カスパーハウザーとは?
彼は19世紀初頭にドイツに実在した孤児です。200年近い年月が経った現在でも彼にまつわる伝説が語り継がれています。特殊な環境で生まれ育った彼は人並みはずれた鋭い五感をもっていました。そして何者かに暗殺され多くの謎を抱えたまま歴史の彼方へと埋没しまいました。
ドイツの伝説的孤児
彼は保護された当時、言葉を話すことはおろか、コミュニケーションを取ることさえ困難でした。人間らし感覚をほとんど持っていなかったのです。長い期間地下牢のような所で社会と隔離された状況に幽閉されていたのが原因です。
公的な書類が残っている
公的な記録が現在も保管されています。この記録によりカスパーハウザーが何時発見され保護されたか。その時の状況や彼の様子をうかがい知ることが出来ます。そして彼の最後の日となった暗殺の日までが記録に記されています。
突然現れた謎の少年カスパーハウザー
ボロボロの服を身に纏い、痩せておびえた様子の子供がある日突然闇の中から現れドイツ中に噂が広まりました。突然人前に連れ出された少年は子犬のように怯えていました。話すことは困難で、身体的にも非常に不可解な現象が見られました。
1828年ドイツのニュルンベルクで発見される
ニュルンベルクに彼が現れたのは1828年5月です。時代は神聖ローマ帝国が滅び、ドイツ連邦が発足して間もない混沌とした時代です。産業革命が起こる以前て騎馬隊が軍の主流でした。ここにカスパーハウザーという孤児はボロボロの格好で現れました。
ほとんど喋らずにまともに歩くこともできない
彼は話をすることはおろか、まともに歩くことも困難でした。明るい場所に連れ出すと光におびえ、痛みさえ訴えたといいます。まさに人間の姿をした動物のような存在だったのです。彼を語るときに「野生児」という表現が使われるのはこれが理由です。
膝を曲げたことがない?
記録によると彼の膝は木の枝のように伸びたまま曲がりませんでした。わずかに反対向きに反っているようでもありました。「まるでこれまで一度も膝を曲げたことがないようだ」と記されています。どのような状況に置かれると膝を曲げなくなるのでしょう。
自分の名前は筆記することが出来た
警察に保護されたカスパーハウザーは、紙に鉛筆で自分の名前を書いています。彼を連れ出した男が名前と文字だけを教育したのです。それが誰なのかは今もって謎の中です。非常に高貴な身分を持つ人物だったのではないかという噂は消えることがありません。
唯一の手がかりは2通の手紙
警察に保護された彼が所持していたものは2通の手紙だけ。この手紙からは彼の身元を推察する手がかりはありませんでした。書かれていた内容から彼の年齢が16歳であることは分かりました。
実の母親が書いたと思われる手紙
彼が持っていた手紙は2通。そのうちの一通は彼の母親がしたためた手紙ではないかと推察されています。この手紙には洗礼を受けていることや、誕生日が記されていました。彼の年齢はこの手紙から推察された年齢です。
- 洗礼を受けている
- 名はカスパーで姓はない
- 父親は死んでいる
- 17歳で騎兵隊への入隊を望む
騎兵隊に宛てた手紙
もう一通は騎兵隊の大尉にあてた手紙でした。この手紙には彼の父親がかつて同じ騎兵隊に所属していたと書かれていました。しかし、大尉には思い当たる人物はいなかったようです。結局彼は騎馬隊への入隊は認められず警察で保護されます。
- 1812年10月7日に私の元に来た
- 一度も外に出したことがない
- 貧しいために彼を育てることが出来ない
- 手に余れば殺してほしい
- 騎馬隊に入隊させてほしい
同一人物が書いた可能性も
2通の手紙は別々の人物が書いたものだとされていますが、同一人物だったのではないかと疑問視されています。また誰が書いた手紙なのかも謎のままで、彼がなぜ人間性を失った,あるいは育むことが出来なかったかについては一切言及がありません。
カスパーハウザーは孤児として保護される
彼は手紙で希望した騎馬隊への入隊は認められませんでした。孤児として市の管理下で保護されることになります。そこで彼は教育を受け、自分の過去を少しずつ白日の下にさらしていくことになります。
警察の所有する塔で生活をすることになる
警察が所有する塔でカスパーハウザーは新しい背活を始めます。ここでの生活で彼は驚くべき成長を遂げ、流暢に言葉を操り顔つきも穏やかになったといいます。目が落ちくぼみうつむいておびえていた少年は教育によって生まれ変わったかのようだったといいます。
パンと水しか口にできなかった
カスパーハウザーが口にした食べ物はパンと水だけでした。それ以外の食べ物は体が受け付けずに吐き出してしまいました。保護されるまではパンと水以外を口にしたことが無かったのでは?と考えられています。
カスパーハウザーは初めは人間らしさを持っていなかった
誰もが持っている基本的な「人間らしさ」を彼は持っていませんでした。野生児とも違い、幽閉されていた彼は圧倒的に全ての経験が乏しかったようです。どのような状態だったのかを下記にまとめてみます。
生命を認識することができなかった
彼は飽きることなく人形で遊び、人形にも必ず餌を与えたといいます。その姿からは「人間と人形」の区別がついていないようだったといいます。つまり生命の有無や生命の価値を認識できなかったのです。
徐々に喋れるようになり、読み書きもできるようになった
ほとんど喋ることやコミュニュケーションが不可能でした。彼が保護されて教育されていく間に驚くほど発達します。これは人間は教育でいつでも変わることが出来るという事と、能力があっても教育を受けないとかくも悲惨な状況になるのだという事を明示しています。
経験が乏しい彼には行動の結果が理解できない
ロウソクの日を見てそれを掴もうとしたり、鏡の中の自分の姿におびえたり怒り出したりしました。また刃物を近づけてもおびえることがありませんでした。まるでそれらが何なのかが全く理解していません。火に触ると熱いという事や尖ったものが危険という事が分からないようでした。
覚えるのではなく思い出すように
彼の教育に当たった担当官はこんな風に表現しています。「新しい事を覚えていくのではなく、思い出すように色々なことが出来るようになっていった」彼は恐らく虐待され地下牢に閉じ込められ人間性を漂白されていたのでしょう。
少しずつ明かされるカスパーハウザー発見前の生活
保護を受けた生活を始めた彼は言葉を話すことが出来るようになり、生まれてから現在に至るまでの様子をおぼろげに語っています。それらは断片的な情報で空白が大きすぎます。彼の素性を語るには空白を埋める想像力がどうしても必要になります。
非常に暗くて狭い空間で生活
彼が暮らしていた場所は非常に狭く暗い所でした。奥行きが2m、横幅が1mのスペースで窓はなく、天井が低くて立ち上がることが出来ませんでした。建物の中の地下牢のような所に幽閉されていたと考えられます。昼夜を問わず暗闇の中にいた様です。
監禁され、食事はパンと水だけ
彼は幽閉された空間の中で与えられていた食事はパンと水だけでした。長期的にそれだけしか食べることがなかったので、それ以外の物を受け入れることが出来ない体にかなっていました。パンと水以外は全て吐き出してしまいました。
寝ているときに世話をする人物
彼が閉じ込められていた小さな部屋に世話をしてくれる人がいました。その人が食事を運び彼に命を繋ぎとめるだけの食事を与え馬の人形を与えたといいます。しかし、彼自身もその人物が誰なのか知りません。その人物も謎につつまれた「ただの男」なのです。
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カスパーハウザーが初めて見た人間
彼は自分が何者なのか、自分がどこから来たのかをしりません。そして知っている人間もたった1人でした。その人間に彼は世話を受けて食事を与えられました。しかし、その男は彼に悪いことはしませんでしたが、良いこともまたしませんでした。
突然部屋に入ってきた男
突然部屋に入ってきた男によって彼ははニュルンベルクに連れてこられました。ここで初めて沢山の人間を目撃し星空を眺めたといいます。もちろん日の光に当たった経験も彼の記憶の中には存在しません。