ウナギの生態を徹底解説!実は謎の多いその生態を様々な角度から解説!

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ウナギは調理法がほぼ「焼き」に限られる珍しい魚です。それは毒により加熱しないと食べられないのも一因ですが、ウナギは身にコラーゲンが多く生ではかなり身が固いですが、加熱するとゼラチンに変化してふんわりと柔らかくなります。その柔らかさを最も味わえるのが焼きという調理法なのです。

ウナギが入った慣用句

ウナギは昔から人との関係が深い為、その性質や見た目を利用して慣用句にも使われています。例えば「ウナギの寝床」という言葉がありますが、これは間口(入口)が狭くて奥行きがある家や場所を指す言葉で、ウナギがよく隠れている場所からとったものです。

また、「うなぎのぼり」とは、物価、評価や数値などが急激に上がったり増えたりすることを言います。この由来はウナギが急流や崖などでも上っていく為とか、ウナギの体はヌルヌルしている為につかもうとすると上へ上へと逃げていく為とか言われています。

ウナギの養殖について

ウナギの養殖は現在のところシラスウナギを捕獲して育てる方法がとられています。しかし近年シラスウナギの量は減っており、1960年代には200t以上獲られていたのが、近年では十数t、2018年は9tを下回っています。

また、ウナギの成魚の漁獲量も右肩下がりに減っていて、資源の減少、ひいては絶滅も心配されている状況です。しかしまだまだ謎が多く、卵から育てる完全養殖には至っていません。研究の推進と資源の保護が両方重要で、今のままだとウナギが食べられなくなる日が来てしまうかもしれません。

ウナギは釣りの対象魚

ウナギは釣りも楽しむことができる魚です。川の下流域や河口付近にいることが多く、日没後数時間がいちばんよく釣れます。ウナギは寒い時期には冬眠する為4~10月ごろがシーズンです。ただし、場所によっては漁業権がある場合があるので必ず事前に確認をしましょう。侵害すると罪に問われることもあります。

ウナギ釣り①:伝統的な漁法

ウナギは古くから食用とされている為、伝統的な漁法が今でも残っています。例えば長い柄に鉤を付けた道具でウナギを引っ掛けて獲る「ウナギ掻き」、河口の川底に石を積み上げそこに潜んでいるウナギを捕らえる「ウナギ塚」、竹やプラスチックでできた仕掛けを水に沈め数日後に隠れているウナギを引き上げる「ウナギ筒」などです。

ウナギ釣り②:投げ釣り・ウキ釣り

これは釣竿を使ったいわゆる「釣り」で、特に難しい仕掛けは必要ありません。ウナギ用の仕掛けも売っているのでそれを使ってもよいでしょう。エサにはミミズやイソメがメジャーですが、嗅覚の鋭いことを利用して魚肉ソーセージを使った例もあるようです。

投げ釣りやウキ釣りを行いたいときには日没後数時間が勝負です。日中や夜遅くの時間はあまり釣ることができません。さらに雨上がりなどで水が濁っているときはよりウナギが出てきやすくなります。

ウナギの食文化

ウナギは古くから食用とされていますが、昔から精のつく食べ物として知られています。それは、脂が多い割にカロリーが低く、ビタミンA・B群・D・EやDHA、EPAなども含み、疲労回復や抗酸化作用、心臓病や脳梗塞の予防にも役立ちます。

土用の丑の日はプロモーションから始まった?

現在ウナギを食べる日といえば7月下旬の土用の丑の日が有名です。その季節になるとスーパーにもたくさんウナギが並び、外食チェーン店などでもウナギのメニューが出てきます。この習慣はじつは江戸時代に鰻屋のプロモーションから始まったと言われています。

江戸時代に売れない鰻屋があり、その店主が当時の蘭学者であった平賀源内に相談をしました。元々丑の日に「う」がつく食べ物を食べると良いとされていたので、平賀源内はそれを利用して看板を出すよう勧めました。するとその鰻屋が繁盛した為、習慣になったという説があります。

関東と関西の蒲焼きの違い

ウナギの蒲焼きと一口に言いますが、関東地方と関西地方ではその作り方に違いがあることを知っていますか?その違いから、関東の蒲焼きは柔らかくふわっとした食感、関西の蒲焼きは皮がパリッとしているのが特徴です。

蒲焼きの違い①:さばき方

関東ではウナギを背開きにします。これは武士の多かった江戸では切腹を連想させる腹開きが嫌われたこと、背開きのほうが簡単なことなどの理由があります。それに対し関西は商人の町の為、腹を割って話そうという意味を込めて腹開きにします。

蒲焼きの違い②:加熱の仕方

関東では開いたウナギを竹串にさし、軽く素焼きにした後蒸し、その後さらにたれをつけて軽く焼きます。蒸すことで柔らかさが増し、余分な脂が落ちるほか、焼き時間が短いので早く提供できます。一方関西は金串を使用し、蒸しの工程は入れずにじっくりと焼きます。焼くことで皮がパリッと食感がよくなります。

蒲焼きの違い③:盛り付け方

関東ではうな丼やうな重のようにご飯の上に蒲焼きを乗せて出すのが一般的です。しかし関西ではご飯とご飯の間にウナギを挟むようにして盛り付けます。こうしてご飯でウナギを蒸すのです。関西でウナギを「まむし」と呼ぶのは、ご飯で蒸す「まんまむし」からきているという説があります。

ウナギの養殖の壁―マリンスノーとは?

ウナギは大変おいしい魚ですが、今のまま消費し続けると絶滅して食べられなくなってしまう心配も出てきています。その為研究が進められているのが完全養殖です。これは卵から成魚まで人工的に成長させ、それに卵を産ませてまた育てるというもので、これが実現すれば食べられなくなることもなく、天然資源を守ることもできます。

ウナギ養殖にはマリンスノーが必要?

ウナギ養殖で不可欠なのが適したエサを与えることですが、じつは卵からかえった後レプトセファルスの時期に何を食べて成長しているのかわかっていませんでした。それが東京大学などの共同研究で、マリンスノーがエサであることがわかり、2012年に研究結果が発表されました。

マリンスノーについて解説

これは海中をゆっくり沈んでいく雪のように見える物体のことで、この正体はプランクトンの糞や死骸が細菌などによって分解された粒子です。現在ではマリンスノーの成分を分析して、コストが安く手に入りやすいエサを見つける研究がなされています。

やっと見つかった解決策とは

レプトセファルスのエサがわかったのは2012年ですが、じつはそれより前に卵からシラスウナギまで育てることには成功しています。その際に使用されたのはアブラツノザメというサメの卵を使ったエサで、その後イタチザメやアイザメの卵、鶏卵を使用したエサも利用できることがわかっています。

しかし現在のところ完全養殖に成功したのは小規模水槽の中のみで、稚魚の生存率もかなり低い為、販売するには至っていません。エサや設備にかかるコストも課題となっており、これからさらなる研究の進展が待たれます。

ウナギの謎や豆知識を紹介

様々な研究が進み、わかってきた部分も増えてはいるものの、ウナギにはまだまだ謎な部分もたくさんあります。その不思議な生態や、職場や学校で人に話したくなる豆知識を紹介したいと思います。

ウナギでないウナギって何?

じつはここで紹介しているニホンウナギ以外にも「ウナギ」と名の付く魚はたくさんいます。しかしその多くは分類上異なる生き物です。それらは何故そのような名前がついたのか、一部を見てみましょう。

デンキウナギ

南米のアマゾン川などに生息するデンキウナギ目ギュムノートゥス科デンキウナギ属に属する魚です。自ら発電することができ、その強さはワニや馬を感電死させられるほどだといいます。細長い円筒形の体を持つことから「ウナギ」と名前がついていますが、体の構造などが全く異なる生き物です。

ヌタウナギ

無顎類ヌタウナギ目ヌタウナギ科に属する生物で、深海に生息しており、顎がなく吸盤状の口と体表から出す大量の粘液が特徴です。見た目は細長い円筒形の体をしていますが尾びれ以外のひれがなく、体はほとんど軟骨で厳密には魚ではありません。

ヤツメウナギ

無顎類ヤツメウナギ目に属する生物で、ウナギと似た細長い体とその目と7つのエラ孔が8つの目に見えることからこの名がついたと言われています。しかしヌタウナギと同じく吸盤状の口をしていて、こちらも魚とはかけ離れた生物です。

川に戻らない海ウナギとは

ウナギは海で生まれた後川を遡上して数年~十数年間かけて成長しますが、川に戻らずに浅海や河口で成長するものもいます。ある研究では半分以上が海や河口で成長しているという結果もあります。じつはかつての東京湾にはそのような個体がたくさんおり、東京に鰻屋が多く江戸前のウナギが有名なのはその為です。

海に行かないウナギがいる?

じつはウナギがダムの上流や滝の上流、川などが繋がっていない池で見つかることがあります。その為海へ行かず、一生を川で過ごし繁殖もしているという噂も出ています。現時点では淡水での繁殖の事例はありませんが、絶対にないと言い切れないとも言えます。今後もウナギは研究の余地がありそうですね。

ウナギを動画でチェックしよう

ここで、普段あまり見ることのできない場面を動画で紹介したいと思います。水槽などではなく川で泳ぐ天然ウナギの姿、釣りにおけるスリリングな戦いぶり、ウナギさばきのプロによる鮮やかな手つきを見ることができ、どれも必見の動画です。

ウナギの泳ぐ姿

一般的な魚のように尾を振って泳ぐのではなく、全身をくねらせることで推進力を得て前に進みます。魚類の中ではさほど泳ぎが上手な方ではなく、速く泳ぐこともできません。その為、毒で体を守り、岩陰などに隠れて暮らしているのです。

ウナギの穴釣り

これは、ウナギの隠れている場所に餌のついた針を引っ掛けた棒を差し入れ、食いついたところを捕まえるというものです。水に入って行うので暑い時期、日中に水のきれいな沢などでやるのがおすすめです。岩穴や石と石の隙間などを重点的に狙い、エサのにおいが流れるように川上から川下におりるように探しましょう。

ウナギのさばき方

こちらの動画は背開きをしている動画です。まず頭を固定し、背側から包丁を入れて背骨に沿って一気に開きます。そして内臓と背骨、ひれを取り除きます。基本的に生きたままさばく為動くので注意しましょう。そして血には毒があるので、さばいた手で他の食べ物などを触らないようにし、速やかに手を洗いましょう。

身近な謎多き魚、ウナギを詳しく知ろう!!

ウナギは日本人にとってなくてはならない身近な魚のひとつです。しかし意外にもその生態はまだまだ分かっていないことが多く、謎に包まれた部分がたくさんあります。もしウナギを食べたりスーパーで見かけたりすることがあったら、その不思議な生態を思い出してみてください。少し味わいも変わるかもしれません。

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