メンダコってどんな生き物?
みなさん「タコ」と聞くと、長い8本の足を持ち、墨を吐く生き物を想像するのではないでしょうか?世界では現在200種類以上のタコが確認されていますが、我々の想像を超える見た目を持つタコも多く存在します。その中でも”深海のアイドル”との異名を持つメンダコについてご紹介をします。
深海に住むタコ
メンダコはみなさんが知っている一般的なタコとは姿も大きさも違いますが、分類上は八腕類メンダコ科に属する立派なタコの仲間です。体長は約20センチほどの小型のタコで、宇宙人みたいでかわいいと人気を集めています。日本近海から東シナ海までの深海に分布しており、水深200〜1000メートルの海底に生息しています。
平べったい特徴的な見た目がかわいい
メンダコはとにかく平べったい!見た目はこの一言に集約されるでしょう。水中であればややふっくらとはしていますが、外に出ると自身で姿勢を保つことができず平たい姿になってしまいます。英名「Japanese pancake devilfish」と名付けられたほどです。
見た目が名前の由来
生き物の名前とは外観的な特徴や、生態的な特徴にから名付けられることがほとんどですが、メンダコもその一種と言えるでしょう。メンダコに関しては、着底している時の姿が平べったいので「平面状のタコ」であるということがそのまま和名として名付けられたようです。
メンダコの特徴と一般的なタコとの違い
その姿からはタコとはかけ離れた存在のようにも感じますが、細部をみてみるとやはり一般的なタコとの共通点もいくつか存在します。タコの特徴である吸盤のついた長い足、天敵と遭遇したときに吐き出す墨。これらの特徴をそれぞれ比較して、その違いをご説明します。
メンダコは足が短い
タコといえば誰もが8本の長い足を思い浮かべるでしょう。もちろんメンダコも、気持ち程度ですが8本の足をもっています。足と足との間には膜があり、パラシュートのような形状から「アンブレラ オクトパス」とも呼ばれるようです。この膜は水中を移動するときに役立てています。
外見上は、膜から足が少し出ているだけのように見えますが、裏面から見ると一般的なタコと同じように長い足がみられるので、足の半分以上を覆われた膜によって短く見えると言った方が正しいのかもしれませんね。
メンダコは吸盤が少ない
通常、タコの吸盤は2列で約200個ほどあります。メンダコの吸盤は1列と、吸盤の数が少ないのです。また、メンダコの吸盤の周囲には感覚毛と言われる細かい毛が生えており、昆虫の触覚や、動物のヒゲと同じ役割をしています。深海のような暗闇では視覚以外の感覚器官が発達した生物が多く存在しています。
この吸盤の役割というのは、もちろん相手にくっついて逃げられないようにするためのもの。逆の場合には岩などに掴まり、身を守るということに役立っています。また捕食する際には、相手の匂いや味までも感じることができるようです。
メンダコは墨袋をもっていない
タコは危険を察知すると墨を吐いて逃げる、というのはみなさんご存知だと思いますが、メンダコにはこの墨を吐くという能力がありません。そもそも通常のタコのように、墨を貯蔵しておく墨袋が無いのです。
深海の定義というものははっきりとは定められていませんが、水深200メートルとされています。ここから先は太陽の光も届かないほどの闇の世界となるので、このような環境下では墨を吐いて敵を撹乱させる必要が無いものだと考えられています。
もっと身近なタコの情報が知りたいという方はこちらをご覧ください。
メンダコの生態
深海で生活をしている生き物は人目につくこともなく、生態に関しては謎の多いものばかりです。最近では、水族館などの大型施設で飼育されるところもあり、メンダコの生態も少しづつ明らかになってきました。現在までに明らかになっている生態をご説明します。
ゆらゆらと泳ぐ
メンダコは泳ぐ姿もかわいいと人気の生き物です。そのパラシュートのような足を使ってふわふわと水中を上昇します。クラゲが泳いでいる姿をイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。ゆらゆらと漂いながら、また海底へと沈んでいきます。
主に小型甲殻類を食べる
タコはエビやカニなどの甲殻類や二枚貝を主食としますが、メンダコも同じように海底に住むヨコエビなど小型の甲殻類を食べて生活をしています。タコの口は表面上ではなく、裏側の足の付け根あたりにあります。
タコが墨を吐く部分が口だと勘違いされやすいのですが、あれは漏斗と呼ばれる器官で、主に呼吸や排泄をする部分なんだそうです。メンダコも同じく口は裏側にあり、捕食時にはエサに覆いかぶさるようにして食べるようです。
海上にあがるとスライムの様ぺちゃんこに
タコはどちらかといえば捕食者側の生き物です。その体はほとんどが筋肉で構成されており、ときには小型のサメも絞め殺すほどの力があります。タコを食べたことのある方は、その弾力でなんとなく想像がつくのではないでしょうか?
しかしメンダコに関しては全く別で、水中でこそふっくらとした形状をしていますが、水から上げられると、スライムのようにぺちゃんこになってしまいます。外に出てしまうと自分で体を支えられないほどやわらかい体をしています。その他、海の不思議な生き物に興味のある方はこちらもどうぞ。
メンダコはかわいい見た目で人気!
ファインディング・ニモに登場したお友達のパール、愛らしい姿が人気のキャラクターですが、モデルはメンダコだそうです。メンダコはそのべちゃっとした体と、宇宙人のような外観だということから”グロかわいい”と人気が出てきました。
その見た目から水族館でも人気になった
グロかわいいというキャッチコピーで多くの人々を惹きつけるメンダコ。水槽の底でじっとしている姿は、まるでUFOを連想させられます。そして時々見せる耳をパタパタと動かす仕草が人気の一つでもあります。
泳ぐ姿も可愛い
パラシュートのような足を使って、フワフワと水中を泳ぐ姿も見られることがあります。そして、同時に耳を羽ばたかせて泳ぐ姿を見ることができたときには、かわいさ倍増となること間違いありません!ぜひ動画でご覧ください。
ちなみに、耳のように見えている部分は、ヒレなんだそうです。このヒレは深海に生息するタコに見られる特徴で、メンダコの場合は他の種と比べて小さいので、遊泳というよりも方向転換や姿勢制御に役立っていると考えてられています。
様々なグッズが出る程人気
グロいとかわいいのギャップから「深海のアイドル」とまで呼ばれるようになったメンダコ。現在ではぬいぐるみをはじめ、Tシャツ、キーホルダー、ステッカーなど様々なグッズが販売されるほどの人気ぶりです。そんな幅広いジャンルで取り揃えられた深海のアイドルグッズは、後ほど詳しくご紹介しましょう。
画像の商品は「カップラーメンダコ」というカップ麺のフタをおさえてくれるアイテムです。耳のところはフタの取っ手になっていて、正面の2本の手は割り箸を持ってくれるのだとか。3分の待ち時間も、メンダコと一緒ならあっという間に過ぎてしまいそうですね。
メンダコは食べられるの?
日本の食文化においてタコは刺身や寿司、たこ焼きなどの食材として馴染みの深い食材ですが、深海で生活しているメンダコに関してはどうでしょう?スーパーなどでは販売されていませんが、実際に食べたという方もいらっしゃるようです。どのような食感で、どのような味がするのかをご紹介します。
食べられるが美味しくはない
結論からお話しすると、メンダコを食べるということは可能です。ワニやウーパールーパーなど考えられないような獣を扱った飲食店も存在するくらいなので、普段私たちが口にしない生き物でも、うまく調理すれば大抵の生き物は食することができます。
実際にメンダコをで食べた方の感想は、まず匂いはシンナー系の薬品の匂いがするそうです。食感は水っぽく、シゲキックスのような弾力のないグミに近いそうです。そして味はただしょっぱいのだとか。「食べられるが食べるほどのものでもない」という感想が多くありました。
漁師も捨てている
先ほど述べたシンナー系の匂いがするということで地元の漁師たちもすぐに捨ててしまうそうです。というのも、他の魚に匂いが移ってしまうのを防ぐため、ということが一番の理由のようです。このことからメンダコがスーパーなどで販売されることはまずないでしょう。
また、繊細な管理が必要とされるメンダコは、底引き漁によって水上げされたときには、死んでいることが多いようです。実際に食べたことのある方は、漁師から譲ったという方ばかりでした。以上のことからやはりメンダコには食材的価値は無いようです、もし興味のある方は地元の漁師に相談してみてもいいかもしれませんね。
日本のメンダコ
日本近海に生息するメンダコは現在4種類であるとされています。そのそれぞれが特徴的な外観をしており、一般的に知られるメンダコとはまた違ったユニークさが感じられます。今回ご紹介したメンダコ以外にどのような種類が存在しているのかをご紹介します。
オオメンダコ
メンダコとはほとんど見た目が変わりませんが、名前の通りメンダコ科の中では大きな種類です。メンダコの大きさが20センチ前後に対し、オオメンダコは30センチほどで、大きいものだと50センチサイズのものも存在するようです。
日本での分布は北海道から鹿島灘沖にかけて確認されており、水深500〜600メートルの場所で生活しています。地曳き網漁で採取されることが多いのですが、生きた状態の捕獲が難しく日本での飼育例はほとんど無いようです。