ダークさが目立つちびしかくちゃんですが、実はちびまる子ちゃんもブラックさは随所に見え隠れしていました。テレビ版は、子どもも見るアニメのため多少アレンジされていますが、原作では結構残酷な描写が見られることがあります。
家が火事になった永沢君を励ます話が不謹慎すぎて笑えなかったり、街で見かけたカップルがあまりに不細工で笑っていたら一緒にその場にいた野口さんのお兄ちゃんだったという話だったり、笑いの中でも「苦笑い」に分類されるような話が多々見られます。
ちびしかくちゃんは、こういったちびまる子ちゃんのシュールな部分を切り取り膨らませた、実はちびまる子ちゃんとあまり変わりない漫画とも言えます。
世知辛い世の中を生きる子供たちを応援したい気持ち
ちびしかくちゃんが敢えて残酷に描かれている背景には、子供は子供なりに大変な世界で生きていることを理解し、それを応援したい気持ちがあるのではないかという声が聞かれます。
小学生くらいの子供が抱えがちな周囲への不安や不信感を赤裸々に描くことで、今辛い思いをしている人に向けて「そう思っているのはあなただけではないよ」と寄り添っているようにも見えます。
大人の社会とは違いますが、子供の世界にも確実に人間関係や理不尽な出来事は存在します。そのことに理解を示し、嫌な目に遭うのは必ずしも自分のせいではないと鼓舞している漫画とも言えるでしょう。
さくらももこさんの作品は意外とブラック?
ちびまる子ちゃん、ちびしかくちゃんともに作者のダークなユーモアセンスが散りばめられていますが、実はさくらももこさんの作品には共通して、この癖のある作風が全面に押し出されています。
代表作と言えるちびまる子ちゃんも前述の通り少し不謹慎な笑いやギリギリの表現があちこちに見受けられますが、その他の作品にも鋭い描写が多く取り入れられており、ハッとする場面によく出会います。
ちびまる子ちゃんスピンオフ作品「永沢君」
さくらももこさんの作品のひとつに、ちびまる子ちゃんから派生した「永沢君」という漫画があります。ちびまる子ちゃんに登場する永沢君が既に、登場人物きってのダークさを持っているわけですが、この作品はその陰鬱なキャラをメインに展開されているため、作品全体からシニカルな空気が漂っています。
主に藤木君や小杉君といった、本家ちびまる子ちゃんの方でも湿っぽいオーラを放っていた人物たちで構成されているため、全体的な陰気臭さがなかなかのものですが、それが妙に笑えて癖になる、絶妙な作品です。
見た目とは裏腹にシビアな「コジコジ」
ちびまる子ちゃんがさくらももこさんの代名詞的作品と言えますが、他にも「コジコジ」という個性的なコミックが存在します。全4巻ながら根強いファンの多い作品で、メルヘンで優し気な雰囲気のキャラクターのわりにセリフが辛辣という独創的な漫画です。
セリフの内容が妙に皮肉っぽかったり、核心を突きすぎて辛辣だったりと尖った部分が多いのですが、キャラクターデザインはファンシーというギャップに病み付きになる人も多いと言われています。
人生に対して気付きを与えてくれるような鋭い名言もあるため、ただブラックユーモアを詰め込んだだけという軽い作品ではありません。
さくらももこさんのルーツに触れるエッセイ「まる子だった」
さくらももこさんの世界観に触れられるのは、漫画作品だけではありません。むしろ、エッセイ作品の方が事実に基づき詳細に自身について語られているため、そのダークなセンスの真髄に迫ることができるとも言えます。
さくらももこさんは、多くのエッセイを残しており、特にちびまる子ちゃんを愛読していた方には「まる子だった」を含む3部作を読んでみることをおすすめします。
「あのころ」「まる子だった」「ももこの話」の3冊で構成されており、作者のまる子時代の話が赤裸々に綴られています。ちびまる子ちゃんやちびしかくちゃんで表現されているブラックさのルーツを知ることができ、普通とは異なった視点の絶妙な重さが存分に発揮されています。
さくらももこさんが『ちびしかくちゃん』を通して伝えたかったこととは?
ちびしかくちゃんは、ただの一風変わったコメディ漫画ではありません。ちびしかくちゃんの世界には、そのブラックさの中に様々なメッセージや教訓が存在しているのです。
作者がちびしかくちゃんの世界から読者へ向けて発しているメッセージとは一体どんなものなのでしょうか。