アルコールストーブとは?|ジェット孔からゆらめくトルネード炎
アウトドアで火を起こすためのアイテムには、焚き火台やガスバーナーなど様々な種類があります。そうしたたくさんのアイテムの中で、この道具にはどのような特長があるのでしょうか。ここではアルコールストーブの構造や魅力について、簡単に見ていきましょう。
自作の前に①アルコールストーブの構造は?
2層構造がポイント
この道具は、本体が2層構造になっています。本体内部に内筒を差し込むことにより、内部の空間が主室(中央の広い空間)と副室(周縁部の狭い空間)に分かれています。その理由は、点火後の温度上昇により気化したアルコールが、狭い副室内に充満するようにするためです。
気化したアルコールが副室から噴き出して燃える
主室の上部は開放されています。そのため点火後しばらくは、主室でアルコールがゆらゆらと燃えます。一方で副室の上部は蓋で密閉されており、蓋には小さな穴がいくつか開いています。そのため、主室の炎により気化したアルコールは、狭い副室内で充満した後、蓋の穴から外部に噴き出します。
副室上部の穴から噴出したアルコールは、主室の炎により発火します。穴から勢いよく噴出したアルコールが燃えるので、得られる火力も安定したものになります。そのため、非常に簡単な構造であるにもかかわらず、調理にも使える便利なアイテムなのです。
自作の前に②アルコールストーブの燃料は?
アウトドアショップで「燃料用アルコール」という名前の商品が売られているので、これをアルコールストーブの燃料として使いましょう。薬局やドラッグストアで入手できることもあります。引火しやすいので、取り扱いには十分注意しましょう。
自作の前に③シングルバーナーとは違った魅力
バーナーに比べると火力は落ちますが、ガスボンベを使う必要がないので取り扱いが簡単です。また、本体自体がとても小型なので、携帯性にもすぐれています。本体内部に注いだアルコールに点火するだけなので、音も非常に静かです。アルコールストーブについては、次の記事も参考にしてください。
自作アルコールストーブはここがいい|DIYでアウトドアをより楽しく
アルコールストーブを使う目的だけなら、市販のものを買うこともできます。そこをあえて自作するメリットは、いったいどのような点にあるのでしょうか。この道具を自作することの魅力について、簡単に見ていきましょう。
実用性のあるパフォーマンス
アルコールストーブの自作は、コストパフォーマンスに優れている点が最大の魅力です。わずか数百円で揃う材料を使って、市販の製品と比べてまったく見劣りしない火力を得られる道具を自作することができるのです。コスパと実用性の両方を満たすことができます。
自作ギアで楽しみがより深く
また、用途に応じて様々なタイプのものを作ることができる点も、自作することのメリットです。用意する缶の大きさによって、サイズを変えることができます。加工の仕方によって、火力を変えることもできます。
アルコールストーブ自作に必要なもの|身近なもので全部OK
自分で作らなければならないとなると、なんだか難しそうに感じてしまうのではないでしょうか。しかし、特別なものは何もいりません。ここでは、自作するために必要な材料や工具について、簡単に紹介します。
本体部分
本体部分を作るために必要な材料は、基本的にはアルミ缶だけで十分です。スチール缶よりも柔らかく加工しやすいので、工具も簡単なもので足ります。缶入り飲料の大半はアルミ缶に入っているので、とても簡単に入手できます。
工具類
最低限用意しておくべき工具は、カッター・ハサミ・ホチキスです。アルミカンが材料なので、文具として使うカッターなどでも十分に加工することができます。可能なら、コンパスカッターや電動ドリルもあるとよいでしょう。
アルコールストーブ種類別自作例①|お手軽簡単に作ろう
それでは、具体的な作り方について詳しく見ていきましょう。まずは、いちばん簡単にチャレンジできる「アルミカンを使った作り方」をご紹介します。色々な作り方の基本となる方法ですので、ぜひマスターしてください。
基本のアルミ空き缶で作ってみよう!
必要な部品の作り方
アルコールストーブの自作に必要な部品は、350mlのアルミカンが2本あれば揃います。2本のアルミ缶を、それぞれ上から3分割します。すると、飲み口の部分・真ん中の部分・底の部分が2つずつ、計6つの部品が出来上がります。そのうち、実際にアルコールストーブの部品として使うのは、真ん中の部分が1つ、底の部分が2つだけです。
真ん中の部分を切り抜いたものを「部品A」、底の部分を切り抜いたものを「部品B」と呼ぶことにしましょう。ただし部品Bは2つ使うため、分かりやすく「部品B①」・「部品B②」と呼び分けることにします。
部品の加工・組み立て① 台座と内筒
部品B①は、アルコールストーブの台座として使います。その中に、部品Aを内筒としてはめ込みます。ただし、そのままでは部品Aと部品B①の内径が等しいため、うまくはめ込むことができません。
そこで、部品Aの任意の場所を切り離し、ベルト状にします。端と端を重ね合わせて内径を縮め、部品B①の内部にはまり込むサイズに加工します。ちょうどいいサイズになったところで、ホチキスでパチンと留めます。そうして加工した部品Aを、部品B①の内部にはめ込みます。
部品の加工・組み立て② 蓋とジェット孔
部品B②は上下をひっくり返して、アルコールストーブの蓋にします。その際、斜面になった部分(缶が接地する部分の側面)に、炎が噴き出すための穴(一般的には16個の穴)を開けます。キリや電動ドリルを使えば、簡単に開けられます。
また、缶の底だった面の中央にも、コンパスカッターなどを使って直径3cm程度の穴を開けましょう。そうやって加工した部品B②を、先ほど組み立てた台座にかぶせれば完成です。上手くはまらない場合は、部品B②のヘリにペンチなどで凹凸をつけると、はめ込みやすくなります。
加工のコツ
缶を切り離す際には、ちょっとしたコツがあります。カッターでそのまま切ろうとすると、どうしても切り口がガタガタになってしまいがちです。そこで、カッターの固定台としてガムテープを使うと便利です。ガムテープを机の上に置いたときの高さが、缶を切るのにちょうどよいからです。
また、火が出るための穴を開ける際には、均等な間隔にすると火力が安定しやすくなります。ただ、目算で穴を開けようとしても、等間隔にすることは難しくなります。そこであらかじめ紙を用意して、16分割した円を描いておきます。それを缶に乗せることで、穴を均等に開けるための目印にすることができます。
アルコールストーブ種類別自作例②|超小型タイプを作ろう
350mlサイズのアルミカンで作っても十分コンパクトですが、さらに小さなサイズのアルコールストーブを作ることもできます。ちょっとした火が欲しいときに、とても便利です。この作り方も、ぜひ覚えてみてください。
かわいいストーブを作ってみよう!
用意するのは「ウコンのちから」サイズの缶
作り方自体は、先ほど紹介した「アルミカンを使った作り方」と変わりません。違うのは、用意するものだけす。350mlのアルミ缶の代わりに、「ウコンのちから」サイズの小さなアルミカンを2つ用意しましょう。その後の工程は、先ほど紹介した作り方とまったく同じです。
缶の硬さに注意
ただし「ウコンのちから」の缶は、一般的なアルミカンよりも若干硬くできています。そのため、内筒となる部品Bをホチキスで留める際、針がうまく刺さらないことがあります。そのような場合は、部品Bだけ一般的なアルミカンで作るようにしてください。
アルコールストーブ種類別自作例③|火力調節機能をつけてみよう
アルコールストーブはとても簡単な構造なので、火の強さを変えることはできないのが普通です。火の強さを変える機能を求めるなら、ガスバーナーを使うのが一般的です。それでも少し工夫をすれば、火の強さを変えることができるアルコールストーブの自作が可能になります。
DIYに自信がある人は挑戦しよう!
カーボンフェルトで燃焼芯を作る
ポイントを一言で説明すると、カーボンフェルトで作った燃焼芯を上下できるようにすれば、火の強さを変える機能が実現します。燃焼芯を下げると、外気に触れる面積が小さくなるので火力も小さくなります。逆に燃焼芯を上げると、外気に触れる面積が大きくなり火力も大きくなる、という理屈です。
用意するのはカーボンフェルトと磁石
作りやすくするコツは、なるべく小さな缶を使うことです。小型サイズの自作で紹介した「ウコンのちから」や、似たサイズ・形のコーヒー缶がおすすめです。その中に、カーボンフェルトを丸めて作った燃焼芯を差し込みます。なお、カーボンフェルトはホームセンターで安価に購入できます。
磁石は、100均などで売られている小型マグネットを2つ用意しましょう。燃焼芯には、マグネットを1つ固定しておきます。もう1つのマグネットは、缶の外側からくっつけます。そうすると、缶の外側のマグネットを上下させれば、燃焼芯を上げ下げできるようになります。
アルコールストーブ種類別自作例④|百均で材料を買って作ろう
アルミカンを使って作ると、コーヒー缶やビール缶などの見た目がそのままになってしまうので、少し不格好です。サンドペーパーなどで缶の表面を削れば塗装をはがすこともできますが、それも若干手間がかかります。そこで100均で買えるものを使って、ちょっとお洒落に作りましょう。
ちょっとお洒落に作ってみよう!
100均にある携帯用灰皿を使おう
ここで使うのは、100均で売られている携帯用灰皿です。ブリキ地のデザインなので、アルミ缶よりもちょっとお洒落な見た目になります。まずは灰皿の口の周りに、ジェット孔となる穴を開けます。