ショーペン・ハウエルの寓話を日本語訳されたものを簡潔にすると、
「極寒の日、ヤマアラシの群れが暖を求めて集まったが互いのトゲが刺さるせいで離れることを余儀なくされた。しかしその寒さに耐えられず、また同じようなことが起きた。」
「結局その群れは繰り返し寄り添っては離れることでお互いに多少の距離感を持つことが最適だと気づきます。互いに相手に踏み込み過ぎることで傷ついたり居心地が悪くなることで関係性は悪くなるが、だからといって距離を起きすぎると疎遠になってしまったり関係を保てない。」
「人間もヤマアラシと同様に最適な距離を見つけることで暖を取る必要性が満たされ、トゲで刺されることもなくなる。しかし暖かみを持つ者は人間関係の輪の外に居ることを好むであろう。そうすればお互いにトゲで傷つけ合うこともないだろう」
といった内容になります。
ハリネズミのジレンマの元ネタ②新世紀エヴァンゲリオン第4話
本来ならばヤマアラシとつけられていたこの言葉ですが、これがハリネズミとして日本に広まったのはアニメ、エヴァンゲリオンの第4話タイトルに「Hedgehog’s Dilemma(ヘッジホッグジレンマ)」と付けられたためです。
ここでなぜ動物名が書き換えられたかというと、本作主人公は内向的で少し臆病な一面があり、攻撃性が高く積極的なヤマアラシよりもハリネズミの方がキャラの性格に合っていたからと言われています。
この第4話では”近づくことで感じてしまう痛み、近づかなければわからない温かさ”をテーマに作られている話なので、まさに元ネタであるヤマアラシのジレンマの内容と一致していると言えます。そしてキャラの性格に合わせて造語してくるのも制作側の粋な計らいですね。
ハリネズミのジレンマのよくある実例
恋愛関係においてよく見られるこのジレンマ。いくつかの実例をあげますが、意外と身近に感じてしまう心境であったり、もしかすると自分も同じような心理体験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
実例①振られるのが怖くて告白できない
これはわかりやすい例えであり、経験者も多いと思います。まずは自身の想いを相手に伝えないことには恋愛関係は始まらないのに、振られてしまうことを恐れて気持ちを伝えることができない。これまでの関係性を崩してしまうことが怖いという状態です。
好きだからこそ近づきたい、けれど近づけない。恋愛として進展させるには関係性を変えなくてはいけないとわかっていても好きだからこそそれができない。これこそ”ハリネズミのジレンマ”そのものです。
実例②本当の自分を見せられない
いざ恋愛関係に発展しても、好きな相手にはいい人と思われたい、嫌われたくないという思いから本当の素の自分を見せることがなかなかできないという人は多いです。好きだからこそ近づきたい。本当の自分を好きになってほしいのに、本当の自分を見せることで嫌われてしまうのが怖い、という気持ちもこのジレンマのひとつです。