リチャードチェイス「サクラメントの吸血鬼」と呼ばれた男
小さなことから大人しく内気な性格だった少年は、両親の不仲が一因で心が不安定となります。重度の精神疾患を患っており、動物から人間までを殺害し、滴る血を飲んでいました。
口元や着ていた衣類に至って血まみれな姿をして街をうろついていたことから、人々からは恐れられていました。ある一家を虐殺したことで明るみとなり、死刑判決を科せられます。
自分の行きつくゴールは見えていたためか、隠し溜めておいた抗うつ剤を過剰摂取し、自ら30年の一生を閉じました。
悲しい幼少時代を経験したのち、心が歪んでしまったという自分ではどうすることもできなかった宿命がありました。なぜそのような異質な行動をしていたのかを考察し、歩んだ悍ましい半生について検証します。
リチャードチェイスの生い立ち①異常性の根源は家庭環境
アメリカ合衆国カリフォルニア州にある地名を用いて、出身地域にちなみサクラメントの吸血鬼という異名も持つことになりました。まさに悪魔が降臨したかのような行動には、目を疑うものであります。
まずは、彼の精神が歪んでいった背景について検証します。
母親が情緒不安定で両親の関係が悪化
小学生までは、大人しい物静かな性格でありましたが特に問題があることなく成長しています。ずっと平凡な日々が続くと誰もが思っていたことでしたし、望んでいたことでしょう。
母が精神不安定となっていき、虚言を吐き続けたことから歯車は狂いだします。彼が12歳のときでした。夫に対して浮気を疑ったり、自分に毒を盛ろうと企んでいる、麻薬中毒だといいながら、日々接していたようです。
日々のストレスで発症してしまったのでしょうか。このときに適切な治療がされていたら家族3人が笑顔で過ごすことができたのかもしれません。
当然、夫は面白くないですので言い争いが頻繁に起こります。平然と息子の前で罵り合いが始まったといいます。
日常的な光景となってしまったことで、子供であった自分が悪いから両親は不仲になってしまったと思い込むようになります。小さな心は委縮し母の病が伝染病かのように移り不安定となっていきます。
多感な時期に家庭環境は劣悪
安らぎの場であろう家は、居心地の悪いエリアとなり、もともと内気でありましたが塞ぎこむようになっていき精神は歪んでいきました。
徐々に青年へと成長していく上で、思春期が必ず訪れます。ホルモンの影響からむやみにイライラしたり孤独感を味わったりと通常の発育でも、複雑な心境を経験するため不安定となりやすい時期です。
彼は、大人へのステップから起こる心の変化と家族関係が悪かったことへの抱える闇が、運悪く重なってしまい、外見では見えない内面は、ズタズタだったのです。
家庭内の居心地の悪さから酒におぼれマリファナを常用
心の拠り所を探るように、アルコールとドラッグに頼っていきます。酩酊状態でないと、家庭環境の悪さは見て絶えないものだったことでしょう。自暴自棄に至っていたのです。
マリファナを常に使っていたことで、お風呂へ入って清潔を保つことや歯磨き、身だしなみといった日常生活に支障がでています。
異臭を放つため、クラスメイトは距離を置くようになり孤独を味わっています。家庭でも学校でも居場所のなかった彼は、負のスパイラルから逃れられず、さらに悪へ溺れていくのでした。
リチャードチェイスの生い立ち②表れた精神疾患の兆候と奇行
養育の環境が悪く、徐々にでありましたが精神が崩壊していきました。一気に爆発したものではなく、些細なアピールをしながら猛威を振るっていくこととなるのです。その異質な行動をご紹介します。
勃起不全の原因は「抑圧された怒り」
第一印象は爽やかな好青年に見える彼は、年頃になると恋をしました。複数の気になる女性とデートを楽しんだようです。一見すると青春時代を謳歌しているように感じますが、悩みがあったのです。
セックスができないというものでした。当然ガールフレンドは去っていってしまったことでしょう。儚い恋は、あっけなく終わってしまい、益々彼の中で何かが崩れていったのです。
性のコンプレックスを友人に打ち明けられないまま、現状をなんとかしようと病院の門を叩いたのです。18歳の出来事でした。
受診すると医師は怒りが溜まっていることを伝えています。本当は思い精神疾患を抱えているのではないかと思ったようですが、このときには告げずに心に秘めています。
シェアハウスでの奇行の数々
高校を無事卒業すると生活環境の悪い実家を出ています。やっとのびのびとした空間が手に入ると開放感を得たことでしょう。たくさんの同年代の住民と一緒に共同生活を始めます。
断ち切ることができなかったドラッグの幻覚や聞こえないはずの声などから、突然真顔で宇宙人が空からくると言ってみたり、壁に釘を打ち込むといった不可解な言動を繰り返していました。
しまいにはビタミンCが不足しているからと、オレンジを頭の上に乗せて一日を過ごしていたこともあったようです。
毎日のことでしたので、事あるごとに振り回されるルームメイトは勉強にも集中できないといった不都合も起きてしまったと共に、恐怖も感じていたため徐々に距離をあけていきました。
精神病院で拘束されるもすぐに解放
奇行は収まるどころか悪化していく一方でした。ついに病棟へ押し入るように訪れています。彼も自分ではどうにもならないことに医療機関へ助けを求めたのです。
胃が裏返ってしまったと奇妙なことを告げたり、頭の後ろから頭蓋骨が飛び出るから痛いと酷い妄想を訴えたりと手に負えない状態でした。
しまいには心拍が止まったとまで発言をしており、拘束を余儀なくされました。診断結果は、妄想による酷い精神分離か薬物過剰摂取から起こる中毒症状と出ました。
適切な治療を受けるであろうと思っていたのですが、あっけなく返されてしまいます。その後、彼の悍ましい行動はエスカレートしていくことになるのでした。
リチャードチェイスの加速する異常行動!対象は動物から人間へ
共同生活が不可能となった彼は、母と再度暮らし始めます。過去のトラウマがおそってきたのでしょうか。益々ドラッグにはまっていきます。
180㎝の高身長であるにも関わらず体重は65㎏までげっそりと痩せています。見かねた父は別に住居を与え住まわせたのです。良かれと思っていた経緯はさらなる孤独を招いていきました。
究極的には人をターゲットにし殺してしまいますが、事件前は動物を殺害して妄想に浸っていたのです。
ウサギの内臓を食べ中毒を起こし精神病院に入院
一人ぼっちの寂しさからなのか、ドラッグから起こっている幻覚なのか自分は奇病にかかってしまったと思い込んでいたようです。原因は母が自分に毒物を与えたことで体が異常をきたしたと告げています。
血液が粉状になってしまう不治の病には生きた動物の血を体内に摂り入れるしか生き延びる方法はないと思ってしまうのです。毎日ウサギを捕獲したり購入して、内臓を食べては体に良いことをしていると信じ切っていました。
私たちが健康維持のために野菜を多めに摂ったりバランスの良い食事を心がける行為と同じような感覚であったとされます。
でも、体は正直でした。中毒症状を起こし病院へ運び込まれますが、医者も成す術がなく気が狂っていると判断し精神科へ移動しています。
小鳥の頭を食いちぎり血をすする「ドラキュラ」
入院しても不気味な行動は止まりませんでした。セックスができないことにコンプレックスを抱いていたことから、紅血が全身に行き渡れば正常に機能すると思っており、積極的に摂りれていったのでした。
そこまで追い込まれてもいたのでしょう。どこからの情報なのか幻聴だったのか定かでありませんが、強く悩んでいた彼は躊躇することなく、部屋の屋根に止まった小鳥を手づかみで捕獲しています。
頭を歯でちぎり、血汐すすっては口や服を真っ赤に汚して彷徨っていました。恐ろしい姿からいつしか看護師の中ではドラキュラとニックネームをつけられ、裏では囁かれていたようです。
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母親の監視下に置く条件で退院
病院内でも奇行を繰り返していたため、治療の効果がないのではないかという声も挙がっていたのですが、これ以上滞在していても改善の余地はなしと判断されたのでしょうか。
おそらく、隔離していても周りが嫌悪感を抱くことと、所かまわず徘徊し不気味な姿を見せつけるのに見かねたのでしょう。
母の保護管理があることを条件に外の自由な世界へ解放してしまったのです。たくさんの服薬が処方され毎日きちんと服用すれば症状は多少和らいでいたといいます。
彼が12歳のときから不安定だった母ですので、偏った思考を持っていました。たくさんの薬を繰り返し取り入れている息子を哀れと思ってしまい全て取り上げてしまったのです。
案の定、症状は悪化を辿り狙う動物もどんどん幅広くなっていきます。
近所の動物を殺害し内臓をミキサーにかけて飲む
近隣住宅でペットとして飼われている犬や猫をさらってきてはナイフで切り裂き内臓を取りだしています。続々と行方不明の飼い動物が増えた時期でした。
家族同然で大切に飼育していた飼い主たちですから、事実を知ったショックは大きく立ち直るには相当な時間を有したことでしょう。
ミキサーでペースト状にしてはコーラで割って飲んでいたといいます。保護管理することを命じられていた母は、動物を切り裂くところや血液を顔に塗っている場面を目撃していますが、何にも驚かず病院へも通告しませんでした。
まるで見ていなかったように、ほぼ育児放棄の状態で過ごしています。挙句の果てには動物を仕入れる資金として渡しています。まるで共謀者のような行いであり、母も感覚がずれていたとされます。
全裸に血まみれの状態で警察に逮捕される
湖のほとりに呆然と立ち尽くしている姿をたまたま通りかかった警察に発見されています。全身衣類を身に着けておらず血まみれだったことから、殺人犯と疑い職務質問しています。
車内にはライフル銃や血が満タンに入ったバケツが置いてあったといいます。自分の体に必要なものだから盗るなと意味不明な言葉を述べていたことから現行犯逮捕となります。
彼は取調べを受けますが詳しく調べた結果、牛の血であったことがわかり釈放しています。動物だから良かったと解き放つのではなく、精神科へ手配していたら彼に適切な治療がなされたのではないかと思えてなりません。
殺害の対象は動物から人間へ
誰が見ても不気味な行動を起こしている彼でありましたが、入院をさせるわけでもなく自由にさせています。これまでに数々の奇行を起こしては、第三者に発見されています。
ですが誰一人親身になって、快方しようとせず手に負えないから仕方ないとでもアピールしているかのように放任しています。街では毎日のように口元や服には血がついており、正常とは到底思えない姿でした。
もうすでに人々は諦めていたのでしょうか。動物だけだから安心だと思っていたのでしょうか。このときは殺害対象が切り替わっていくことなど、予想していなかったことでしょう。
奇病を治すために彼はさらなる良質な材料を求めて、動物から人間に変わってしまったのです。
リチャードチェイスが起こした第1の殺害事件
ついに人の命を奪ってしまいます。年の瀬で人々はせわしなく動いている12月29日に突如面識のない男性に向けて撃っています。
犯行の動機は、予行練習と母とクリスマスを過ごすのを断られたためと2つが予測されています。身勝手な犯行について解明していきます。
リボルバーでアンブローズ・グリフィンを射殺
買い物を終えて自宅駐車場に車を停めて歩いていたところを、車の中から目掛けて撃ったのです。ヒットした銃弾は体を打ち抜き、息絶えています。
見ず知らずの男によって突如人生の幕を閉ざされた無念さは、図り知れません。家族にとっても深い悲しみに襲われたのでした。
車で通り過ぎざまに発砲し逃走
目撃者がいたものの、お互いに面識がない無差別行為だったことから警察も奇行を繰り返していたリチャードだとは思わず、おもちゃのように武器を扱う若者が犯したことだと勘違いしていました。
全く証拠がなかったことから、犯人の指名手配が出来なかったとされます。彼にしてみたら幸運なことだったでしょうが、近隣住民は無差別に狙われた出来事に、恐怖に怯えたことでしょう。
この事件は予行練習だった
手に入れたばかりのライフルだったため、使い方やパワーを試したかったのでしょうか。日常的に動物を殺めては内臓や血を味わっていた彼が、何も触れずに現場を立ち去っています。
武器によって人は殺せるのかを練習し、次に生かそうと試みたものとみられています。何とも身勝手な行動ではありますが、これからもっと恐怖が訪れるとは誰もが感じてはいませんでした。
リチャードチェイスが起こした第2の殺害事件
ついに恐れていたことが起きてしまいます。一気に彼の名を有名にし人の仕業とは思えない残酷さと彼の異質な行動は世間を震撼させました。目を背けたくなる経緯でありますが、詳細を解明していきます。
ゴミ捨て途中の妊婦を襲い殺害
予行練習を行った約1か月後、妊娠4カ月であった22歳の若い妊婦がゴミを捨てようと外に姿を現しました。あたりを徘徊し、ターゲットを探していた彼の目に不運なことに止まってしまいます。
無言で近づいたと思った矢先、いきなり発砲しています。即死であった彼女はその場に倒れこみます。引きずりながら室内へ運び込むと目的を達成しようと実行に移すのです。