2016年3月、こちらも夫によって認知症の妻が、包丁で殺害されたのです。83歳の夫によって77歳の妻が殺された事件ですが、こちらは2人暮らしでした。夫によって110番通報されましたが、後の勾留中2週間の間、夫一切食事をしません。
供述もないまま介護に疲れた夫は、自身も食事を摂らないことによって無理心中を考えたのです。2週間後搬送された夫は、衰弱死しています。この2つの事件から明らかにされるのは、どちらも高齢者同士による介護の実態です。
深刻化する介護問題
介護問題がクローズアップされる中、1番の問題は人口の減少にも関わらず、高齢化は進む一方ということです。介護には要支援・要介護とありますが、要介護にも関わらず支援を受けられない背景には、様々な要因があると言えます。
介護難民の増加
要支援とは1〜2ありますが、支援が必要な段階を指します。要介護は1〜5段階あり、要支援から徐々に重くなっていくのです。その要介護認定を受けたにも関わらず、何らかの支援が受けられないで待機している状態の人を介護難民と言います。
介護職に就いている人数や、支援センターなどが少ないためとされていますが、現在では高齢化とともに介護難民は増加しているのが現状です。
老老介護・認認介護の増加
老老介護・認認介護の増加には、2000年代の子供達と呼ばれる「ゆとり世代」も関係しています。結婚に捉われない、若さから仕事に捉われないことなどが関係していますが、世代だけではありません。平均寿命は長くなり、支援センターの数も間に合わないほどになるのです。
家庭で面倒を見ることが増加するため、夫が妻を、妻が夫を介護することが多くなり、仕事もままならなくなり介護は家庭内のみになってしまいます。
高齢者の虐待問題
支援センターの増加のためとは言え、虐待問題も同時に起きています。支援センターや老人ホームの中での虐待もニュースにある中、1番多いのが家庭内の虐待とされているのです。
介護の実態の中で家庭内での虐待の割合は9割近くにもなっています。夫からの虐待が2割ほどですが、子供からの場合は男女合わせて5割強となっているのです。高齢者の増加とともに、虐待もまた問題視されています。
高齢者の一人暮らしの増加
夫婦や家庭内の問題もさることながら、高齢者の一人暮らしの増加もあります。老老介護・認認介護を要することが増えている中、孤独死するケースも増えているのです。家族に迷惑をかけたくない、面倒を見てくれる人がいないなど、一人暮らしの増加もまた背景にあります。
一人暮らしで支援サービスを受けても、時間が決まっているからです。無限に側にいてくれる人は難しのが実態でしょう。
成年後見人によるトラブル
認知症が進むにつれ問題とされるのが、お金や財産の管理です。家庭裁判所で決める「成年後見人」の存在もまた、問題になっています。認知症で管理できないことを理由に成年後見人は、財産を自由に左右することができるからです。
家族がなるケースもありますが、トラブルはつきものと言えるでしょう。近年増えている問題ですが、財力に目が眩むことが問題とされています。
介護する側にも様々な負担がある
介護をされる側には落ち度は全くありません。同時に介護する側にもそれ相当の覚悟がいること、負担が大きいことが挙げられます。仕事と両立することが困難、または介護する側も病気を患っているなど様々です。
介護離職
介護をする側にかかるのは身体の負担と、精神的苦痛です。他人に迷惑がかからないように、または介護との時間の調整が難しいなどでいわゆる「介護離職」をする場合が多いのです。
会社の理解を得られなかいというのも、理由に挙げられるかもしれません。離職とともに失われる収入なので、マイナス要素は大きいですがやむなくの場合もあるのです。
介護うつ
認知症の症状は様々で、時に普通に見えることもあります。安心していると姿が見えなくなり、誤飲や徘徊などをするなどメンタル面が辛いのです。「介護うつ」に陥り自身も精神的ダメージのため、介護ができなくなってしまいます。
介護によって「うつ」になると自殺するケースもあるのです。無理心中の場合では「介護うつ」による、メンタル面の辛さが割合的に多いと言えます。
ワンオペ介護
一人暮らしとは違い「ワンオプ介護」という1人で介護しなければならない、といったことも増えているのです。母や父のどちらかかが1人で子1人の場合、仕事を休職しなければなりません。
ただし、長い間の休職は辞職につながるので介護の時間が長いと休めなくなります。辞職と同時に来るのは金銭苦なので、ことらも問題とされている事柄でしょう。
介護に関係する法改正
2000年に介護保険法が施行されてから、3年に1度、または5年に1度が見直しがされているのが介護に関する法改正です。ただし、介護保険法とは1割〜2割福祉、介護にまつわるサービスが軽減されるのみとなっています。多くの利用者の負担を減らすためですが、介護サービスの実態に迫ってみましょう。
介護保険法
介護保険法とは、世帯の収入によって割り引かれるサービスが異なっています。今までは世帯で年収280万円以下が1割、それ以上の年収では2割となっていましたが、今後の介護保険の改定によって更に負担する介護保険が見直されることになるとされているのです。
とは言え、今後は5年後を目安に更なる負担軽減が期待されています。ただし、サービスの割合はあるものの、支える介護士不足も問題とされているのです。
高齢者虐待防止法
2006年には改正介護法と共に、65歳以上を対象とする高齢者虐待防止法も成立されたのです。第30条まである法律は、身体だけに捉われず、精神的な面でのダメージも加わっています。
高齢者同士にとどまったことではなく、家族や成年後見人も含まれているのです。他人はもちろんのこと、高齢者への虐待を防ぐための法律も成立されています。
後期高齢者医療制度
2008年成立した後期高齢者医療制度とは、65歳以上の寝たきりや障害などを持っている場合、または75歳以上の高齢者が加入する医療制度です。外来や入院などの負担が軽くなるのですが、国民健康保険や健康保険組合などから脱退し、後期高齢者医療保険に加入する必要があります。
収入にバランスが世帯で夫婦2人で年収520万円以上では3割、1人世帯で383万円以上、またはそれ以下に当たる場合には1割の負担となっているのです。
介護に悩んだらSOSをしっかり出そう
1番辛いのは介護される側より、介護する側と言えるかもしれません。好きで介護を受けるようになった訳でもない本人の元、共に支えなければならない介護する側の負担も大きいからです。介護に悩んだらどうするか、まずはSOSをしっかり出すことも必要でしょう。
親族や知人に相談
他人に頼りたくない、と感じても身近にいるのは親族や知人です。決して他人事と思うことなく、親身になってくれることも多いはず。知人もまた親しい中であれば本人が何ともできなくても、窓口を紹介してくれることもあります。
まずは相談してみるのは一番近い存在の親族や知人ではないでしょうか。介護の厳しさを伝えることで、糸口が見えてくるかもしれません。