サルパの奇妙な生殖行動はまだ続きます。卵を抱えたメスのサルパの体内になんと精巣が形成され、今度はオスとしてメス役のサルパと有性生殖を行うのです。こうしてオスに性転換した後も、体内の卵は成長を続け、やがて一匹の小さなサルパとなって海中へと旅立ちます。そしてこのサルパが再びこの不思議な生殖サイクルを行っていくのです。
サルパの泳ぎはジェット推進!?
動物界で効率ナンバーワンのジェット推進システム
サルパは餌となる植物プランクトンを、体の前端にある入水孔と呼ばれる口から海水と一緒に吸い込んで摂取します。その時に吸い込んだ海水を今度は体の後端にある出水孔からジェット噴射してすることで海中を移動するのですが、これは地球上でジェット推進を移動に利用する動物のなかでも、最も効率のよいシステムの一つとされているのです。
サルパは食用になるの?食べるとどんな味?
食用とは認知されていない
食用であるホヤの仲間のサルパですが、そもそも人間の食用とは認知されていませんし、海洋学の専門家で食べたことのある人によれば、サルパ自体は生臭くて特に味もなく、おいしいものではないということです。ただ、同じ海の生き物である大型の回遊魚や貝類、ウミガメ、そして一部の鳥類がサルパをエサとして捕食していることがわかっています。
サルパの大量発生
漁業に大きな被害をもたらすサルパ
大量発生、漁業被害というとエチゼンクラゲが有名ですが、サルパも同様の被害をもたらすことがあります。近年では2015年に日本海側の広い範囲で大量発生して、カニや甘エビ漁で、網の破損や、重さで網が引き上げられなくなるといった被害が出ました。この時、福井県の越前ガニ漁に被害を与えたサルパの総数は実に一兆匹ともいわれています。
大量発生の原因は地球温暖化
近年の地球温暖化の影響で海水温が高い状態が続くと、サルパのエサである植物プランクトンの数が増加します。すると、その豊富なエサを食べてサルパもどんどん数を増やしていくのです。もともとサルパが無性生殖でも数を増やしていく繁殖力の強い生き物なので、増殖するうえでの好条件がそろってしまうと爆発的に増えてしまうのです。