神秘的な生き物発見!不思議な生き物サルパの謎の生態や特徴まとめ

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食用であるホヤの仲間のサルパですが、そもそも人間の食用とは認知されていませんし、海洋学の専門家で食べたことのある人によれば、サルパ自体は生臭くて特に味もなく、おいしいものではないということです。ただ、同じ海の生き物である大型の回遊魚や貝類、ウミガメ、そして一部の鳥類がサルパをエサとして捕食していることがわかっています。

サルパの大量発生

漁業に大きな被害をもたらすサルパ

大量発生、漁業被害というとエチゼンクラゲが有名ですが、サルパも同様の被害をもたらすことがあります。近年では2015年に日本海側の広い範囲で大量発生して、カニや甘エビ漁で、網の破損や、重さで網が引き上げられなくなるといった被害が出ました。この時、福井県の越前ガニ漁に被害を与えたサルパの総数は実に一兆匹ともいわれています。

大量発生の原因は地球温暖化

近年の地球温暖化の影響で海水温が高い状態が続くと、サルパのエサである植物プランクトンの数が増加します。すると、その豊富なエサを食べてサルパもどんどん数を増やしていくのです。もともとサルパが無性生殖でも数を増やしていく繁殖力の強い生き物なので、増殖するうえでの好条件がそろってしまうと爆発的に増えてしまうのです。

対応策は今のところなし

大量発生してしまったサルパに対する効果的な駆除法はありません。ただ、サルパの寿命は1~2か月程度と言われているので、とりあえず自然に数が減っていくのを待つしかないのです。もちろん、生態系に悪影響を及ぼす可能性のある特定の生き物の大量発生が起きないように、地球環境の悪化を防いでいくことが大切なのは言うまでもありません。

サルパが地球温暖化を防ぐ!?

サルパと二酸化炭素削減

地球温暖化の原因の一つは、よく知られているように温室効果ガスである大気中の二酸化炭素の増加です。大量発生すると人間にとってはとても迷惑な存在にもなるサルパですが、環境問題において人類を悩ますこの大気中の二酸化炭素量の削減問題に、サルパが重要な役割を果たす可能性があるということがわかってきました。

サルパの食事と排泄がカギ

サルパの主なエサは植物性プランクトンです。この海中の植物プランクトンは、光合成を行うために二酸化炭素を取り込んで成長します。そしてこの二酸化炭素中の炭素を体組織に含んだ植物プランクトンをサルパが食べ、糞として海中に排出するわけですが、その糞の中には、もともと大気中の二酸化炭素に含まれていた炭素が含まれています。

炭素を大気中へと帰さない

サルパの糞は粒状で密度が高いため、実に一日1000mの速さで海中深く沈んでいきます。こうして海底へ糞として沈んだ炭素は大気中へ帰ることがなくなり、地球上の炭素の循環からは外れるので、結果的に大気中の二酸化炭素の増加を防ぐことになります。温暖化で大量発生することがあるサルパが、同時に温暖化を防ぐ可能性も秘めているのです。

サルパは個人や水族館で飼育できるの?

個人飼育はほぼ不可能

インテリアや趣味としてだけではなく心の癒しとして、クラゲの水槽飼育が密かな人気を集めたことがありました。しかしサルパについては、飼育に関するノウハウは確立されていませんし、群体になると数mもの大きさになるサルパ用の設備を準備することも個人ではなかなか困難なため、現状ではサルパの個人飼育は難しいと言わざるを得ません。

水族館でも展示はまれ

サルパそのものの水族館での展示はないわけではありませんが、漁業関係者から偶然網にかかったサルパが入手できた時など、期間限定の展示になることがほとんどです。例えば神奈川県の新江ノ島水族館では、2017年にオオサルパの初展示がありましたが、「短期の展示になる可能性があります」という条件付きの展示でした。

サルパを利用するタルマワシとは?

サルパを食べてその中で生活

甲殻類の一種で海中のエイリアンとも言われるタルマワシは、エサとしてサルパの内臓を食べ、残ったサルパの透明な外殻の中に潜り込んでその中を自分のすみかとしてしまいます。そしてその中で卵を産み、その中で子育てもやってしまうのです。タルマワシという名前は、この樽状のすみかに潜り込んで海中をふわふわ漂う様子からつけられました。

サルパは地球の神秘の一つ

釣りをする人や漁業関係者にとってはちょっと厄介な存在で、その奇妙な見た目や不思議な生態にどうしても目が行ってしまいますが、実は地球温暖化対策にも貢献できるという壮大な可能性を秘めた存在であるサルパ。

普段はなかなか目にする機会のない生き物ですが、共にこの地球に生きる仲間としてその存在はもっと知られてもよいでしょう。なんといってもサルパは、クラゲよりも進化の過程の上ではわれわれ人間に近い存在なのですから。