日本にも鬼や邪の眼を忌諱する風習があります。たとえば節分に使う豆や、柊の棘のある葉は鬼の目を潰すために、イワシは鬼を「お前の目もこうやって潰すぞ」と脅すために用意されていました。
また籠を飾る地域もありますが、これはかぶることで鬼の目線を惑わすことができるアイテムです。
世界の邪視から身を守るジェスチャー
装備するアイテムや護符のほかにも、人々は儀式的な意味を込めたしぐさで魔を避けてきました。これは身を守り清めるほか、不安で落ち着かない精神を安定させる自己暗示効果もあります。
たとえば日本における「エンガチョ」であったり、下記の特集に登場するような「狐の窓」のようなものです。
邪視から身を守るジェスチャー①祈りを捧げる
世界各地でもっとも広く分布しているのは、祈りの動作です。十字を切る、掌を合わせる、跪いて頭を下げる。進行している宗教や土着の文化ごとに差はあるものの、自分より強く大きな存在から加護を願います。
信仰の心は不安を鎮め、呪いがつけ入る隙をなくしてくれるのです。
邪視から身を守るジェスチャー②唾を吐く
また唾をペッと吐くことも有効とされています。日本を含め、唾液には退魔の力があるとみなす国は世界中に存在します。
一説によると、昔の人々は唾液に殺菌・抗菌作用があることを経験則から知っていたため、良いものと捉えていたからではないか、ということです。
邪視から身を守るジェスチャー③コルナ、マノ・フィコ
ヘビメタやプロレスでよく見かける動作ですが、悲運や悪霊を払う効果があるとされています。
なお形がよく似ているため、米国の手話における「愛してる」のサインや、ハワイのピース(挨拶)サイン・シャカとよく誤用されますが、どちらもまったく違うものです。
邪視を持つとされ神話に登場する神様
瞳に魔力を持つ存在は、あらゆる神話・伝承・物語に登場します。ここからは、特別なまなざしを持つ怪物や天使を紹介していきましょう。
その中には誰もが知っているあの世界的ファンタジー小説もあります。映画化もされているので映像として確認することもできます。
邪視を持つ神①見たものを石に変えるメドゥーサ
世界で最も有名な、視線の呪いを持った存在。それがギリシャ神話に登場する伝説の怪物、メドゥーサです。
その姿を見た者はおそろしさのあまり石化してしまうといいます。最後は英雄に打ち取られ、その首を女神に献上され、盾の装飾にされるという散々な末路でした。
邪視を持つ神②見たものを死に至らせるサリエル
聖書に登場する大天使サリエルは、死を導き司る役割を天より担っています。相手をその一瞥だけで攻撃したり、命を奪うことができるほど強力な魔眼の持ち主であり、その名が記された護符やチャームには魔除けの効果があるとされています。
最近ではソーシャルゲームのキャラクターとしても知られるようになってきました。
邪視を持つ神③第三の目をもつパロール
ケルト民族の神話に登場する魔人バロールは、目をやるだけで相手を殺してしまうという、すさまじい凶眼を有していました。あまりに危険であるため普段は目をふさいでいたといいます。
敵に打ち取られた時にこの眼が転がり落ちてしまったために、呪いにより同族たちは壊滅してしまったといいます。
邪視を持つ神④(番外)ハリーポッターにも登場、バジリスク
すべての蛇の王と呼ばれるバジリスクはヨーロッパに伝わる幻獣です。視線だけでなく、その匂い、吐く息にすら毒を持っていたと言われています。
児童小説「ハリーポッター」にも登場し、作中では眼を直視すると死んでしまうという設定です。ゴースト・嘆きのマートルの死因でもあります。
日本における邪視はよく創作活動に使われる
サブカルチャー文化の中にも邪視はしっかり浸透しています。「魔眼」という呼び名などで周知されていることでしょう。
大きな体躯や特別な戦闘力を持たなくても華やかな魔力バトルが展開できるとして、女性や子供にその能力が付与されることもよくあります。そのため強大な力でありつつ、同時に神秘的な魅力を持つとして人気の高い設定です。