カラチャイ湖|世界一やばい湖とは
カラチャイ湖という湖をご存知でしょうか。史上最悪と言われるほど放射能で汚染されたこの湖は、ロシアのチェラビンスク州の南ウラルにあるマヤーク核技術施設近くに存在しています。ロシアとカザフスタンとの国境に近い山脈にある、0.15平方キロメートルの小さな湖です。主要都市のモスクワから、1400㎞以上も離れた森の中の湖です。
カラチャイ湖は世界最悪レベルの汚染湖
地球上でもっとも汚染された場所だと言われているこの湖の底には、チェルノブイリ原発事故の際に放出された2.4倍もの放射性物質が沈んでいます。放射能量は、半減期が30年のセシウムやストロンチウムなどを中心に450万テラベクレル以上とされています。1テラベクレルとは1ベクレルの1兆倍ですので、地球上稀にみる凄まじい汚染です。
カラチャイ湖が世界一汚染されていると言われる理由
なぜ世界で一番汚染されていると言われるのでしょうか。それは旧ソ連の核兵器開発の為に作られたプルトニウム生産工場から、長年にわたって液体放射性廃棄物質がカラチャイ湖に垂れ流されたからなのです。垂れ流しは工場の最初の原子炉が稼働した1948年の翌年から、50年半ばまで平然と行われていました。
生物が住めないほどに汚染された湖
カラチャイ湖には魚を含む生物の生存が一切認められていません。なぜなら、恐ろしい量の放射性物質を閉じ込めるために大量のセメントで埋め立てられているからです。埋め立てが始まる前は、放射能の汚染によって下あごが突き出したり、歯並びがおかしくなった奇形の魚が発見されていました。
6シーベルトの放射線量
カラチャイ湖の湖畔の放射線量は6シーベルトとされています。シーベルトとは放射線が人体へ与えるダメージの単位です。6シーベルトというこの数値は非常に高く、東日本大震災の福島第一原発の事故翌日の最大放射線量が、一時間当たり4.6ミリシーベルトだったことからもよく分かります。
放射線量別人体への影響度
胃のレントゲン撮影の被ばく量が2ミリシーベルトですが、50ミリシーベルトを超えるとがんの発生率が上昇し始めます。1シーベルトになると吐き気などの症状が出始め、6シーベルト以上でほとんどの人間が死亡します。また生物が被ばくするとDNAが傷つき、次世代の子孫に奇形が発生します。カラチャイ湖でも奇形の魚が発生しました。
チェルノブイリよりも危険な湖
長年蓄積された放射性廃棄物によって汚染された湖の底には、深さ3.4メートルほどの堆積物がありました。この堆積物から放出された放射能は1億2000万キュリー。この数字は1986年に起きたチェルノブイリ原発事故時の放射線放出量の2倍です。
カラチャイ湖がここまで汚染された理由
ここまで汚染被害が広がったのには、カラチャイ湖が放射線物質の廃棄処理地であったからです。大量に出る高濃度の放射性廃棄物はガラス固化施設でガラス固化体に加工されましたが、中レベル以下の廃棄物は主にカラチャイ湖に未処理のまま流されていました。
カラチャイ湖付近に核技術施設「マヤーク」誕生
「マヤーク」とはロシア語で灯台という意味を持ちます。チェラビンスク州のオジョルスク市に建てられたこの巨大施設は、核兵器に使用する核分裂性物質を生産する工場としてソ連で初めて建設されました。以前から建設されていた工場をもとに、原子爆弾開発の中核施設としてオジョルスク市と合同で建てられました。
ナチス侵攻対策
第二次世界大戦中、ナチスドイツに対抗して原子爆弾の開発を進めようとしたソ連。ヨーロッパの大部分を占領したドイツに対して、アメリカとソ連は1945年にドイツを降伏させます。同年5月、ヨーロッパにおける世界大戦が終わります。
米ソ冷戦時代「最重要国家機密」
最高指導者のスターリンは、東ヨーロッパの国を次々に社会主義国に変え、自国の仲間を増やしていきました。資本主義国であるアメリカとは次第に敵対し始めましたが、直接軍が戦闘することはなく冷戦と呼ばれるようになります。当時アメリカに比べて核開発が遅れていたソ連は国家の威信をかけて、秘密裏に原子力施設を建設しました。
カラチャイ湖に放射性廃棄物廃棄
核施設が建設され核開発が急激に進むなかで、大量の放射性廃棄物の大部分は再処理されました。しかし再処理工程でできた中レベル以下の放射性廃棄物はすべてカラチャイ湖に放流されていました。当時のソ連では。放射能の危険性や環境への影響があまり知られていなかったのです。