誰もが口を閉ざし、事実を隠蔽し続けたこの事件。真相が闇の中という事と、不審な点が多いという事で様々な陰謀説が囁かれています。どれも推測の域を出ませんが、中にはもしかしたら…と思わせる説得力を持っているものもあります。
ロッキード事件の噂①石油メジャーとアメリカの陰謀
田中角栄は、石油の原産国から直接資源を買い取る働きかけをしていました。今までは石油メジャーと呼ばれる複数の大手石油系会社が石油の採掘から販売までを取り仕切っていました。石油会社は7社あるうちの5社がアメリカの企業で、つまりアメリカの機嫌を損ねるとエネルギー源の供給がストップするかもしれないということです。
田中はそれを良しとせず、エネルギー源の安定供給を目指して動き始めました。しかし当然アメリカ政府はそれを好ましく思いません。そこで田中が勝手な振る舞いをしないようアメリカ政府と企業が結託して彼を引きずり下ろすためにこの収賄事件を起こしたという説があります。
ロッキード事件の噂②中国と仲の良かった田中角栄を嵌めるため
2つ目は中国との国交正常化を成立させ、関係を良くしていった田中角栄をよく思わないアメリカ政府が、彼を失脚させるために仕組んだ罠だったという説です。その頃、ロシアや中国と仲の良くなかったアメリカはその関係性に息切れし始めていました。そこで、まずは中国との友好関係から築いていこうと考えていたところでした。
ですが、いきなり国交回復まで一足飛びに達成することは出来ないだろうと考えていたアメリカは、段階を踏んで仲を深めていこうという算段を取っていました。それなのに田中はそれを軽く飛び越え、国交正常化を達成してしまったのです。このことがアメリカの気に障ったのではないかと言われています。
ロッキード事件の噂③日本の田中角栄に反する者たちの陰謀
一方で、中国との国交成立については右翼など日本国内でも反発する者がおりました。そのため、元々田中角栄のやり方が気に入らなかった者たちが警察と組んで表舞台から引きずり下ろしたのではないかとも言われています。
ロッキード事件の噂④田中角栄の後任の三木武夫による陰謀
もうひとつ、田中角栄の後任である三木武夫が嵌めたのではないかという説もあります。目的は人気取りをして内閣を延命するため、検察を使って逮捕させたのだと噂されていました。三木氏は積極的にこの事件の全貌を暴こうと動き回っていたため、そのような説が浮上したのでしょう。
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ロッキード事件に残る謎
この事件には、今でも多くの謎が残されています。本当は誰かの思惑が絡む仕組まれた事だったのか、それとも単なる偶然だったのか。それが紐解かれた時、少しだけ事件の暗闇に光が差すはずですが、真実を語れる人物はもうこの世にいません。残された謎は謎のまま、今でも闇の中にいます。
関係者が次々と不審死を遂げる
事件が明るみに出てすぐに児玉の元通訳が病死し、田中の運転手だった人物が自殺しています。特に自殺に関しては不審な点が多い事、タイミングが良すぎた事から当事者達が証拠隠滅を狙い、口封じの為に抹殺したのではないかと言われていました。
不自然なロッキード社の内部資料流出
冒頭で触れた、金銭の授受が露見したあるきっかけというのは賄賂に関する重要資料が間違って公聴会に送られてきたことでした。このような決定的な証拠を含む文書が、公聴会が開かれたタイミングに誤配送されてくるものでしょうか。あまりに出来すぎた演出には、誰かが仕組んだことだったのではないか?という疑惑が残ります。
ロッキード社の役員は罪に問われなかった
この事件では、結局アメリカ側の関係者達が罪に問われることはありませんでした。アメリカでは金銭で便宜を図っても罪にならないことと、証人を日本へ引き渡せなかったことなどから特例として起訴便宜主義という方法を使った為です。起訴便宜主義とは検察官などが被疑者の事情を考慮した上で有罪判決を求めるかどうか決める、というものです。
そして最高裁が彼らを罪に問われないことに決めました。しかし、正当な手順を踏まずに得られた証言が証拠能力を持つのかどうか、本当はアメリカ側が重要な証拠を隠したかったための方策なのではないか?と深読みされ、論争が巻き起こりました。
検察のロッキード社からの賄賂の追い方
丸紅ルートでは金銭の受け渡しについての調書が残っています。しかし、その取引場所の供述については全くの嘘ではないか?という疑惑が持ち上がりました。調書によれば休業中の菓子店に行ったと嘘をついて指摘されたり、人が多く取引に向かない場所を供述していたりと不審な点が多いのです。
しかも後に取引を行った秘書が「場所は検察が勝手に変更したが、取引したことは事実なのでどうでもよいと思い変更に応じた」と証言したため一気に信憑性が薄れていきました。それだけではなく、検察の児玉ルートとそれ以外のルートへの力の注ぎ方が不均等すぎるということで、政治主義裁判ではないのか?という批判もされています。
ロッキード事件が他国にもたらした影響は?
この事件がもたらした影響は、日本とアメリカだけではありません。金銭授受による問題は諸外国にまで及び、これをきっかけとして1977年にアメリカ国外に対して商業目的での賄賂を禁止する「海外腐敗行為防止法」が制定される運びとなりました。
ロッキード事件の影響①オランダ編
当社はオランダでも同じように大金を渡しており、ユリアナ女王の王配(女王の配偶者のこと)であるベルンハルトがそれを授受したことがわかり問題となりました。アメリカでもその後賄賂の受け渡しが禁止されるようになったのは、特に日本での一件とこの事件がきっかけとなっています。
ロッキード事件の影響②イタリア編
また、イタリアでも軍用輸送機を採用してもらうために現職の大統領へ賄賂を渡していたことが明らかとなりました。大統領はこのことが原因で任期満了の半年も前に辞任せざるを得なくなりました。