意して読みます。白鳥の人物の大きさと、執着が面白い面を出しますから、逃げ道がある小説です。

2度ドラマ化している

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これだけ人物も背景も揃っていれば、多くの人に観てもらいたいと思うのが普通です。でもよくドラマにしてくれたと感謝します。どちらのドラマも映画以上の見応えです、一瞬たりとも目が離せません。

緒形拳主演のNHK版

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主演に緒方拳、看守に津川雅彦なら、白鳥役の佐久間と看守の人としての葛藤に迫るドラマになるのは当然です。映画を思わせるセットの作り込みです。ただドラマである限り、著しい悲惨な監獄の様子は手加減して作られています。佐久間と看守の美化された心の世界を実際の事件を使って作ったドラマと言っておきます。見応えがあります。

ビートたけし主演のテレビ東京版

原作から大幅に外している作品です。主演のビートたけしは看守の役ですが、原作の中ではほんの少しのページに登場した人物です。二回目の脱獄が成功したところからドラマははじまります。小菅刑務所の看守は原作ではほとんど登場しない人物ですが、白鳥の心には深く刻まれた人物です。

彼の人を巻き込むことも傷つけることもない一貫した脱走の美学はこの看守なくしては成立していないのです。小説でも通りすぎた人物にスポットを当てて、その役がビートたけしさんでは、素晴らしいドラマだと、観ないうちから期待が高まります。原作からは外れて居ますが、脱獄の手口と背景はリアルに書き込まれています。

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もしかしたら創作だと思って観ているかもしれません。主人公佐久間は白鳥ですが、最後の方で、府中刑務所の所長が働きかけ、出所が早まる結果になりました。それに恩義を感じ、毎年正月に年始参りに行きます。ドラマでこれだけの鬼気迫る作品になったのは白鳥の生涯がドラマを超えていたのだと感じました。

白鳥由栄をモチーフにしたキャラクター

野田サトル氏の漫画ゴールデンカムイは金塊を巡るサバイバルバトル漫画で、舞台は北海道樺太です。昭和の脱獄王白鳥由栄をモデルにした登場人物白石竹由は モデルにしたのは白鳥の脱獄常習犯だというところと、名前くらいです。

野田サトル氏の漫画「ゴールデンカムイ」

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週間ヤングジャンプに2014年38号からスタートしています。2019年3月で累計発行部数はは900万部を越しています。全17巻(2019年3月)。破獄を元にしているのではなく、白鳥の身体的特徴と名前をモデルにしているのです。

人気キャラクター天才脱獄犯「白石由竹」

白鳥は作品では白石由竹として登場させています。ギャグ的なキャラクターとしての位置で、脱獄王としてわかりやすい扱いです。名前と脱獄と関節が外せる以外の共通点はありません。ゴールデンカムイは料理が主力テーマです。

「一世を風靡した男」の魅力

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それぞれ違う方法で、警戒の厳しい刑務所から4回の脱獄を成功させた昭和の脱獄王白鳥由栄が、なぜ後世にまで語り継がれるのでしょう。彼は2件の殺人を犯しています。脱獄の理由は不当な扱いに対する抗議であったともとれるのです。

白鳥が脱獄するたびに、不当な扱いを訴えたために、刑務所の待遇は改善されてきました。リアルプリズンブレイク白鳥由栄の魂の美しさに人は感動し、驚きの手口を生み出す頭脳と身体能力に魅力を感じるのです。

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