かつては「浮浪者や乞食はよく帽子をかぶっている」と認知されており、そのためよれよれの帽子をかぶっていると「まるでルンペンの帽子のようだ。ルンペン帽だ」とからかわれました。
やがてやわらなかつばの帽子はすべてそう呼ばれるようになります。たとえば、名探偵・金田一耕助がかぶっている個性的なあの帽子です。
ルンペン釣り
ルンペン釣りとは、釣りの技法を指すものではなく、釣りを行っている人の隣でおこぼれを期待する行為を指します。何もせず(働かず)糧を得ようとする様をルンペンと見立てたのです。
今だったら「釣り場の猫」とでも言うのでしょうか?また彼らは橋の下に住まいを持つことが多いため、橋の下で釣りを行うこともルンペン釣りと呼びました。
ルンペンをテーマにした作品

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お次は、ルンペンを題材とした作品の特集です。昔は差別的な意味とは捉えられず、ごく一般的な俗語であったた、映画や歌のタイトルになることも何ら問題ではありませんでした。
現代では製作ができないであろう、当時の世相を反映した貴重な記録集でもあります。
作品①キンキンのルンペン大将
こちらはキンキンこと愛川欽也氏主演、自ら考案し監督に持ち込んだという、昭和51年公開の映画です。主人公は失業をきっかけに浮浪者となってしまった重たい設定ですが、あくまでも喜劇タッチで軽快に描かれています。
若き日の和田アキ子も出演していますよ。その後ビデオ化はされなかったものの、今でも映画ファンに評価される名作です。
作品②ルンペン節
明るい曲調で、貧しいルンペンが夢の中だけで豪華な暮らしをする様を小ばかにした曲です。差別表現としてはかなりストレートなので、現代で放送されることはまずないでしょう。
ですが本来は誰かを嘲笑するというより、戦争で暗い雰囲気になりつつあった日本を、活気づけるための目的で生み出された曲です。
作品③ルンペンとラプンツェル
昭和63年、クララサーカスというバンドが発表した曲です。今はラプンツェルといえばディズニーのCGアニメですが関連性はありません。
作中にはこじきの男の子と、ずたずたに髪を切られた女の子が登場します。解散して久しいですが今なおアーティストたちの尊敬を集め、たびたびカバー曲として演奏されています。
作品④ルンペン役の山下清!「裸の大将放浪記」

実在の画家山下清をモデルにした映画『裸の大将』もこれに該当します。山下がおにぎりの施しを受けながら日本中を放浪していたためです。
著名な画家であると打ち明ければそんな必要もなかったのですが、自身の名誉に頓着がなく、また自由に旅を続けたかった彼にとっては乞食扱いのほうが都合がよかったようです。
これもダメなの?!意外な放送禁止用語集

私たちが日常生活で意識していないだけで、放送禁止用語はかなりバリュエーション豊富に存在しています。中には「…これの何がいけないの?」と首をかしげたくなるような単語も。
ただ、その理由まできちんと聞けば、禁止された理由もちゃんと理解できます。メディアの流す言葉には強い力があります。使い方には重々注意しなくてはなりません。
放送禁止用語その①エチゼンクラゲ
福井県で発見されたことにより、地名から名がついた大型クラゲです。2000年代に大量発生による深刻な漁業被害が発生、一気に全国ニュースのトップに躍り出るようになりました。
県はこれを「印象が悪くなる」として、報道各社へ自粛を要求しています。クラゲといえば下記記事のように毒のイメージも強いため、連呼されると嫌なのも納得です。
放送禁止用語その②魔女っ子

日本は古くから絵本やニメの影響もあって、魔法使いや魔女にファンタジックで素敵なイメージを抱いています。
ですが本場・欧州では「魔女」は悪魔と交わり人を貶める邪悪な存在です。魔女っ子とは、悪魔のごとき子供という意味にも取れてしまいます。そのため現在は魔法少女と言い換えられるようになりました。
放送禁止用語その③ブラインドタッチ

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キーボードを見ずに入力するブラインドタッチも、現在はタイピングという言葉に置き換わっています。
和製英語であり深い意味はありませんでしたが、ブラインド(目隠し)が視覚障碍者への差別に当たるということで、使用が自粛されていきました。身体障碍に関するワードには、放送業界は特に敏感です。
放送禁止用語その④将棋倒し
人々が折り重なって倒れるさまを将棋倒しと呼びますが、これが「将棋のイメージ低下につながる」として将棋連盟から申し立てを受け、使用自粛となりました。
余談ですが「玉突き事故」という表現に対して、ビリヤード業界は特に申し立てをしていません。
NHKにおける「放送上のタブー」
政府からの負担金があるため間違われがちですが、NHK、日本放送協会は国営放送ではなく公共放送です。どんな政党や企業に寄ることもなく、公平中立を保とうという意識が強くはたらいています。
そのため民間放送とはまた異なった、独自の放送ルールを設けているのです。次からその具体例をいくつか紹介していきましょう。
モザイクは使わない

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NHKの流す放送では、モザイクを極力使用しないという不文律が存在します。
たとえば選挙報道で他社は、特定の候補に報道が偏らないようタスキをぼかすことがありますが、NHKはカメラ位置や編集作業を工夫し、なんとか未加工の画像を使うように苦慮しているのです。
商標名は出さない

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よく知られているのが「会社名や商標名を放送しない」という決め事です。放送法により、特定の企業の広告・営業を禁止されているためです。
テトラポッド=消波ブロック、ポルシェ=クルマと言い換えるなど対策してきましたが、最近は「視聴者に分かりづらいようであれば、無理に変更しなくて良し」という方向に変わってきているようです。
スタジアム名は1度しか呼ばない
「企業名を出さない」という決まりがあるものの、命名権が買い取られたドームやスタジアムは、施設名としてどうしても会社や商標の名前を言う必要がでてきます。そこでNHK内では「一度の放送につき施設名の読み上げは一回」と定め、以降は極力ぼかして伝えるようにしました。
また次の記事にはNHKの放送事故に関する特集があります。
ルンペンという言葉には時代背景がある

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「ルンペン」と言うと今は嫌がる人もいるかもしれません。ですが昭和の時代設定でホームレスと呼ぶのも不自然でしょう。
どんな言葉にも時代背景を物語る役割があり、無暗な言葉狩りは禁止用語になった経緯まで失わせてしまいます。それでは真の差別撲滅にはつながりません。公平な未来を望むからこそ、引き継いでいくべき言葉でもあるのです。
昭和に起きた事件に関する記事はこちら
毒クラゲに関する記事はこちら
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