上尾事件とは?国鉄と乗客の間で起きた大暴動の背景とその後に迫る

桶川、北本、巣鴨など、あたりの駅に波及してゆきます。各駅でも駅長室のガラスが割られています。高崎線以外では、本川越線、京浜東北線、など、首都圏の鉄道ダイヤは乱れて、大混乱に陥りました。高崎線は振り替えバスを出し、乗客を駅の外に出すことに懸命になります。なんとか2000人まで移動した頃には夜19時になっていました。

運転を再開するまでに、10時間以上を費やしています。全線を開通させるまでにあと少しのところです。遅れが解消するのはまだ先で、この時点では40分から1時間に1本しか動いていません。逮捕者は7名、影響は8,400万人、負傷者92名、幸いにも、死者は出ませんでした。圧死が1人いたと噂レベルでは上がっています。

上尾事件は1カ月の休戦の後に再燃し首都圏全域へ

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上尾事件当日、状況は国鉄調べによると首都圏では162本が運休、電車の遅れは最高で1時間10分1207本が遅れました。ホームが混雑し乗客が怪我をするなど事態は膨らんでいきました。乗客のイライラも募ってきました。確かにあの頃の国鉄の職員は態度も横柄でした。起こるべくして起こったのです。

組合は暴力的で労組の話し合いなど警察に逮捕される組合員もいました。国鉄側もそのたびに荒れる話し合いに強引な方法を取らざるをえなくなっていました。そんな背景の中で、暴動が38の駅にどのように飛び火したのか、同時多発的に起こったのか、記事を検証して行くと、両方だったようです。しかも偶然の事故も重なります。

順法自体は国で禁止されていた行為でしたが、特に罰則はなく、判例もありませんでした。しかし、違法行為ではありました。注意喚起もされていました。労働側の行き過ぎた行為があったのは消しようがない事実です。のちに、首都圏国電暴動と呼ばれる騒動に発展してゆく要因です。

上尾事件後「遵法裁判」は1カ月の休戦

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上尾事件後、さすがに国鉄側も労働側も息を潜めていました。1ヵ月もすれば乗客の怒りも収まるだろうと踏んでいました。しかし、それは大きな誤算でした1ヵ月の休戦は乗客にとは、もうこれでこんなひどい目に合わないだろうとほっとしていたところです。乗客は何とか怒りを収めようとしていたのです。

この事件により、組合員も駅長も、負傷する結果となった国労や動労は順法闘争を中止しますが、一部の組合員は「この件は権力者側がリードして起こしたものだ。として順法闘争を再開。これがまた暴動を起こすことになります。再びこのような逆の行いに、乗客は腹を立てて、4月24日に再開と同時に即座に反応してしまったのです。

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労働側の要求は事故防止のための警報機と遮断機をすべての踏み切りにつけること。安全のため長さが2キロ以上のトンネルがある区間と深夜の時間帯には運転手を2人勤務にする事です。経営陣は警報機と遮断機はできる限り実施するとし、勤務の2人体制は無理だと思拒否しました。

ふたたび遵法が再開し、駅は混雑へ

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乗客無視の状態は、このような騒動を起こした後でも歩みよる姿勢は見せません。順法は法で裁かれないことを強みに、労働側は、順法を続けようとしています。ただこのころになると、労働側に不審の目が向けられるようになっていました。乗客の暴動に扇動をした者がいたのではないかと囁かれはじめました。

それでも順法は続けられ、その後も労使交渉は続きましたが、がまったく進展せず、事件から4日後の17日からは事実上のストライに突入したのです。その日、警察は上尾事件の二の舞になる事を恐れ、主要な駅や上尾駅で厳戒体制を敷いていました。混乱はほとんどありません。しかし、乗客のイライラが収まる訳もありません。

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次の順法闘争が4月24日からスタートすると発表さたことを受けて、乗客は再び怒りはじめました。上尾事件の1ヵ月の休戦は乗客を黙らせるためだったのです。都心に向かう通勤客は列車の混雑で立ちっぱなしのまま首都圏に向かいます、ホームも満杯状態です。乗客を置き去りの順法闘争は最悪の結果を招いてしまいました。

大宮駅での電車遅延に乗客が激怒

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4月24日、午後4時半頃には大宮駅で高崎線が1時間以上来ないことに腹を立てた乗客らが即座に反応、駅長室を占拠。この騒動は埼玉県警と、東武野田線やバスに振り替えるなど早い対処でいったん納まりました。その頃、赤羽駅の高崎線下りホームはまったく来る気配もない電車に乗客は苛立っていました。

20時にアナウンスがあり、青森行き特急津軽を普通列車にするといいます。津軽は20時15分に超満員で上野を発車します。荷物の積み遅れも影響しました。赤羽駅は時間を追うごとに人が膨らんで来ていました。

赤羽駅では1000人が線路を歩いて抗議

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赤羽駅では、待ちきれない乗客の怒りが溢れていました。大宮の騒動はすでに赤羽に飛び石飛び火していました。それは、一気に電車に火をつけるような暴挙となって表れます。乗客1000人が次々と線路に降り歩いて抗議をしました。乗客としてはこれからまた毎日のように電車が遅れるのは我慢できません。

赤羽のホームでは止まっている列車を折り返し運転にするように乗客が要求し、運転手を引きずり下ろして、1500人余が、電車を攻撃しはじめていました。そこに津軽1号が入ってきてしまったのです。乗客は満員電車で乗ることも出来ず、機関士を取り囲みますが、機関士は身の危険を感じて、ここで脱走します。

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津軽が破壊されたため、駅側は放送で、ホームの客を京浜東北線に誘導しました。しかし、このタイミングで赤羽手前で信号機が故障する事態がおこりました。偶発的なさらなるトラブルです。待ちきれない乗客は、乗客は線路に降りて付近の駅に向かいます。

暴動は赤羽駅から首都圏全土へ広がり38の駅が被害に

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上野駅では21時頃になっても発車しない電車に怒りを抑えられなくなった乗客が投石をはじめます。京浜東北線と高崎線の運転手は電車から下ろされ連れ去られました。7番線ではすでに暴動が発生していて、3,000人の乗客が発煙筒を炊き窓ガラスめがけて投石をしていました。暴徒と化した乗客は改札口を破壊して、事務所や切符売り場も破壊。

職員は一斉に職場を放棄して逃げ出してしまうのです。21時に警察が来たときには手の施しようがありませんでした。赤羽駅から日本全土に広がるのはあっという間でした。38の駅で同時多発的に暴動が発生したのです。当初赤羽に派遣された機動隊は30名でしたあっという間に広がる暴徒に さらに、700名を投入しました。

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破壊活動はホームはもちろん駅舎や電子機器類にも及びました。 駅のコーンコースで火の手が上がり、電車の案内板が燃えていました。新宿駅で騒ぎが起こったのが21時10分です。 21時30分山手線がストップします。売り上げよりも、むしろ電子機器類の方が被害が大きかったようです。

国鉄の損害額はおよそ9億6000万円に上った

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被害は渋谷、秋葉原、有楽町などの各駅に及び、参加した人数は32,000人を超えていました。切手や現金や売店の商品の略奪行為もあり、現金だけで1000万に上りました。群衆同士の争いやタクシーへの投石騒ぎなど警視庁は対応に追われました。逮捕、検挙の指令を出し、事態収集に努めます。バスの臨時便の手配もしました。

国鉄の損害は9億6000万と言うとんでもない数字を出しました。そのうち半分を占めているのが電気機器です。具体的な被害額は車両1億円、建物が1億2000万円、電気設備機器が4億4000万円、自動発券機が1億3000万円、自動発券機の払い戻しが2億円、鉄道共済会の被害額は数千万円、それには売店の破壊も含まれます。

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470,000トンの貨物と、生活必需品100,000トンみどりの窓口は営業不能の状態になり指定券の販売は可能な付近の駅で案内する事で対応しました。再開は神田が5月です。しばらくの間は乗客も不自由な状況が続きます。国鉄の民営化の話があちこちでささやかれ始めました。

上尾事件当時の電車運行状況は?

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順法闘争は通常37分の上尾駅、上野間に、3時間もの時間がかかり、すべての踏切で徐行運転する、またはカーブで徐行運転する。そんな卑劣なやり方をする組合側に怒りを覚えていました。仕事をやらないで文句を言う会社員など一般企業にはありえないことでした。親方日の丸だからできるんだそんな声が上がっていました。

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