引きこもりの高齢化?深刻な「8050問題」とは
近ごろ「8050問題(はちまるごーまるもんだい)」という言葉を聞くようになりました。若いころからひきこもっていた子とその親の両方が高齢化した場合、あるいはそれまで順調に社会生活を営んでいた息子や娘が、中年になって突然職場を首になるなどの理由で家に閉じこもってしまう状態のことをいいます。
いずれの場合も、子の側には収入を得る方法が全くないため、ほとんどの場合、高齢になった親の年金だけが頼りの生活になるのが普通です。しかも親がまだ元気で、子の側も人生の再スタートを切るチャンスが残っている若い世代のひきこもり問題に比べて、親子の両方が社会との接点を失って孤立してしまう傾向もあるので、問題はより深刻です。
「8050問題」が起こりうる原因・きっかけとは?
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そもそも「8050問題」はどのようなきっかけで起こるのでしょうか?子どもの「ひきこもり」とはどのような違いがあるのでしょうか?子がひきこもり生活を若いころからずるずると続けている他に、どのような理由が考えられるでしょうか?ここではいくつかのきっかけを、簡単に説明します。
8050問題は「子供の引きこもり」が原因で起こる?
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子どもの「ひきこもり」問題は以前から知られており、さまざまな対策も試みられていました。しかしこれまで「ひきこもり」は若い人の問題とみなされており、それらの対策もせいぜい30代までの人を対象にしたものに過ぎなかったのです。
子どもも年を取ると中年の大人になるし、そのとき親は「高齢者」と呼ばれる世代に突入します。この年代まで問題が長引いたケースの多くは、事態がこじれて深刻になっていて、解決するのが大変です。
社会からのストレスで引きこもりとなったケースも?
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それまで順調に年月を重ね、ごく社会で働いていた人が、突然ひきこもりになってしまうことがあります。そのほとんどは対人関係のストレスが原因です。社会にはさまざまなハラスメントが満ちあふれています。親自身が「毒親」として「搾取子」を作り上げてしまう可能性もあります。その一例として「巣鴨子供置き去り事件」を紹介します。
息子や娘が突然リストラの対象になって、職場を辞めざるを得なくなる可能性もあります。早期退職の募集に応じたのは良いが、次の働き口が見つからないという場合もあり得ます。日本の社会では、どこかに所属していることで安定した対人関係を営むことができるのが常なので、突然そこから断ち切られてしまうと、社会的に孤立してしまいます。
精神疾患や障害がきっかけとなる場合もある?
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いわゆるブラック企業に就職したり、リストラ要員として激しい肩たたきにあって職場を辞めた人は、多くの場合心がひどく傷ついています。ときにはうつ病などの精神疾患を発症してしまうこともあるほどです。また特別な理由がなく仕事を辞めた人の中にも、何かも精神疾患を発症している人もいるかもしれません。
精神疾患を発症した場合、ひきこもりの状況はより深刻だとみなせます。このようなケースでは再就職などを通じて再び社会とつながりを持つ前に、精神科や心療内科を受診して、適切な治療を受ける必要があります。
「8050問題」の問題点とは?解決できない理由とは一体
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なぜ高齢者の親と中年の無職の子がずるずると同居を続ける「8050問題」が、深刻な社会問題のひとつとして取り上げられるのでしょうか。それは子の多くが「ひきこもり」状態にあり、また親が高齢になると、親自身も世話が必要な状態になるからです。
家族で解決策を見出せない状況に陥る8050問題
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一度ひきこもりになってしまうと、新しい社会との接点を得て再スタートを切ることが難しくなる傾向があります。ひきこもりの当事者は多かれ少なかれデリケートな性格で、しかも外の世界でいじめなどむごい経験をして、しばしば心が深く傷ついています。人によってはうつ病などの精神疾患を発症してしまっているかもしれません。
そのため家族がさまざまな手段で圧力をかけて、外の世界に出ていってもらおうとしても、多くの場合、本人は他人からいじめられない自分の唯一の場所(自室など)にしがみついてしまい、時間だけがむなしく経過する、といった事態がしばしば起こります。