次からは柘榴と人肉の関係性をひとつづつ解き明かしていくことにしましょう。
人肉=ザクロ説は仏教の説法から
ベースは仏教の逸話が元になっています。人の子を攫っては食べていた鬼神が、お釈迦様のおかげで改心し、仏教に帰依したのが鬼子母神です。
彼女は左手に子供、右手に魔除けの果実を持っていますが、日本においてその実は柘榴であるとされました。そのため鬼子母神像のある場所には柘榴の木が植えられるようになりました。
ザクロの赤い実が人肉や赤い血を連想させた
鬼子母神の「子供を食べる」という食人エピソードと、柘榴を割ったときの深紅の実と汁のイメージが、人体や傷口のビジュアルと結びついて「柘榴と人肉は似ている」という結論に至ったのでしょう。
また一説には、お釈迦様が人の子の代わりにこれを食べなさいと差し出したのが柘榴であるというお話もあります。
人肉の味はザクロではない
柘榴の味はさわやかに甘酸っぱく、あくまでも果実の香り高さをたたえており、動物性たんぱく質と似ているとはとても言えないでしょう。ただ人の肉も、加齢状態や人種・健康状態・発酵状況によっては酸味が強くなる可能性もあります。
なお果実と人肉を結び付けた逸話は次の記事にも特集されています。
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人肉の味を確かめたくて足の肉をそぎ落としたイギリス人
世の中にはまだまだ変わったオートカニバリズムを行った人がいます。紳士とジョークの国・イギリスにおいて、自ら体を張ってその肉を食べ、レポートしよう!という体当たりな化学検証番組が制作されました。
これが個人youtuberでなくbbc(英国放送協会)のチャンネルだというから度肝を抜かれます。
体を張って科学の実験実証を行う「サイエンス・プレゼンター」
実践するのはグレック・フット氏。bbcで活躍するサイエンス・プレゼンターです。この実験の以前には棺桶に入って生き埋め実験をしたりとアグレッシブを超えた活躍を見せてくれる、でんじろう先生と出川を足しっぱなしにしたような豪傑紳士です。
今回もウキウキの笑顔で挑んでいるあたり、こういう実験が好きでたまらない性分なのでしょう。
実験はグレッグ・フット本人の太ももで
まず医療器具を使用してグレッグの足の肉を採取します。そして組織の香りを科学分析し、羊や豚の肉を調合・再現することによって、切除部位の味を再現することにしたのです。
味は普段食べている肉のようで思ったより違和感がないそう。足の肉は脂身が少ないのでしっかりした食感とのことです。
切り落としたのに使わない微妙な実験
結果として「人肉にそっくりな動物の調合肉」を食べたことになります。なぜならイギリスの法律において人体を食すことは禁じられているからです。
なら、そもそもグレックが外科手術を受ける必要はあったのか…?という疑問は残りますが、着目点と企画は非常に面白いものですね。
人肉っぽい味のするハンバーガーを作ったイギリス人
こちらもイギリスで、かつ「人の肉にそっくりな味」というコンセプトのスペシャル・ミートを開発してしまったシェフのニュースです。
一体どいうつもりなんだ?!と思いきや、実はある大人気ドラマの続編発売を祝う、記念イベントの一環として行われたことでした。
「ウォーキングデッド」公開イベント
世界的大人気ゾンビドラマ、ウォーキング・デットの最新作(シリーズ5)を記念して、過去に食人を行ったレポートをもとに、仔牛・豚・鶏肉などを、内臓や骨髄まで活用しきって厳格に再現しました。
見た目にかわいらしいミニバーガーにされるとカニバリズム風味はまずなくなるため、グロテスクなものが苦手な方でも大丈夫でしょう。
シェフが参考にしたアメリカ人の感想
シェフが参考にした1920年代のジャーナリストのレポートで、事故死した人の遺体を食べたところ、曰く「未成熟な仔牛のよう、それでいて牛肉に達していない未知の風味」という感想でした。
素人にはなかなか想像がつきませんが、プロの料理人はこのコメントを元に人肉の再現に成功したのです。
シェフが参考にした日本人の感想
また1980年代にオランダで殺人および食人行為を行った佐川一政の「人肉はトロのように舌でとろけ、味はツナに似ている」というコメントも参考にしたそうです。
要するに、マグロに似ているということでしょうか?日本人である佐川らしい感想とも言えます。
共食いする生き物たち
同種族を食べる生き物といえば何を思い浮かべるでしょう。やっぱりカマキリですか?
次からは、生存競争を勝ち残る上で、共に食らい合うという選択肢を取った生き物をお教えしましょう。自然界においては共食い行動は何ら珍しい行動ではありません。
ニワトリ
ニワトリはカルシウムの不足を補うため、自分が産んだ卵を食べてしまうことがあります。畜産農家ではこれを予防するため、ゴルフボールなどを偽卵にしてごまかしているそうです。
健康のために我が子を食べてしまうとは、とぼけた顔をしてなかなか強烈な生き物です。
ハムスター
飼育経験がある方はご存知でしょうが、ハムスターも愛らしい見た目によらず頻繁に共食いが発生する動物です。
原因は栄養補給ためとも、不要な争いを生まないための間引きとも言われますが、いずれにせよ子供が生まれたハムスターの扱いには十二分に注意する必要があります。触り過ぎなどストレスも厳禁です。
オオワニザメ
こちらの共食いのステージは生まれる前、なんと子宮の中です。母親の胎内で胎児たちが食らい合い、強い子供だけが生まれてくることを許されるのです。
出産時点でより体を大きくし、捕食動物から生き残る可能性を上げるためとされています。生まれる前から戦っているのだからサメが強い理由にも納得です。
クモ
クモの子供はたくさんいるから食べきれないんじゃ…?と思いきや、食べてしまうのは夫です。出産と言う絶大なエネルギーを要する現象のため、まず手近にいる性交後の雄グモを食べて栄養補給しているようです。
人間の価値観でいえば残酷な夫婦関係ですが、クモとしてはこれが至上の愛という可能性もあります。
世界におけるタブー食品
食のタブーも国や地域、宗教などで違いがあることは広く知られています。
かつてカリバニズムがタブーではないエリアがあったように、日本にとってはなんでもない食べ物でも、ところ違えば「そんなもの食べるなんて信じられない!」と忌み嫌われるものがあります。それは次のような食材たちです。
馬肉
日本では馬刺しを食べますが、ユダヤ教徒にとっては禁忌とされています。蹄が割れていない、反芻することのない動物を食べることが禁じられているのです。
また英語圏でも嫌がられることが多く、国によっては動物虐待にあたることがあります。馬は大切な資産であり友人という考え方からでしょう。
鹿肉
昨今はジビエ料理の浸透で一般化しつつありますが、岩手県の農村部ではタブーとする一部地域が存在しました。オシラサマという土着神を信仰していると、鹿をはじめ牛や馬、ニワトリも含め多くの肉食が禁忌になるとされています。
ちなみにオシラサマはジブリ作品「千と千尋の神隠し」にも少しだけ登場しています。
犬肉
日本をはじめ多くの国で食料とみなされていない、むしろ愛玩動物として身近なだけあって強くタブー視されているのが犬です。
かつては日本国内にも犬食文化がありましたが、生類憐みの令以降急速に下火になっていき、戦時中など食糧難以外で食べられることはなくなりました。今後習慣が復活する可能性はないでしょう。
ネギ
えっ、ネギ?と驚く方も多いことでしょう。しかも禁じているのは日本でもトップクラスにポピュラーな宗教、仏教です。
ネギをはじめ、にら、ニンニク、玉ねぎ、らっきょうなど一般的な食材ばかりで、これが使えないとなると全国のご家庭も大困惑です。これらは仏教において五葷(ごくん)と呼ばれ、臭気が強く修行の妨げになると言われています。
お酒
宗教的にアルコール飲料が禁止されている例は存在しますが、かつて生活改善のためお酒をタブーにした国がありました。それがかつてのアメリカ、いわゆる禁酒法の時代です。
男たちが酒場に入り浸って家庭をないがしろにするため、怒った女たちを中心に禁酒運動がはじまったことがきっかけでした。いつの世も奥さんたちは苦労しているようですね。
人肉を食べたことがある人は意外にいる!でももちろん絶対ダメ!
以上、すべての記事を読んでみると、カニバリズムが思ったよりも幅広い習慣であることが分かります。人間を食べた人間は想像以上にいるものです。
しかし現代社会で暮らしていくなら、もちろん人食いなどタブー中のタブー。そもそも大半のケースが法に抵触してしまいます。興味があったとしても想像の中に止めておきましょう。
カニバリズムに関する記事はこちら
人食い一族に関する記事はこちら
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