テンレックたちが暮らすマダガスカル島には他にも、世界でその場所でしか見られない、奇抜で不思議な見た目をしていたり面白い生態だったりする動植物たちがその個性を発揮しながらたくさん暮らしています。
独自の進化を遂げた
遥か太古の昔にアフリカ大陸から離れてできたこの島は、その後しばらく外の世界と交わることがなく、生き物たちはそこで独自の生態系を作り出しながら進化をしていきました。現在でもマダガスカル島に生息している生物の9割は、その島でしか見ることのできない、極めて珍しい種だと言われています。
マダガスカル島の固有種
マダガスカルには世界の全カメレオンの、実に半分にも相当する種類が暮らしています。動物園の人気者のワオキツネザルや横っ飛びしながら走るベローシファカ、日本では童謡でお馴染みのアイアイなどの珍しい猿たちのふるさともマダガスカルです。
テンレックたちの中でも先程ご紹介したシマテンレックは他の仲間と比べて飛び抜けてカラフルな見た目をしていますが、ここマダガスカルで生きていると思えば納得ですね。小さなテンレックたちですが、個性豊かな住民の多いこの島での居場所をしっかりと確立しながら、長い年月を過ごしてきたのです。
テンレックとハリネズミは似てるけど全然違う
この記事のはじめにテンレックはハリネズミとは違う生物だとお伝えしました。それは具体的にどういうことなのでしょうか。どう見ても似ているのに違う、彼らの秘密をここから詳しくお伝えしていきます。
その理由は収斂進化
収斂(しゅうれん)進化という言葉をご存知でしょうか。本当はそれぞれ別のご先祖さまから全く違うルートで進化してきた動物なのに、似たような暮らしで似たような方法で敵から身を守ったりして生きてきたがために、結果としてお互いがすごく似ている見た目になった状態のことを言います。
ハリネズミとヒメハリテンレックはよく似ていますが、両者はご先祖さまとなる存在が大きく異なっています。テンレックは実は象、ツチブタ、マナティーやジュゴンなどへと枝分かれした生物をご先祖さまに持っています。見た目が似ているハリネズミよりも、それらの大きな動物たちの方がずっと近しい存在であるのです。
収斂進化は以外とたくさん
ダイビング中に運がいいと一緒に泳げるかもしれないとされ、人を襲うことがない優しいサメとして知られるジンベイザメ。彼らはプランクトンを食べて生活しており、同じような食事をしているクジラたちとよく似た体をしています。ですが、やっぱり彼らはサメの仲間なんです。
また、日本にもいるモモンガとオーストラリアのフクロモモンガもよく似ていますが違う仲間です。フクロモモンガは有袋類として、カンガルーやコアラの方の仲間であると言えます。耳慣れない言葉であろう収斂進化ですが、実は様々な動物たちがこれに当てはまります。