こちらは宮城県仙台市に伝わる賢淵にまつわる女郎蜘蛛の話です。伊豆の伝説と同様に全国的に広く流布している有名なエピソードの一つです。
宮城県仙台の伝承
町はずれの淵で釣りに勤しんでいた男性は、ふと自分の足首に蜘蛛の糸が巻き付いている事に気がつきます。糸を邪魔に思った男性は側にあった柳の木に糸を括り付けました。その後も同じように気づくと足首に糸が絡まっており、その度に柳に糸を括り付けていると、突然地面が盛り上がり柳の気が淵に吸い込まれていきました。驚いた男性が啞然としていると淵の底から「賢い賢い」という声が響き渡り男性は一目散に淵から逃げ出しました。
この淵には蜘蛛の神様が居り淵に近づく男性を引きずり込んでしまうという謂れがあり、この男性の機転の利いた行動により命が助かった事から、後に賢淵と呼ばれるようになりました。
Contents
蜘蛛から妖怪へ
女郎蜘蛛と同じく、人が死後に蜘蛛の体を模した姿へと変化してしまった妖怪や、人を襲う蜘蛛のような妖怪が存在します。百怪図巻や妖怪絵巻にて確認されている日本古来の蜘蛛の妖怪をご紹介します。
牛鬼
主に西日本に広く存在したと言われている妖怪です。名前の由来通り恐ろしい姿をしており、牛の首に鬼のような形相をした顔が張り付いており、体は蜘蛛の姿をしています。
三重県に伝わる伝承では牛鬼退治に出かけた武将が牛鬼に矢を放ったところ、その祟りで武将の妻が大病を患ってしまったと言われています。
土蜘蛛
本来土蜘蛛とは天皇や朝廷に反抗的な態度をとっていた人々の事を指す言葉でしたが、時代が移り変わるにつれて、巨大な蜘蛛の妖怪へと認識が変わっていきました。源頼光を憑り殺そうとした伝承が残っており、頼光の前に美人の姿で現れ誘惑しますが頼光に見破られ、切り殺されると巨大な蜘蛛の姿に戻ったとされています。
食わず女房
全国に広く伝わる昔話に登場する妖怪です。普段から全く食事をとらない女性を嫁に迎えた男性がその妻の事を不審に思い、深夜に妻の様子を隠れて見ていたところ、結っていた髪をおろした妻の頭頂部に大きな口がついており、その口に次々とおにぎりを入れていました。男性が悲鳴をあげ、妻を問い詰めると、みるみるうちに女性の姿から蜘蛛の姿へ変わり果て、逃げてしまったといいます。