そんな彼女がムカサリ絵馬の絵師になったきっかけは、親族の幽霊を見たことがきっかけだと語っています。以前、目のつぶれた男性の幽霊が見えたことがあるそうです。
その時、男性の霊は彼女に向かって目が見えないと話しかけてきたのだそうです。その事実を家族に話すと、戦争で失いそのまま亡くなってしまった親戚だろうと聞きました。
彼女はその事実を知り、せめて絵の中では目を戻して供養をしてあげたいと感じ、似顔絵を描いて男性を供養したそうです。その結果、男性は彼女に感謝を伝え消えたそうです。
この経験をもとに、彼女はこういった方法で霊が救われることもあるのだと知りムカサリ絵馬の絵師を目指すようになったそうです。当時は絵師の存在は知らなかったようですが、その衝撃は大きかったのでしょう。
故人の魂に語り掛けると希望が返ってくることがある?
ムカサリ絵馬の絵師になった彼女は、その後も故人の声に耳を傾けながら絵師としての役目を全うしているそうです。もちろん、実在の人物を書いてはいけないなどのタブー守ったうえで行っています。
絵師である彼女は故人に語り掛けると、大半は何も声が聞こえないそうですが、ごくまれに望みを訴えてくる霊もいるそうです。亡くなった者の声を聴き、希望をかなえてあげられる大切な役目を果たしているのです。
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ムカサリ絵馬の奉納数は増えている
そんな不思議な儀式なホラー要素もある今回の儀式ですが、現在はあることをきっかけに有名となり、その後少しずつ奉納数も増えているといわれています。
「奇跡体験!アンビリバボー」などの番組で取り上げられ有名に
注目を浴びるようになったのは、アンビリバボーの番組で放送されたことがきっかけでした。そのほかNHKでも放送された過去もあるそうです。
この時広まったのは、その多くがホラー話や奇妙な都市伝説といったものであり、本来の意味よりもどちらかというとこちらの要素が強く伝わることとなりました。
全国各地からムカサリ絵馬の奉納希望が寄せられた
テレビの放送で一躍有名になり、多くの人の目に触れることとなったムカサリ絵馬ですが、そこから全国各地から奉納希望者が殺到することになります。
元々戦争終了後などに一時奉納数が増えた過去を持っているのですが、それ以降は奉納数も減少気味でした。しかし、この放送を経て供養の一つと知り多くの人が望むようになったのです。
現在は故人の年齢なども多岐に渡っている
供養として奉納数が増えた状況が続きましたが、現在でもその奉納数はそうとうな数があるそうです。そして、対象となる年齢も多岐にわたるようになってきたといわれています。
本来は、未婚のまま若くして亡くなった人を供養するための物でしたが、昨今では40代以上の人もその対象となっており、年齢も広く扱われるようになったようです。
背景には、やはり晩婚化なども関係し、決して若くして結婚をするのが当たり前ではない時代だからでしょう。しかし未婚のまま死を迎えることは誰しも未練となりえます。
遺族は年齢関係なく、結婚をせずに亡くなってしまったことに対して未練が残らないようにと故人を考えて、このように年齢に関係なく供養の方法と位置付けているようです。
ムカサリ絵馬のような風習はほかにもある?
ムカサリ絵馬の風習や現在に至るまでの内容などに焦点を当ててきましたが、その他の風習は有るのでしょうか。調べていきましょう。
青森では故人と人形を死後婚させる風習がある
絵師というムカサリ絵馬に欠かせない勤めを担う存在がいますが、青森に伝わるこの風習は人形を使ったものになります。個人と人形を死後婚させるという一種の冥婚になるのだそうです。
冥婚とは、本来生者と死者が今世で結ばれることですが、現代では広く死後世界での死者同士の婚礼も冥婚と含まれる扱いになることがあるそうです。
この儀式は人形婚と称されるもので、同様に実在人物を掲げることはせず、架空の名づけを行い執り行うのだそうです。恐らく絵師にあたるような人形を作る人などもいるでしょう。
台湾では赤い封筒を拾うと死者と結婚させられる!
こういった風習は実は海外でもあります。台湾では赤い封筒を拾うと死者と結婚させられるという伝承が存在するのです。これは若くして亡くなった故人の遺髪等を赤封筒に収めておくというもの。
そして、その封筒を拾ってしまうと、強制的に結婚させられるというもの。意味ある冥婚というよりも呪い的な一面が感じ取れるような気もしますが、死者との結婚の儀式はこういったものも存在します。
中国では結婚相手の命を奪う過激なものも
中国では、こういった結婚関連の儀式の中には結婚相手の命を奪う過激な内容のものも存在していると言います。詳しい方法などは不明で確証のないものも多いようですが、かつて実在したそうです。
今回注目したムカサリ絵馬なる習慣のような供養という一面でなく、相手の命を無理やり奪う、呪い的な要素の方が強い、冥婚とも全く対極に位置するものだといえるでしょう。
同時期に亡くなった独身女性と結婚させる風習も
過去においても冥婚に関する情報は多々あるようです。中でも特筆しているこの儀式は故人となる時期を同じくした独身女性との婚礼の儀です。一説では中国史で存在したといわれています。
ほぼ同時期に亡くなった女性を妻として扱い弔うというもので、供養の一種で行われている内容のようです。冥婚と一言で表しても多岐にわたって、各地に点在します。
沖縄には「グソー・ヌ・ニービチ」という冥婚がある
沖縄での冥婚も有名なものがあります。祖先が女性一人になることを避けるため、また冥婚をして相手の家系に組み入れたい思いが込められ風習が広まったようです。
元々はユダにある宗教観念的な要素が加わっており、離婚した元妻の遺骨を元夫の遺骨と一緒に並べて埋葬しなおし、先祖の一部に含み入るという形式を表す冥婚儀式のようです。
冥婚に関する記事はこちら
ムカサリ絵馬などの冥婚を題材にしたホラー作品
今回の風習や絵師の存在、またその他冥婚の存在を知ることができましたが、こういった風習を題材にしたホラー作品も存在します。
落語「ムカサリ」
落語で語られるこの物語は、このムカサリ絵馬を利用した呪い的な一面を表す物語となっています。事の始まりは裕福な家で育ったお咲と没落旗本の一馬の間の恋愛から始まります。
二人は婚約をしたにもかかわらず、一馬が一方的に理不尽な理由で婚礼を破棄してしまいます。そのことでお咲は発狂死してしまい、これを見た父親がある行動をおこします。
それがムカサリ絵馬でした。彼の姿を絵馬に描き娘との婚礼の姿を絵馬に記すことで祟りが始まるのです。
世にも奇妙な物語「死後婚」
人気テレビ「世にも奇妙な物語」でも冥婚について触れられた奇妙な話もあります。この話では、実家に帰ったひよりという女性が、とある死後婚に巻き込まれる話です。
実家に帰ると亡き姉へのお見合い写真と喪服姿の両親がいました。そこで聴かされた内容は、結婚前に亡くなった人を弔う死後婚という儀式の存在。そしてその儀式に参加する話でした。
お見合い会場で亡き姉の結婚相手と合うことになったひよりでしたが、会場を後にする際その見合い相手と目が合います。そして、相手方から後日見合いの破断の申し入れがありました。
理由は、会場にいた妹のことを男性が好きになってしまったということ。そして、これを機に、妹ひよりの周りで奇妙な出来事が起こるようになります。
ほんとにあった!呪いのビデオ「禁忌」
呪いのビデオでは禁忌として冥婚を題材に物語が進んでいきます。物語は前後編とあり、10歳という若い年齢で亡くなった息子のために母親がムカサリ絵馬をもとに考えたであろう儀式を行っていくお話です。
被害に会う女性は、家に霊が居ると怯え次第に生活できなくなっていき自殺を図ります。それを止める友人は調査班に事の次第の調査を依頼。そして、その一人の関係者に行き当たります。
それがこの母親です。彼女はどうやら息子を結婚させてやりたいということで、彼女の写真を使って合成写真を作り、さらには人形まで用意し儀式を行います。
何とか真相らしきものにたどり着き、母親はムカサリ絵馬を奉納したと思われ、被害女性を安心させようとしたとき、女性に悲劇が起きます。
ムカサリ絵馬がホラー化しやすい理由は?
本来は絵馬師などが存在し、きちんとした風習である存在ですが、なぜこうもホラー要素ばかりに注目が集まり、ホラー化しやすいのでしょうか。
死者が生きている人間を殺すことができるから
ホラー化しやすい理由に死者は生きている人間を殺すことが可能になるからです。心霊現象でも、死者が生者を脅かすという傾向の話はよくあります。
そして、生者はこれらを未然に防ぐことができず苦に思うからこそホラー展開となります。今回のムカサリ絵馬についても、遺族が関与するとはいえ死者が生者を脅かすというとらえ方ができるのです。
自分も同じ目に遭うかもしれないという恐怖を煽る
この絵馬においては、架空の人物を絵師が書くことで正式な奉納となる風習ですが、しかしそこには恐怖が付きまといます。それは架空の人物ではなく自分がターゲットになる可能性があるということです。
本人に似せて顔を書く、名前を記入するという非常に簡単な手順だからこそ、自分も被害に会う可能性があるのです。絵師が介在しないこともあるので、危険を察知することもかないません。
こういった、いつ自分も同じ目に合うかもしれないという恐怖が、大きな恐怖をあおることに繋がりホラー展開を助長させることとなります。
遺族が簡単に生者を殺すことが出来る
故人が風習を利用することもですが、遺族がこうした風習を利用して生者を殺すことができるという点も、恐怖の一因です。
もし恨みある人物が遺族にいた場合、婚礼の儀式と称して自然と誰かを殺すことができる方法なのです。実行の簡単さもあります。行為板要因からホラー化は免れないのです。
ムカサリ絵馬のような風習に巻き込まれたら
ムカサリ絵馬のような正しく存在する風習。しかし、使い方によっては人の命を殺める方法にもなりえます。そして、それを悪用する人も出てくるでしょう。
こういったことに巻き込まれる可能性も、手順が簡単だからこそ高いと言えます。こういった風習に万が一にでも巻き込まれたらどうすればいいのでしょうか。
専門化いわく、こういった何かしらの事態に巻き込まれたら、まず身の回りで不思議なことや危険な出来事が起こるそうです。もちろん、突然死につながることもあるようです。
しかし、前もって何かしらの事前現象が起きていることも多々あるそうです。こういった異変を察知して、早く周りに相談あるいは専門家に相談することが早期解決の近道だそうです。
海外でもある不思議な風習
今回の冥婚などといった儀式とは違い、海外には不思議な風習が沢山存在するといわれています。その一部を紹介しましょう。
死者の日
メキシコで行われる儀式です。故人の魂を呼びよせ、生者は祈りをささげるというものです。日本で言うお盆のような感覚に近いといわれています。重々しい雰囲気は少なく、コミカルな雰囲気で行うそうです。
しかし、飾り物の中には骸骨があったりして、その傍らに故人のすきなものを並べたりするので、眼前に広がる景色は少し奇妙なものがあるそうです。
浄化儀式
パプアニューギニアで行われる、少年の中から女性の影響を取り除く儀式だといわれています。成人の儀であり、これを経て戦士という扱いになります。
子供には母親によって女性の影響が残されているという考え方があるそうで、それを取り除くために何度も吐き、胃を空にするそうです。その後邪気を払い一人前の男になるのだそうです。
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ムカサリ絵馬は遺族が故人の幸せを願って作られた大切なもの
古くから伝わる風習。故人をしのび、また遺族の悲しみを癒すための行いであり、決してホラー要素はないことが分かりました。
しかし、過剰な表現などで恐怖の対象としてイメージを植え付けられていることもあります。決して過剰に恐れることなく、一つの歴史ある供養方法の一つとして正しく認識し、考えていきたいものです。
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