トゥアレグ族とは?アフリカ大陸に住む「青の民族」
トゥアレグ族はベルベル人系の民族です。何といっても青い独特の民族衣装に身を包む姿が印象的でしょう。その姿から「青の民族」と呼ばれています。広大に広がるサハラ砂漠に目の覚めるような青い衣装を風になびかせながら半遊牧の生活を送っています。
トゥアレグ族の文化や風習
青い民族衣装が一番の特徴ともいえる彼らですがその文化や風習も実に興味深いものばかりです。彼らがどのような習慣のもと暮らしているのか少しご紹介します。
トゥアレグ族のほとんどはイスラム教
サハラ砂漠の中でも西部を中心を活動地としており地球上にはおよそ300万人のトゥアレグ族が存在するといわれていますが彼らのほとんどがイスラム教を信仰しています。その一方で彼ら独自の伝統的な信仰や儀式も同時に共存している点も珍しいとされています。
その伝統的な信仰の中でも特に特徴的なのが精霊信仰でしょう。彼らは悪霊の存在を信じており病気や不幸な出来事は悪霊によってもたらされると考えています。
トゥアレグ族が主に使う言語はトゥアレグ語
ベルベル人系であるトゥアレグ族はその系統を持つトゥアレグ語を言語に使用します。そのトゥアレグ語も大きく4つの言語に分かれており拠点とする地域によって異なるようです。
さらに彼らはティフナグ文字という独自の文字を使用します。古くから存在するサハラ砂漠の岩壁にもその文字を使用した絵が遺跡として残されています。
半遊牧の生活をとっているため行く先々で他の民族とやり取りを必要とするため、トゥアレグ語だけではなくいくつかの言語を身に着けた人が多いのも特徴でしょう。
トゥアレグ族は男性より女性の身分が高い
彼ら先祖であるとされている「タグルマット」が勇敢な女性戦士であったという神話が語り継がれており、彼女によって今のトゥアレグ族の伝統が作られたと言われています。さらにトゥアレグ族の王国を最初に創設したとされている女首長「ティン・ヒナン」も尊敬を集める存在です。
このような背景から女性の身分は高く、女性であっても遺産を相続する権利があったり離婚の場合にも女性が主導権を持っているなどといった傾向があります。イスラム教を信仰する民族には珍しい話ですが、女性の身分が高いため一夫一妻制となっています。
女性は男性と違い肌を露出した服を着用することも特徴の1つです。
トゥアレグ族の青いターバンは男性の象徴
トゥアレグ族の一番の特徴となっている青いターバンは男性の象徴です。イスラム教徒ですと女性がベールを常に身に着けており顔を見ることができないとされていますが、同じイスラム教を信仰する彼らはそうではなく、男性が顔を画すように青いターバンを身に付けます。
精霊信仰を持つ彼らにとって青いターバンは悪霊から身を守るための道具でもあるようです。他にも先祖代々受け継がれるシルバーアクセサリーも身に着ける習慣があります。
トゥアレグ族はかつて3階級に分けられていた
かつては独自の身分制度が存在していました。階級によって生活様式やラクダののり方などに違いがあったといわれておりこれらは上流階級の混血を防ぐことが目的だったと言われています。青い衣服を身に着ける「イマシュク(貴族)」は戦闘要員として、白いターバンを身に着けるのは「イムカド(自由民)」、彼らの奴隷として扱われた「イクラン(奴隷)」は農耕や家事を担っていました。
この下には「鍛冶」と呼ばれる身分階級も存在しており前述した精巧なシルバーアクセサリーを作ることを生業としています。
トゥアレグ族のは遊牧生活をしている
前半で少しご説明しましたが彼らは半遊牧の生活をしています。遊牧民族として家畜とともに餌や水場を求めてサハラ砂漠を周遊しています。裕福層にあるトゥアレグ族たちは遊牧生活から脱し、オアシスのある地に定住もします。
北アフリカのニジェール、アルジェリア、マリ、リビアにまたがるサハラ砂漠を遊牧しています。
トゥアレグ族の収入源は家畜の放牧やラクダの隊商
ラクダやヤギ、牛、羊を放牧して生活をたてており、現在でもラクダの隊商を組んでいます。隊商によって塩や家畜を行く先々で売って収入としています。
しかし環境の変化が激しく政治情勢が安定しない現在ではこのような暮らしだけでは生活が立ち行かず、民芸品を売ったりオアシスで農耕を行うなど昔とは違う収入の得方も行われるようになってきました。
都市部へ引っ越して教師などの職に就く人もいます。
トゥアレグ族の食事は穀物とお茶
トゥアレグ族が愛してやまないのがお茶です。クレイジージャーニーではヨシダナギさんが彼らにお茶をふるまわれたシーンが放送されていたので印象に残っている方も多いでしょう。このお茶とジャリパンと呼ばれる砂の上で焼かれるパンが大好物のようです。
彼らの食事の9割以上は穀物を調理したものでタンパク質は遊牧民らしくヤギや牛からの乳製品によってタンパク質をまかなっています。
トゥアレグ族の歴史
青いターバンを男性は身に着け、女性たちは身分が高く勇敢で、お茶とジャリパンが大好きなトゥアレグ族たち。彼らがなぜサハラ砂漠で暮らしているのか、どのような歴史を持っているのかをここからはご紹介します。
起源は北アフリカにカブサ文化を持ち込んだ人々
はるか紀元前数千年前という大昔に「カプサ文化」を北アフリカに持ち込んだ人々が彼らトゥアレグ族の祖先になると考えられています。石器を扱っていたことが遺跡調査によって明らかにされており、代表的な遺跡はチュニジアにあるエルメクタ遺跡が有名です。
トゥアレグ族はポルトガル人との貿易で栄えた
さらに時は流れ、15世紀には西アフリカにいるポルトガル人と貿易を行っていたことも分かっています。今よりももっと大きなラクダの隊商を組みポルトガル人たちと対等に取引を行っていました。サハラ砂漠に君臨し、ここでの取引を掌握するほどの力を持ち大きく栄えました。