乙事主に驚きの裏設定!?名前の由来や祟り神のモデルなどその秘密に迫る!

大分県玖珠郡九重町の宝山には、財宝を守る白い猪の伝説があり、その姿を見たものは幸福になると伝えられています。2005年にこの宝山と近くの山で2匹の白い猪が見つかり、山中に建つ宝八幡宮に奉納されました。他にも鹿児島県霧島市にある和気神社では、神社の守り神として白い猪が飼育されています。

乙事主のモデル?古事記に登場する大猪

日本神話の古事記には、度々大猪が登場し、人間の王や英雄の前に立ちはだかります。特に乙事主を連想させるものとして、二つの話を紹介します。一つは、伊吹山の神の化身である白い大猪の話、もう一つは、葛木山の大猪とその山の神、その名も「一言主大神(ひとことぬしのおおかみ)」の話です。

どちらの話も、人が神の力を恐れていたことを伝えるもので、『もののけ姫』で描かれる時代には、その力関係が逆転していることが読み取れます。

ヤマトタケルを打ち負かした白い大猪

古事記の英雄、ヤマトタケルが、伊吹山(滋賀県と岐阜県にまたがる山)の神を平定しに向かいます。「この山の神は、素手で倒す」と徒手空拳で山に登ろうとするヤマトタケルは、麓で牛ほどの大きさのある白い猪に遭遇しました。彼は「この猪は山の神の使いに違いない。帰る時に殺してやる」と宣言します。

ところが、そのまま山を登って行ったヤマトタケルは激しい雹や雨に打たれ気絶し、その後何とか山を下りたということです。実は、大猪は神の使いではなく、山の神そのものの化身だったのです。使いと言われて怒った神が、雹を降らせてヤマトタケルを追い返したのです。

葛木山の大猪と「一言主(ひとことぬし)」

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雄略(ゆうりゃく)天皇が葛木山(奈良県と大阪府にまたがる山)に登った際の話しです。彼の目の前に、大きな猪が姿を現します。天皇がその猪に向かって矢を射かけると、怒った猪が突進してきました。天皇は木に登って難を逃れます。

また別の日に、雄略天皇は役人らを連れて葛木山に登りました。すると、装束から姿かたちまで、全く似通った一団と鉢合わせます。天皇は「この国の王は私しかいないのに、そのようにふるまうのは何者だ」と尋ねると、相手も同じ問いかけをしました。

怒った天皇一行が弓矢を構えると、相手側も同じく矢をつがえます。「名を名乗れ」と再び問う天皇に対して、相手は「葛木山の神、一言主である」答えました。天皇は畏まって一言主に献上品を差し出し、一言主は天皇の敬意に答え、一行が帰る際に麓まで送ったとのことです。

乙事主の有名なセリフ

『もののけ姫』という作品において、乙事主は重要なキャラクターであり、彼の発した言葉には、考察の余地のある深みがあります。それらから、彼がどのようなキャラクターで、どのような運命をたどるのか、紐解いていきます。

セリフシシガミの森でモロらとのやりとり

猪達は物理的な力を信じ、文字通り猪突猛進で人間に挑もうとします。そんな彼らには、何故一族からタタリ神が出てしまったのかがわかりません。それは、少しは話の分かる乙事主も同じでした。

そのためアシタカの「この呪いを消すすべはないのだろうか」という問いに答えられず、「小僧、森を去れ。今度会ったら、お前を殺さんといかん」と、せめてもの慈悲をかけることしかできなかったのです。

セリフ②「戻ってきた!黄泉の国から戦士が帰ってきた」

圧倒的な人間の力を見せつけられ、戦士達を殺された彼の心に、人間への恨みと、死への恐怖が募っていきます。「シシ神よ、いでよ!汝が森の神なら、わが一族を蘇らせ、人間を滅ぼせ」と続くこのセリフは、死から目をそらし、人間への恨みを晴らそうとする彼の心情を表したものであり、タタリ神となる一歩手前にいることがわかります。

セリフ③「熱いぞ。からだが火のようだ」

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彼の最後の言葉です。これ以降、彼はタタリ神に変貌してゆき、言葉を失ってしまいます。人間への怒り、恨み、憎しみそして、理不尽な死への恐怖が、まるで火のように沸き上がり、もはや自らの理性では制御できなくなったことが伝わるセリフです。

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