ゴイアニア被曝事故の悲劇|廃病院で盗難されたセシウム137で放射線が拡散

さらにその中の129人もの人は、健康被害が出始める程の汚染が確認されました。この方々はプレシアンブルーによる除染や治療を受け大事には至らなかったようです。残る120人の汚染対象者は服や靴が汚染された程度に留まっており、身に付けているものを処分するだけで大丈夫でした。

被爆者数249人、汚染により4名の尊い命が失われた

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セシウムの近くにいた時間が長かったマリア。作業のため部品に多く触れていた2人の作業員。そしてセシウムに触れた手を洗わずに食事をしてしまったレイデが犠牲となりました。悪事を働いた当事者達ではなく、周りの人が犠牲になった本事件。とくにレイデに至ってはまだ6才でした。国の不注意や無知が招いた惨事に胸が締め付けられる思いです。

当事者達は…

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彼等はというと、一命は取り留めますがその代償はあまりに大きいものとなりました。まずはロベルト、ヴァグナーの2人。ロベルトは右腕を切断。ヴァグナーは右手の指を数本失う結果となったそうです。デヴァーはなんと被爆者の中で最も被曝線量が高かったにも関わらず一命を取り留めます。

しかし、デヴァーはその後うつ病とアルコール依存症を患い9年後の1996年に肝硬変で亡くなります。妻と姪を亡くし、親族や自社の従業員達にも多数の被爆者を出し自身も被爆者となってしまった彼。元はと言えば盗んだ2人が悪いわけですが、知らなかったとはいえ自分が被害を拡大させてしまったとあっては、彼の心中察するに余りあります。

家屋の解体、大規模な除染作業

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家屋や車、動植物、土。全てのものに汚染検査が行われ取り除かれました。盗みの実行犯ロベルト、ヴァグナー。廃品回収屋のデヴァーとその兄イヴォ、そしてセシウムを持ち帰ったデヴァーの友人3名、計7つの家屋が取り壊され、土までまるごと取り除かれました。

このときの家屋の残骸や土などの汚染物は全て金属の容器に密閉され、保管所に移されました。その量およそ3,600m3。除染作業にかかった費用はなんと4,300,000ドル以上にも及びました。

放射線による風評被害と差別

この事件は、前年1986年にチェルノブイリ原発事故があった事もありブラジル国内で大々的に報道されその反響は物凄いものとなりました。ゴイアニア市民は流行り病でも持ってるかのような目で見られたと言います。汚染が無いのに野菜は食べて貰えず、市民はホテルやタクシーの利用すら公的機関の証明書が無いと拒否されたそうです。

この事態、我々日本人も覚えがあるのでは無いでしょうか。記憶に新しい3.11の福島原発事故です。その際も、避難先で子供がいじめの対象になったり福島県産の物を拒否する問題が数多く起こりました。正しい知識が広がりその問題も徐々に薄れてきた現在。やはり感情だけではなく、正しい知識で状況を見る事が大切なのだと思い知らされます。

差別により積もった鬱憤

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ゴイアニア市民らはこれらの差別や汚染地帯からの強制退去命令に鬱憤を募らせており、放射線量をモニタリングするために設置した機械を無断で撤去したり観測作業を妨害したりなどのトラブルが後をたたなかったそうです。

また、亡くなった4人の犠牲者の葬儀では、高濃度に汚染された遺体の埋葬を阻止すべく暴徒が押し寄せる大変な葬儀となったようです。4人の眠る棺は鉛を内張し放射線が漏れないよう対策した上で、墓地の隅の一角に分厚いコンクリートで棺を覆い埋葬されました。遺体ですら大変な脅威となってしまう。放射線の恐ろしさを感じます。

ゴイアニア被曝事故!セシウム被曝事故の考察

以上が、この事件の顛末です。治療や殺菌で放射性物質を扱う、案内身近な物になってしまった今日。明日は我が身かもと思うに十分な事件でした。では、ここからはどうしてこの事故か起こってしまったのか。防ぐ事は出来なかったのか。という考察を載せていこうと思います。

元凶は放射性物質を放置した病院

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ロベルト達が盗みを働いたところから事件は始まった。盗んだ彼らが一番悪いのではないか。と、思うのは至極当然な流れだと思います。ちょっとこの人達無知過ぎない?そんな怪しいもの触んないしわかるでしょう。その気持ちも、とてもよくわかります。筆者もこの記事を書きながら何でだろうと首を捻っておりました。

しかし、それ以上の原因に考え至りました。それは、やはり病院の関係者達。その作業と管理の杜撰さです。そもそも、廃病院にそんな危険物を放置しなければ起こらなかった事態であり、百歩譲ってトラブルで持ち出せなかったにしても見張りを立てたり毎日チェックしに来たりなど、盗ませない努力は出来たのではないでしょうか。

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