8050問題とは?今現代社会が直面している社会問題の原因と対策

娘の方は若い頃短期間働いていたものの対人関係が理由で退職、その後はひきこもり状態を続けていました。親子の収入は母親の年金だけで、発見されたときには冷蔵庫は空だったものの、当座の食費にすることも可能な9万円が手付かずのままで残されていました。知人が生活保護を受けることをすすめたのですが、母親はかたくなに拒んだそうです。

「8050問題」が起こりうる要素は今も深刻化している

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「8050問題」はとても深刻な問題です。年老いた親とひきこもりの子が生活している家庭は、周囲から孤立する傾向が強く、問題が明らかになったときには手遅れだったりします。しかもこのような家庭は今後増加する可能性があることが、政府の人口統計などからも予測されています。

若者の引きこもり数は年々増加傾向にある

15歳から39歳までの若年無業者(ひきこもりとその予備軍)の数は、2017年には71万人です。2000年からの推移を見るとやや減少傾向にあるのは少子化の影響によるもので、割合で比較してみると、2000年の1.3%に対して2017年には2.1%を占めていて、実際は逆に増加傾向にあることがわかります。

高齢化によって高齢者人口も急増している

高齢化が進んでいるといわれる現在の日本ですが、このグラフはそのことをはっきりと示しています。1950年には411万人、全人口の4.9%であった65歳以上の高齢者の人口は、2020年には3619万人、全人口の28.9%を占めるようになり、さらに増加を続けると予測されています。

人間関係が苦手という人も増加!引きこもりのきっかけに?

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現代社会では友人・知人に頼らなくても日常生活を営めるシステムができあがりつつあります。そのためコミュニケーションがある種のぜいたく品になって、とにかく楽しくないとダメだという意識が強くなり、反動で対人関係が苦手な人も増加の傾向にあります。

現在はひきこもりでない、これらコミュニケーションが苦手なだけの人たちが、ちょっとしたきっかけで自分の属している集団から切り離されてしまうと、新しい仲間を見つける代わりに、突然ひきこもり生活を送るようになっても不思議ではありません。

「8050問題」を加速させているのは現代社会?その原因や特徴とは

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ひきこもりが増えたのは、生活が便利になったおかげともいえます。インターネット、スマートフォン、コンビニエンスストア、宅配などを利用すれば、家族や隣近所と助け合ったりしなくても、日々の生活を営めるからです。昔ながらの濃密なコミュニケーションは、現代生活には必要ありません。

通信や交通網の発達による「多様性化」が原因?

通信や交通網の発達により、昔なら一生知ることのなかった新しい考え方や価値観に、たやすく接触することが可能です。このことは従来では考えられないほど広い視野を持つ人間を作り上げるために大きな役割を果たします。

しかしそのことが、身近な生活の知恵を積み重ねてできている、その地方の貴重で伝統的な習慣を無視する傾向を作り出し、周囲の人々との関係をかえって希薄にする傾向も生み出していることも、否定できません。

メディアの急速な発達!人間関係が希薄に?

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インターネットの普及で、たとえ地球の反対側からでも、見知らない人とでも、会話を交わせる時代になりました。しかしそのことが逆に、特に若者の間で、大昔から続く顔を突き合わせてのコミュニケーションを苦手とする結果になっています。ポケベルを使ってコミュニケーションを取っていた、現在の中年以上の世代でも同じです。

「8050問題」に対する支援や対策について紹介

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世の中が、この「8050問題」に関して全く無策というわけではありません。ここでは政府や自治体や民間組織が行っている8050問題対策や当事者と家族に対する支援について、内容を簡単に紹介します。

8050問題に対する政府の対策「ひきこもり対策事業」

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政府の対策は「ひきこもり地域センターの支援事業を行うこと」と「ひきこもり当事者や家族へのきめ細かい対応を専門とする人材の養成や研修を行うと共に、自治体が実施する関連事業をサポートすること」の2つの柱で成り立っています。

前者の「ひきこもり地域センター」は、ひきこもり問題に特化した専門の組織です。ひきこもり状態の本人やその家族が必要なサポートを受けるための相談窓口の役割を果たしていて、各都道府県と政令指定都市に設置されています。

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