股のぞきも狐の窓と同じ!正体を見破る
「股のぞき」とは、自分の股の間から顔を出して逆さにものを見ることです。世界を逆さまの視点から見ることにより、狐の窓と同様に狐の嫁入りが見える・化け物の正体を暴くことが出来ると言われています。
元々は幽霊船を見破る方法
股のぞきは元々、幽霊船対策としてあったものでした。幽霊船は海で死んだ者が仲間を増やすために姿を変えて現れたものだと信じられており、人々は怪しい船を見かけたら股のぞきでその正体を見破ろうとしたのです。諸説ありますが、股のぞきをすると船が海面から少し浮いているなど何らかの異常が見られ、幽霊船であると見抜くことが出来ます。
幽霊船についてもっと知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
未来の吉凶を占うことも出来る?
股のぞきについてはもう一つ、未来を窺い知ることが出来るとも言われています。大晦日の夜、高い岡に登って股のぞきで自分の家を見ると来年の吉兆がわかるというものです。また、小さな子供が股のぞきをして遊んでいたらまもなく次の子供が生まれるとも言われており、占いとしての側面も多く持ち合わせていました。
非日常を演出することによって見える世界とは
狐の窓や股のぞきなど、日常ではやらないようなしぐさによって普段は見えないものを見通そうとする慣習は1つの地域だけに留まらず、やり方は少し違うものの主に東北地方の様々な地域で見られています。これらの不思議なしぐさには、異世界と私たちの住む世界とを結ぼうとする昔の人々の考えがありました。
「見えないものを見る」ための慣習は様々な地域で伝えられている
狐の窓や股のぞきに限らず、怪異を見抜いたり未来を占ったりするために行う儀式というものは他にも存在します。新潟県新八田市宮古木では蓑や笠を逆さに着て屋根の棟木に立つと、火事や災難の起こる家がわかると言い伝えられてきました。また、同市市川東地区では屋根の棟で半切りに水を入れると葬式のある家の様子がわかると言われていました。
異世界を覗くための儀式
これらの言い伝えにある通り、怪異を見破ったり未来を見通したりするためには、いずれも不自然なアクションを取る必要がありました。股から世界を覗く、蓑を逆に着る、手の表裏が同時にこちらを向くように組み手をする。これらの儀式には「世界を逆さま、或いは非日常的に演出し、異世界と繋がる」という目的がありました。
このように、人々は昔から怪異や異形の者たちを恐れると共にその世界への憧れのような感情を抱いてもいました。そしてその思いは何十年もの間褪せる事無く人から人へと繋がり、姿かたちを少しずつ変化させながら現代に生きる私たちの所にまで伝わってきたのです。
狐の窓は様々な作品にも登場している
狐の窓は伝承やオカルトとしてだけではなく、文学作品やアニメなど様々な作品にも登場します。「本来見えないはずのものが見える」という現象は、良くも悪くも人の心を惹きつけます。ご紹介する作品群にもその魅力や恐ろしさが盛り込まれています。
国語の教科書にも掲載「きつねの窓」
「きつねの窓」は道に迷った猟師が花畑で女の子と出会い、摘んだ花で作った染料を指に塗ってもらうと自分の見たいものが見えるようになる、という物語です。染料を塗った指で狐の窓を作ると、亡くなった両親の姿など懐かしいものを次々見ることができました。
しかし、家に帰っていつもの癖で手を洗ってしまうと染料が落ち、再び窓を作っても何も見えなくなってしまいます。その後女の子を探しても見つからず、思い出が二度と見られなくなってしまったという少し悲しい物語です。