雄蛇ヶ池の伝説①悲しい恋の末
雄蛇ヶ池が幽霊話に事欠かない理由はいくつもありますが、ひとつずつ順にお話していきましょう。まずは池の名前の由来ともなったとある娘の言い伝えです。
自由な恋愛が許されなかった時代に、あきらめきれない一途な想いを抱えてしまった娘の、悲しく痛ましい物語です。
雄蛇ヶ池に身を投げた女性
昔々、とある娘が恋をしました。相手は地元で役所勤めをしている若い侍です。ですが単なる村娘と武士では釣り合わないということで、二人は添い遂げることを許されませんでした。
娘はたいそう悲しみ、若侍が忘れられない辛さから、この池に身を投げて死んでしまいました。
雄蛇ヶ池に現れる白蛇
消えない恋の悲しみからか、はたまた侍との恋路を絶たれた恨みからか、以来、娘の想いは白蛇となってここに棲み続けているといいます。
そのため雄蛇ヶ池では白蛇の姿をした幽霊が現れる・女性のすすり泣くような声がするという噂が絶えません。娘の心は今も癒されることのないままこの池を漂っているようです。
雄蛇ヶ池の伝説②雄蛇ヶ池に住む大蛇
ふたつめは、この池に棲まう大蛇の伝説です。こちらは娘の想いが変化したものではなく、娘を誘う異形の存在です。
蛇はそのしなやかさから女性的な連想を引き出すことが多いため、このように昔話でも「蛇」と「娘」の組み合わさったお話は多く見受けられます。
雄蛇ヶ池へ夜な夜な向かう若い娘
この池のそばにある一家が暮らしていました。いつからか家の娘は夜になるたび、眠ったままで歩きまわるという、奇妙な行動を取るようになりました。
家から抜け出しふらふらと池に近づこうとするわが子を、両親は困惑しながら連れ戻していましたが、あくる日、とうとう娘は履物を残したままいなくなってしまいました。
7周半すると大蛇が表れるという雄蛇ヶ池の言い伝え
もちろん両親は大慌てです。きっと娘はまた池に向かったのだと、両親は雄蛇ヶ池のそばをぐるぐる回るように探し続けました。そして池のまわりを7週と半巡ったところで、見たこともないような大蛇が現れます。
驚く両親をよそに大蛇は姿を消し、そして娘も二度と戻ってくることはなかった、という言い伝えです。
雄蛇ヶ池の伝説③姑の嫁いびり
また異形によるものでなく、人間の業の深さが招いた悲劇も存在します。
嫁と姑という二人の関係、いつの世も「相容れなくて当然」とされている難しい間柄だからこそ、こういった伝説が生まれてしまうのかもしれません。