サルパとは?
れっきとした生物
体全体が透明で、頭や手足、目や口の位置も外見からはよくわからないサルパですが、これでも海に生息するプランクトン性の正真正銘の生き物です。不気味、かわいい、気持ち悪いなど人によってその第一印象はさまざまだと思いますが、このサルパは、知れば知るほど生命の不思議さや神秘を感じさせてくれるのです。
サルパはホヤの仲間
その見た目から、生き物だとするとクラゲの仲間のように思えますが、実は珍味として有名なホヤの仲間です。学術的には尾索動物という種類に属するのですが、なんとこの尾索動物は哺乳類や鳥類、爬虫類、両生類、魚類といった脊椎動物の進化の出発点となった生き物、つまりわれわれの遠いご先祖様につながる生き物とされているのです。
クラゲよりも人間に近いサルパ
尾索動物であるサルパには食道や胃、腸にあたる消化器内臓器官や脊索(せきさく)と呼ばれる、のちに私たち脊椎動物の背骨へと進化していく神経組織を持っています。ちなみに見た目が似ているクラゲはこの脊索をもっていません。つまりこのことからもサルパは生物の進化の過程の上ではクラゲよりも人間に近い生き物だとも言えるのです。
サルパは世界に何種類いるの?
多種多様なサルパたち
まさに世界でオンリーワンの存在にも思えるサルパですが、意外なことに世界中で約50種類が確認されています。ちゃんと日本語の名前がつけられているものもたくさんおり、代表的なオオサルパの他にもネジレサルパやトゲサルパのような変わった名前や、モモイロサルパ、ヒメサルパといったかわいらしい名前を付けられているものもいます。
サルパの生息地は?
日本近海にも生息
サルパが最も多く見られるのは南極海なのですが、赤道下や温帯、冷帯の海にも生息しています。実は地球上に生息している約50種のうち半数以上が日本近海でも見られます。海釣りで偶然、針やルアーに引っかかってきたり、また、ダイビング中や浜辺で遭遇したりすることもありますし、時には大量発生して漁業に被害を与えることもあります。
サルパの大きさは?
大きいものから小さいものまで
多くの種類がいるサルパですが、一つ一つの個体は通常、ほとんどの種で数㎝~10㎝程度の大きさです。しかし中にはオオサルパなど、名前にオオがついていることからもわかる通り、一つの個体が最大20~30㎝の大きさになるものもいます。
群体を作ると数mの大きさに
一つの個体の大きさはそれほど大きくはないサルパですが、たくさんの個体が鎖のように数mにわたってつながった群体となることがあります。そのまま細長くウミヘビのように海中を漂ったり、ときにはくるりとのり巻きのようにうずを巻いた状態になったりもします。この不思議な姿は、サルパの驚きの生殖方法に関係しているのです。
謎に包まれた生態と特徴・生殖方法①
無性生殖でクローンとして生まれるサルパ
サルパは面白いことに有性生殖と無性生殖の両方を行って子孫を増やしていきます。まず一体のサルパが無性生殖で自らのクローン、つまりコピーを多数生み出します。この生み出されたクローンたちは、ばらばらに海中に散っていくのではなく、数十から数百のクローンたちが鎖のようにつながった状態で海中を漂います。これがサルパの群体の姿です。
謎に包まれた生態と特徴・生殖方法②
有性生殖で卵から生まれるサルパ
群体のサルパはやがてばらばらにほどけて一個一個の個体になります。もともと雌雄同体のサルパですが、それぞれの個体のなかでメスの役割をするものとオスの役割をするものに分かれ、今度は有性生殖によってメス役のサルパの体内に卵が生み出されます。こうして生み出された卵はメス役となったサルパの体内でサルパに成長するまで育てられます。
謎に包まれた生態と特徴・生殖方法③
メスからオスへと性転換
サルパの奇妙な生殖行動はまだ続きます。卵を抱えたメスのサルパの体内になんと精巣が形成され、今度はオスとしてメス役のサルパと有性生殖を行うのです。こうしてオスに性転換した後も、体内の卵は成長を続け、やがて一匹の小さなサルパとなって海中へと旅立ちます。そしてこのサルパが再びこの不思議な生殖サイクルを行っていくのです。
サルパの泳ぎはジェット推進!?
動物界で効率ナンバーワンのジェット推進システム
サルパは餌となる植物プランクトンを、体の前端にある入水孔と呼ばれる口から海水と一緒に吸い込んで摂取します。その時に吸い込んだ海水を今度は体の後端にある出水孔からジェット噴射してすることで海中を移動するのですが、これは地球上でジェット推進を移動に利用する動物のなかでも、最も効率のよいシステムの一つとされているのです。