「百々目鬼」は手癖の悪い妖怪!その元ネタや類似の妖怪もご紹介!

盗みを重ねるごとに目が増えていく理由や、女スリ師が妖怪になってしまった理由など、当時のお金である銅銭と鳥の目の関係や、お金と窃盗の関係などを含めて、この浮世絵に隠された謎を解き明かします。

その昔銅銭を「鳥目」と呼んだ

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江戸時代に使われていた銅銭には、5円玉の様に中心に穴が開いています。この形が鳥の目を連想させることから、当時の人たちは銅銭を、「鳥目(ちょうもく)」とも呼んでいました。現在は、「お鳥目」の形で用いられることが多いです。

お金を盗むと鳥(銭)の精が取りつく

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盗んだ銅銭の精(鳥目の精)が、盗癖のある女性の腕に取りついて鳥の目となって現れました。祟りによって銅銭が腕に張り付き、鳥の目に変化したものなので、盗みを重ねるごとに目が増えていくようになっています。

盗みは「足がつく」という洒落

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お金は足が生えているように行き来するので、お金を足に例えて「お足」とも呼びます。現在でも「足がでる」など、お金を足に例えた言葉が残っています。犯罪が露見することを「足が付く」とも言います。「足跡から犯人にたどり着く」が語源となって「足が付く」という言葉ができたと言われています。

「足跡の様に、お金が腕に張り付いてしまったスリ師は、盗みの証拠が目立ってしまいスリを続けられなくなった」このような洒落を含んだ妖怪だと考えられます。江戸時代に窃盗で捕まると、死刑もしくは「入れ墨を入れて追放する」という刑罰がありました。人間に捕まらなかった女スリ師は、銅銭の精(鳥目の精)によって罰せられたのです。

百々目鬼は日本古来の妖怪ではない

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1779年に描かれた百々目鬼ですが、出典となるような同じ時代の書物は見つかっていません。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に描かれた『女郎蜘蛛』について興味のある方は、こちらもご覧ください。

百々目鬼は鳥山石燕のオリジナル妖怪

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「今昔画図続百鬼」に描かれている妖怪は、広く知られている妖怪や中国の妖怪など、ほとんどの妖怪は出典となる書物が存在しています。しかし、百々目鬼は出典となる書物が明確になっていないため、鳥山石燕が作り出した創作妖怪だと考えられています。

説明文中の「函関外史」も鳥山石燕の創作!?

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「今昔画図続百鬼」には、『函関外史(かんかんがいし)によると』という説明が書かれていますが、この「函関外史」という書物は現在も確認されていません。あえて文の中に「奇書」という言葉を入れている点も含めると、出典となる書物の「函関外史」も創作だった可能性があります。

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