漫画雑誌の連載からアニメ化され作品の中にも面白い存在として描かれています。言い伝えのイメージを覆すユニークなキャラとして登場し人気が急上昇中です。
地獄を題材にした人気漫画「鬼灯の冷徹」にも登場
このアニメは八大地獄で働く閻魔様やそれを補佐する主人公の「鬼灯」を中心に、数々の獄卒たちがおりなす地獄の日常を描いています。
漫画は元々2011年から漫画雑誌「モーニング」で連絡が始まり、2013年にはアニメ化されました。その中の登場キャラクターの一人として奪衣婆も登場しています。
怖いながらも面白い偏屈なおばあさん
ここに登場する奪衣婆もやっている仕事は基本的に古くからのいい伝えと同じで、亡者の着物を剥ぐことです。しかしニートになってしまった縣衣翁に代わり、衣領樹で罪の重さを測る仕事も一人でやっています。
能力がありなんだかんだと一人で仕事ができてしまうのですが、絶えず賃金の値上げを訴えるなど、この世の人のような要求をしています。そして対応する相手の男性によってコロコロと態度を変えるという、とても人間くさいユニークな存在として描かれています。
奪衣婆のお祭りもある!海元寺の「えんま祭り」
先にご紹介した太宗寺と同じように閻魔像などを祀るお寺は全国他にもあります。年2回地獄の休日にご開帳を行うのも同じですが、奪衣婆に対する認識は異なっているようです。ここでは福岡県にあるお寺のお祭りをご紹介します。
福岡県海元寺では奪衣婆のお祭りがある
博多市にある海元寺でも毎年2回、8月16日と1月16日はこの世の人間にも地獄の様子を見せてもらえる日としています。その日は「えんま祭り」と呼んでいますが、三途の川のほとりにいる奪衣婆にお供え物をすることで有名です。
こんにゃくを供える風習がある
お供えするのは「こんにゃく」です。これには亡者の着物でもなんでも剥ぎ取ってしまうという奪衣婆に、自分の病気も剥ぎ取ってもらいたい、という願いが込められています。
毎年お祭りの日になると、像の前に置かれた樽が一杯になるほどのこんにゃくが供えられるとのことです。それ以外にも境内では中におみくじが込められた海元寺特製の「閻魔お守り」なども買い求めることができます。
お祭りに見える奪衣婆の慈悲の顔
このお祭りを通していい伝えられている奪衣婆の姿は、今まで見たきたものとはかなり異なっています。ここでは昔から子供の病気を治してくれたり、母乳の出をよくしてくれたりととてもやさしい一面を見ることができます。
少なくともここ博多では無慈悲に着ているものを剥ぎ取ってしまう鬼ではなく、慈悲深い存在のようです。そして別名「こんにゃく婆さん」として親しまれています。
冥界への入り口はあるのか?
冥界という言葉をご存知でしょうか。冥界とはあの世のことで冥土ともいい、人が死んでからいく世界のことです。そういう意味では奪衣婆がいる三途の川も、生前の悪業によりいかされる地獄も冥土ということにになります。
では冥土には死んだ者だけしか行けないのでしょうか。実は私たちが存在しているいわゆる「この世」には、冥土に通じる道があるといわれている場所があります。
冥界への入り口があるとされる「六道珍皇寺」
六道珍皇時寺は京都市東山区にあるお寺です。あの世とこの世の境がこのお寺の境内にあると言われており、裏庭の井戸がその冥界の入り口と信じられています。
その昔このお寺が平安京の東の墓所へ向かう道筋にあり、この世のはかなさを感じる場所であったことなどから、このような話が伝えられてきたと言われています。興味のある方は一度行って見てはいかがでしょう。
地獄を題材にした漫画やアニメはとても人気!
先の章では漫画やアニメの世界では奪衣婆を、コミカルなキャラクターで取り上げているという紹介をしました。このように日本には地獄に出てくるキャラクター、特に閻魔様を登場させる漫画やアニメが先ほどの鬼灯の冷徹をはじめ過去から多く存在し人気です。
ゲゲゲの鬼太郎
最初のアニメシリーズが1968年からとご紹介する中ではもっとも古く、昔から日本人に親しまれている妖怪アニメです。原題は「墓場の鬼太郎」だったが墓場というタイトルにスポンサーがつかず、今のタイトルに変更されたという経緯があります。
ものすごい巨体の持ち主で鬼太郎親子の力を信頼しています。鬼太郎が窮地におちいった際にはアドバイスや協力をしてくれる文字通り頼りになる存在です。
幽遊白書
1990〜1994年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載された人気漫画です。主人公の浦飯幽助が交通事故で死亡したところから物語が始まり、生き返り「霊界探偵」として働き始めるのですが、その上司が閻魔大王の息子であるコエンマ様という設定です。
おしゃぶりをした赤ちゃんの容姿ですが年齢は700歳を超えていると言われています。見た目通り子供っぽいところと、年長者らしい頼れる面をもったキャラとして描かれています。
ドラゴンボール
1984年から10年半に渡って「週刊少年ジャンプ」に連載された超人気漫画です。閻魔大王が登場するのは物語途中のサイヤ人編からになります。赤色の肌と髭面はいかにも地獄の大王といった容姿ですが、状況に応じた臨機応変に対応できる人物として描かれました。
奪衣婆は恐ろしいが、優しい側面もある地獄の番人
今回は奪衣婆という鬼の存在について解説してきましたがいかがでしかでしょうか。今まで奪衣婆のことは知らなくても「地獄の沙汰も金次第」ということわざは聞いたことがあると思います。その金を渡す相手がこの鬼だったのです。
名前とは異なり慈悲深い側面もあるようですが、生きている間の行いが悪いとやはり指の骨を折られ地獄に行かされるのでしょう。もしも死後の世界で出会うことになった時のためにも、日頃の行いには十分気をつけたいものです。