人肉を喰らうカニバリズム
その語源はスペイン語でカリブ族を意味するというカニバリズム。私たち自身は縁遠いと思っていた行動、人間なのに人間を食べてしまう、いわゆる食人行為のことです。
なぜそんな野蛮なことを?!と衝撃を受ける人も多いでしょうが、いざ歴史を紐解いてみれば、その文化は意外なほど人類にとって身近なものであることが分かってきました。
カニバリズムとは人肉を食べること
人間が人間を食事にするなど、現代社会においてはまず許容されない行動であり、猟奇的な犯罪行為であると忌諱する人はたくさんいます。
ですが時代や国によっては決しておぞましいものでなく、オセアニア、ヨーロッパ、アジア各地にその痕跡は残っており、日本でも記録が発見されています。
素朴な疑問「人肉の味は?」
かつてテレビ番組でニューギニアの部族を取材した際、酋長が「政府に禁じられるより以前は人肉を食べていた」と語りました。味は豚肉(日本の家畜とは別種)によく似て美味なのだとか。
豚は人間と同じく雑食性で、部位によっては組織もよく似ているため、肉の味も近いのかもしれないと語る人もいます。
日本人は美味!?
また多数の人種を食してきた結果「日本人が一番おいしかった!」と褒めたといいます。どういう経緯で遠い島の原住民に日本人が食べられることになったのかはわかりませんが、臭みもなく柔らかい上質な肉だと言います。
なんとも複雑な気持ちにさせられるグルメレポートです。ちなみに白人は塩気がきつく肉が臭くておいしくないとのことです。
他にもカニバリズムについて詳しく知りたい方はこちら
人肉食べるには高い代償がつきもの
人間として、同種族を食べるということにはハイリスクが付きまといます。それは罪に問われるとか、世間から白い目で見られるなどということではなく、そもそも私たちは生物として共食いをするように進化してこなかったのです。
それなのにお互いを食べてしまった結果、深刻な影響が生まれる結果になりました。
人肉を食べることは遺伝子的にNG!
クールー病という、パプアニューギニアで発見された極めて稀な風土病があります。現地語で「恐怖に震える」という意味の通り、震えや運動障害、精神不調などさまざまな症状を段階的に発露し、最終的に死に至るというおそろしい病です。
実はこの病気は、カニバリズムと密接な関係を持つものでした。
人肉の味は美味しいという通説
食人を行わない地域でも、人間の肉は美味であるという通説は知られています。それは野生動物が一度何かのきっかけで人間を捕食すると、味をしめてその後も執拗に人間ばかりを狙い続けるようになることからです。
自然界にはほかにもたくさん食料があるにも関わらず、危険な人間に執着する理由は、やはりその味にあるのだろうという説です。
人肉を食べるとクールー病になる
ですが人が人を食べることによってクールー病を発症します。いくら美味しくて興味が出てしまったとしても、このような深刻な病状と天秤にかけるのはあまりにハイリスクです。
またクールー病は治療法も発見されていないため、一度罹患してしまったが最後、できることはせいぜい症状を遅らせる程度で、最後には必ず死の運命が待ちうけています。
人肉を食べるとかかるクールー病
ここからはクールー病についてさらに詳細な情報を記載していきます。この病気自体は日本で人並みに暮らしていればまず縁のないものですが、意外なことに、一昔前にごく似た病気が発生して日本中が大騒ぎになった件がありました。
平成13年に発覚したBSE問題、そう、あの狂牛病にまつわる大騒動です。
クールー病の症状
病状は大きく3段階に分けられます。まず初期症状として震え、歩行や発音に障害が発生。次に歩行が困難になり、情緒不安定で自制できない笑いが起きる(このため笑い病と呼ばれることも)。
やがて座ることも難しくなり、生理機能や発話のコントロールができず、肺炎や床ずれで死亡します。
クールー病の原因
部族には儀式として遺体を食す、つまりカニバリズムの風習がありました。病の原因とされるプリオンというたんぱく質は脳に集中していて、そこを老人や子供が食し、また女性は儀式の中心として遺体によく触っていたため発症してしまいました。
男性は「亡骸を食べると戦に弱くなる」として食べなかったため感染率は低かったといいます。
クールー病と狂牛病の共通点
ではなぜ狂牛病に類似性があるかというと、こちらは対象は牛であるものの、同じように発生したプリオン異常が原因とされているからです。
牛たちにそのつもりはありませんでしたが、飼料に牛骨や肉が混じっていたため、知らずのうちに共食いをしてしまっていたのです。やはりどの動物にとっても「同族食い」は遺伝的に不向きなようです。
人肉を食べる民族
前記にあったパプアニューギニアの部族のように、かつて食人文化を有していた民族は世界中に存在しました。
昔々、まだ病気について知られていなかった頃、現代ほど情報共有によるモラルの均一化がなされていなかった時代に、人類はあらゆる目的で隣人を食してきました。ここからは、世界各地に残るカリバニズムの痕跡を辿ってみましょう。
人肉を食べる一部中国人
古代中国ではごく日常的に人肉を食べていたという主張があります。各随筆から記述が発見され、塩漬けの肉や汁物で食し、血液や内臓を滋養剤にするなど多様に活用していました。
また一説によると饅頭(まんとう)は蛮頭(まんとう)、つまり野蛮人の首であり、かつて人身御供に使っていた人の頭部の代用品であったと言われています。
人肉食の習慣があるパプアニューギニア
先に少し触れたパプアニューギニアの部族は、葬儀の一環として遺体を食べてきました。空腹や活用の目的でなく、弔いとしてのカニバリズムです。
これは族内食人(エンドカニバリズム)と呼ばれ、亡くなった人や部族そのものに敬意を表すためのものです。日本の一部にも「骨噛み」というお骨を食べる風習がありました。
十字軍も人肉食を食べた
意外に思われるでしょうが十字軍も食人を行ったと言われています。遠征の際、食糧事情が劣悪であった彼らは、たびたび現地調達という名の略奪行為を行っていました。
その一環として現地住民を殺害し食料としていたのです。当時、食糧にされた住民は十字軍にとっては人間でなく、狼や鹿のような獣と一緒だったのです。
観光中のカップルが人肉食の部族に食べられる事件発生
けれどそういったカニバリズムの類は、今よりずっと昔の話なんでしょう?…と思いがちですが、実はそうでもないのです。
人食い部族は現在もなお存続していて、現代人がその被害に合ってしまう事件も発生しているのです。それは観光客も多いフランス領ポリネシアで、ある旅行者に起きた悲劇でした。
パプアニューギニア人のガイドが人肉食の部族だった
ある旅行者カップルがヤギ狩りツアーに参加するため雇ったガイド、アンリ・ハイチこそが事件の容疑者です。一見どこにでもいる普通のガイドでしたが、実は彼はパプアニューギニアの人食い部族の出身でした。
現代においてなお、彼の中には「人間食い」の特性が残っていて、しかもそれが暴力的な形で発露してしまったのです。
悲劇に襲われた彼女と喰われた彼氏
まずアンリは男性を森の中に誘い出し、少しして戻ってから「事故が起きた」と女性を誘い出します。そこで救助に向かった女性に性的暴行を加えようとしますが、護身グッズにより撃退されます。
やがて通報を受けた警察が森を捜索したところ、焚火のあとからバラバラになった人間の骨が見つかりました。そう、男性は食べられてしまったのです。
ガイドの胸には人肉食の部族を示すタトゥー
アンリの胸元にはタトゥーが彫られていました。それは彼がカイオイ族という人食い部族であること、部族の戦士であることを表すものでした。もしそれがポリネシアで周知されていたら、このような悲劇は防げたのかもしれません。容疑者は現在も行方が分かっていません。
なお次の記事には、食人習慣を自ら作り上げた一族についてのお話があります。
自分の性器を人肉食イベントにした日本人!
他人に危害を加えることも、亡骸を傷つけことも現代日本ではもちろん違法行為です。ですがそれが、自分の肉体であれば…?
これはオートカニバリズム(自食)と呼ばれ、誰しも一度は行っていると言われます。出血を舐めたり、はがれた粘膜を飲み込むことはあくまでも無意識です。ですがそれを意図的に行ってしまう人もいるのです。
性転換手術で切り取られた性器を食材に
近年、全国ニュースとして記憶に新しい事件です。ずっと自分の肉体を食べたいと思っていた男性が、ついに手術で男性器を切除したものの、とたんに興味がなくなってしまったので「もったいないから誰かに振舞ってあげよう」という結論に至ったといいます。
かなり強烈な思考回路ですが、開催したイベントには応募が殺到したというから驚愕です。
限定5人料金20,000円
見学だけなら参加費4千円でしたが、食事つきVIP席チケットは2万円、それもテーブルは5人分限定でした。人体、それも切断された男性器を食べてみたい!という人が最低でも5人は集まるのですから、好奇心とはおそろしいものです。
ですが開催場所は海外の薄暗いクラブなどでなく、東京都杉並区。当然ながら開催前から問題視されていました。
杉並区から告発される顛末
イベント後、杉並区は主催男性をわいせつ物陳列罪で告発しました。なぜわいせつ物?と疑問に思いますが、自分で肉体を切除・調理することには何ら違法性がないため、問題になりそうなのがこの点ぐらいしかなかったのでしょう。
杉並区としては理由はなんであれ、とにかく区内で二度とこういうイベントを開催してほしくないようです。
人肉はザクロの味だという日本の通説
日本の文学小説や詩などではよく「柘榴は人肉の味がする」と表現されますが、それは事実なのでしょうか?そもそも植物と動物とでまったく違うものですが、何故そのような通説が流布するようになったのでしょう。