「まぐわい」ってどんな意味?昔から使われるまぐわいの意味や由来とは

この時、最初に生まれた子に、水蛭子(ひるこ)という名前を付けました。しかし、古事記では葦の船に乗せて流し去らせてしまうという記述が続きます。理由はいくつか考えられますが、充てられている漢字の様子から、その子は人の形を成していなかったのではないかと推測されています。

続いて、伊邪那美命(イザナミノミコト)は、淡島(あわしま)を生んだと記述されています。しかし、これも子の数には含めなかったと言葉が続きます。物語が描かれた当時の日本の様子が、背景として重なる話です。

昔は愛情を重視していた

まぐわいは、相手への深い情愛を表す心のあり方を伝えるための言葉と解すると、この言葉が意味を成していた当時は、愛情を伴った情交をそれ以外の性交と区別し、ある意味においては特別視していた様子が伺えます。

単純に言い切れるものではありませんが、当時の結婚観に対して、恋愛に憧れる気持ちが見て取れる言葉遣いなのです。何故かというと、男女の目線が触れ合うという姿から描かれるまぐわいは、目の届く距離に二人が立ち会わなければ始まらないからです。

その様子を想像するためには、古事記が描かれた頃の宮中の様子に触れると合点が行くことでしょう。宮中では年頃の男女がお互いに顔を合わせる機会は限られていました。そのため、相手に思いを伝えるために文が用いられ、これが後に恋文として残ることになるのですが、文には知性と品格を示す術として和歌が詠まれるほどでした。

古くから続く性への意識

それぞれの時代において、恋愛や結婚に対する価値観は異なります。そして、その流れの中で生まれたのがまぐわいという言葉なのです。受け継がれた言葉に宿る意味を良く噛み締めて、先人の思いに心を馳せるのも面白いことなのかもしれません。

古き良き日本語は廃れつつある

先人たちの残した古き良き日本語は、残念ながら、今の日本では使われる機会が減り、耳にする機会も失われつつあります。理由はいくつも考えられますが、生活環境が変化していることに加えて、昔と今では、男女の持つ距離感が大きく異なっています。

英語が取り入れられ始めた

日常会話の中にも、英語を語源とする外来語が多く取り入れられました。言葉の置き換えが進んだ結果、日本古来の表現を宿した言葉遣いをする機会が減り、記憶から遠くなりつつあることも事実です。

最近では横文字が多くみられる

外来語の多くはカタカナで表記され、アルファベットに倣って横文字で表現されます。少し難しい漢字の読み方を憶えてからでなければ、意味が伝わりにくい言葉を使って相手の誤解を招くよりも、便利に思えてしまう機会が増えています。

通信機器が普及した結果

電報と異なり、メールは文字数を気にすることなく、便利に使うことができます。そして、今ではSNSで、短い言葉のやり取りを繰り返すことが可能になり、文字で表すよりも、写真や動画で相手に伝えることもできる時代になりました。

でも、だからこそ、かつての恋文が相手に対して、自らの品格と知性を知ってもらうことのできる方法であったように、丁寧な言葉で記した文字と言葉に、もう一度、価値を見出す時代が近づいていると言えるのかもしれません。

現在使われなくなった言葉は多い

例えば、昔ながらの言葉で厠(かわや)といえば、便所(べんじょ)を指し、今風にはエチケットルームや、トイレを意味します。しかし、実際に言葉で表される建物を目にすると、厠(かわや)と便所(べんじょ)は全くの別物だと気付かされます。厠(かわや)は水洗の便所(べんじょ)であることを示す特別な便所(べんじょ)を示す言葉なのです。

そのため、公家は厠(かわや)で用を足し、農民は便所(べんじょ)で肥やしを作るという言葉使いとなります。現代を生きる私たちからすると、大差ないように感じてしまいそうな言葉の違いですが、意味があるからこそ、使い分けられてきた日本語の奥深さを感じる話です。

時代の移り変わりで言葉の置き換えが起こる

西欧からの文化をもてはやす風潮がにわかに活気づくと、それまで白粉として販売されていた製品までが、ファンデーションと名前を変えて店頭に並べられたという記述を見つけることができます。中身はまったく同一であったそうなのですが、妙齢のご婦人方にはファンデーションの売れ行きの方が良かったそうです。

まぐわいの類義語

男女の視線が絡み合ったところから生まれる情愛を示すまぐわいの奥深さに対して、どうしても最後に男女間の行為に及ぶところから、意味合いがよく似ている言葉として類義語に数えられてしまう、いくつかの言葉との違いをまとめてみました。

性交

これはもう直線的な言葉で、それ以外に言い表しようのない部分を素直に表現しています。まぐわいとの違いは、まるで、最後の瞬間だけを切り取ったかのように、そこに至るまでの過程やお互いの心情について、一切、表現されない点をあげることができます。

性愛

こちらは性交渉のみならず、その欲望的な性欲や、愛着を示す際にも使われる言葉です。性交よりも広い意味を持つ反面、この言葉だけでは何を伝えようとしているのか不明瞭となってしまいがち。そのため、具体的な姿や形というよりも、芸術的な分野で多様される機会の多い言葉です。

NEXT 情事