マリアナ海溝とは?
マリアナ海溝という言葉を耳にした方は多くいらっしゃるでしょう。近年の深海ブームを受けて熱い視線が注がれている不思議とロマンあふれるこの地形について詳しくご紹介していきます。
マリアナ海溝は世界で一番深い海溝!エベレストが入ってしまう?!
その名の通り、北西太平洋に浮かぶマリアナ諸島付近に存在しているこの海溝。一番の特徴な何といってもその深さです。海溝とは海底に存在する谷のようなもので、その谷の深さが世界一深いとされているのです。
マリアナ海溝の中でも最深とされているチャレンジャー海淵の深さは10911m。世界一高い山・エベレストの標高が約8800mですから、その山がすっぽりと入ってしまうほどの深さなのです。いかに深いか想像していただけたでしょうか。
マリアナ海溝ができた理由とは?
そもそも海溝とは海にある谷とご説明しましたが、どうやってそういったこんなにも深さを持つ地形が出来上がったと皆さんは想像しますか?こちらでは簡単にどうやって海溝が誕生したのかをお伝えします。
マリアナ海溝はどうやってできている?
海溝とはプレートとプレートのつぎめのような箇所とも言えます。図の様に2つの巨大なプレートが重なり合い、片方のプレートがもう片方を地球内部へと押し込んでいることでこういった地形が誕生します。
マリアナ海溝は太平洋プレートとフィリピン海プレートが重なり合っている地点で、フィリピン海プレートが太平洋プレートを下へと押し込んでできあがりました。
マリアナ海溝が深い理由とは?
プレートとプレートの重なりによって誕生する海溝の中でなぜ今回ご紹介する海溝は11000mにもなる海溝を形成しているのでしょうか?新しい研究結果から様々なことがわかってきました。
マリアナ海溝はどうしてこんなに深いのか?
地球物理学者ロバート・スターン氏は北大西洋の海底は地球最古といってもいいほど昔(1億8000万年前!)に形成されたことが理由の一つとしています。
1億8000万年もの昔に地底から溶岩が吹き出され、マグマが海底を冷やされながら流れていくことで密度の高いプレートが形成され、ゆっくりゆっくりと太平洋プレートがフィリピン海プレートの下を潜るようにして地球深層へ向かって沈み込んでいったことで深い海溝が出来上がりました。
なぜプレートが動くのか?プレートテクトニクス説を考える
プレートがプレートの下に潜り込んでいって海溝ができたということはご理解いただけたと思いますが、なぜそもそもそも地球を覆うほどのとんでもない大きさのプレートが動くのでしょうか?私たちが暮らしている地面はプレートの上に存在し、今なお感じることができないほどの速度ではありながら確実に動いているのです。
プレートテクトニクスとは
プレートテクトニクス説と聞けば理科の授業で習ったので覚えている方も多いでしょう。
少し専門的な話をしますと、地球のど真ん中には金属から成る核が存在し、そこから外へ向かって外核、下部マントル、上部マントル、地殻と構成されていると考えられています。この要素のうち、地殻と上部マントルを合わせたものをリソスフェアと呼び、これによって形成されているのがプレートたちとなります。
地球には実に14~5枚の大きなプレートと40枚程度の小さなプレートが存在していると考えられています。これらのプレートは海の中にある太洋プレートと、陸を形作っている大陸プレートの2種類が存在しています。プレートが様々に重なり合い、沈み込むこと(沈み込み型)で海溝を形成し、ぶつかり合って隆起すること(衝突型)でヒマラヤのような山脈を作り上げてきました。
地球が陸も海のどちらにせよ、凹凸をもつ実に様々な地形をしているのはこのプレートたちの動きによってなせる業なのです。
そしてこのプレートたちは固有の方向にマントルの流れによって今なお動いているのです。地球がはるか昔に誕生し、すっかり落ち着いた今は年に数センチずつの実にわずかな動きになりますが今なお動き続けており、こうしている今ですら地形は変わっているともいえるでしょう。
こういった考えをプレートテクトニクスといいます。こうしてプレートテクトニクス説に基づいて太平洋プレートはフィリピン海プレートの下へと潜り込んでいったのです。そして11000mもの深い海溝を作り上げました。
ハワイは日本に近づいている
私たちが暮らす日本は海に囲まれているだけではなく、その下には4枚の大きなプレートが存在しています。小さな島国ながら4枚ものプレートがあるのです。そしてこれらはマントルの動きによって今もなお動いています。
国土地理院にある設備、超長基線電波干渉計によって観測されたデータによると太平洋プレートは私たちの住む日本のある方角へ向かって少しずつ近づいているというのです。そして、その太平洋プレートの上にはハワイ諸島があります。
その動くスピードは1年に6~8㎝。もしこのままのスピードでプレートが動いたとしたならば、約8000万年後には日本とハワイはぶつかるというのです。日本の隣にハワイがやってくるなんてとんどもない話ですね。
厳密にはハワイはこのまま進むと日本海溝の中に沈み込んでいってしまうのですが、8000万年後には今の地形は存在していないと想像するといかにプレートが現在進行形で動いているのか実感しやすいでしょう。
プレートの潜り込み方には「チリ型」と「マリアナ型」がある
マリアナ海溝は海洋プレート同士がマントルの流れに導かれながら衝突し、重なり合い、一方が潜り込んでいきました。この2つのプレートの動きによって10000mを超える深い海溝が生まれたのはこれまでのご説明の通りです。
海に存在している太洋プレートの重なりに関して言及すると、そのプレートの重なり方で「チリ型」と「マリアナ型」に分類されています。この重なり方が地震に関係しているとこれまで考えられていました。
チリ型
片方のプレートがもう片方のプレートに対して緩やかに潜り込んでいくものをチリ型と呼んでいます(画像上)。比較的歴史の浅い・若いプレート間で形成されることが多く、潜り込む角度が浅いため、下にもぐっているプレートが上のプレートを押し上げやすい構造にあります。そのために地震が起こると考えられています。
このチリ型のプレートは長い歴史の中で何度も地震を起こしながら潜り込む角度がどんどん深くなり、最終的には後述するマリアナ型に移行すると考えられています。
マリアナ型
今回のマリアナ海溝からつけられたマリアナ型は先述のチリ型に対して深い角度でプレートが潜り込んでいくことが特徴です(画像下)。画像の様に真下へ向かって潜り込んでいくため、下にあるプレートが上のプレートを押し上げることは早々なく、そのためマリアナ型のプレートたちが地震を引き起こす可能背は低いとこれまでは考えられてきました。
マリアナ海溝と地震の関係とは?
マリアナ型のまさに代表であるマリアナ海溝は地震を起こすプレートではないと考えられていたと先ほどご紹介しました。しかし近年の目覚ましい研究によりそうではない可能性も見えてきました。
マリアナ海溝は地震と関係ないとされてきた
前述したように、マリアナ海溝は深く直角といえるほどの角度でプレートがマントルへ向かって潜り込んでおり、プレートが上のプレートを押し上げることは困難であるとされていました。そのため長い間、地震をおこすのはチリ型のようなゆるやかな角度でプレートに潜り込んでいる海溝であるとされていました。
マリアナ海溝の研究が進むにつれて変わる意見
しかしごく最近発生した2004年のスマトラ島沖地震並びに2011年の東北地方太平洋沖地震の発生源となったプレートは、チリ型ではなくなんとマリアナ型の海溝だったのです。そのため、マリアナ海溝でも地震が起こる可能性は否定できなくなりました。
万が一、マリアナ海溝で地震が発生した場合に想定されるマグニチュードは8.5。東日本大震災はマグニチュード8.8から9.0とされていますのでそれと同レベルの地震となります。
東日本大震災が「想定外」の地震と呼ばれたわけ
東日本大震災の発生源となったプレートは北アメリカプレートと太平洋プレートによって形成されている日本海溝です。日本海溝の最深部は8020m。マリアナ海溝ほどではありませんがエベレストは十分入ってしまう深さのまさに「マリアナ型」の海溝だったわけです。
地震が起こることはないとされていたそのマリアナ型の日本海溝が地震を起こしたことで「想定外」の地震と呼ばれることになりました。そしてその地震によって引き起こされた被害の大きさはみなさんご存知の通りでしょう。私たちはそんなプレートの上で暮らしているのです。
マリアナ海溝の底の世界とは?
プレートの動きによって10000mをゆうに超える深い地形となったマリアナ海溝。地震に関して言えばこれからも注視していく不安な存在かもしれませんが、雄大な地球の歴史の中で生まれた「地球最深」の世界にロマンを感じる方も多くいらっしゃるでしょう。ここではそんなマリアナ海溝に広がる底の世界を少しお伝えします。
マリアナ海溝の底は真っ暗!
マリアナ海溝の底にはどんな世界が広がっているのでしょうか。もし行くことができたとしてもそこはまさに漆黒の暗闇の世界となるでしょう。太陽から降り注ぐ光が届くのは深海100m付近まで。まったく光の届かない世界が私たちが暮らす地球そのものに存在しているのです。一寸先は闇の世界は私たちの想像をはるかに超える世界といえるでしょう。まさにもう一つの宇宙です。
マリアナ海溝の底は水圧がものすごい!
マリアナ海溝の最深部でかかる水圧は計算上約15.750psi、1100気圧となります。地上で暮らす私たちにかかる圧力の実に1000倍です。万が一、何も装備のない生身の人間がそこに行けばたちまち押しつぶされさらには液状化してしまうほどの圧力です。さらには水温は凍るか凍らないかの0℃。たった1気圧の環境で暮らしている私たち人がこの深海で生存することは不可能です。
マリアナ海溝には山や崖、峠などがある
プレートによって形成された海の谷には大陸プレートによって形成された地上の谷や山脈の様に凹凸が存在していると想像されています。マリアナ海溝そのものの形は大きな三日月形をしており、全長約2,550km、幅約69kmと広範囲です。ここに私たちが日頃見るような山脈や崖、峠なども存在しているのです。
マリアナ海溝の底にも生物はいる!
一瞬の光さえ届かず、水温は0℃で私たち人間が生身で行けば液状化してしまうような「死の世界」を思わせるマリアナ海溝ですが、なんとそこにもひそやかに生物は息づいていることが発見されています。そんな生物たちについては次の見出しでご紹介していきましょう。
水深6000mから下は「冥王の領域」
ギリシャ神話では地球で命を終えたすべての死者たちが冥界にたどり着き、そこで冥王であるハデス王によって生前の行いをもとに天国へ行くのか地獄へ行くのか裁判されると語り継がれています。
命を持つものは決してだどりつけない場所である冥界と深海域に昔の人々はつながりを感じたのでしょう。「ハデス」の名前から、水深6000mから下を「ヘイダルゾーン」と呼ぶようになりました。ちなみに日本語では「超深海帯」と訳されます。超深海はまさに人が生きて踏み込むことのできない「冥王の領域」だったのです。
マリアナ海溝に棲む生き物①解明されている奇妙な生物たち
数々の探検や調査のたびに新たな深海生物たちが発見されてきました。私たちの暮らす世界とは全く違う環境ですから見た目や特徴も実に興味深く奇妙な生物たちを簡単にご紹介しましょう。
マリアナ海溝に棲む生物①デメニギス
水深400~800m付近に生息するデメニギスの最大の特徴は頭部とそこにある目です。液体で満たされた透明な頭部を持ち、緑色をした目はなんと頭の上についています。衝撃的な姿をしていますがとても理にかなっている深海魚なのです。
上からのわずかな光を集めるために真上を向き、上から落ちてくるエサを見つけやすい構造をとっています。日本近海にも生息しています。
デメニギスに関して詳しく知りたい方はこちらもどうぞ
マリアナ海溝に棲む生物②ミツクリザメ
水深1000m以下で発見されることが多いこちらの生物は吻(フン)と呼ばれる尖った頭部先端を持つことが大きな特徴で古代サメの姿を色濃く残していることから生きる化石と呼ばれています。
マリアナ海溝に棲む生物③クモヒトデ
クモヒトデは総称で約1500種も存在しているとされています。同じクモヒトデながら種によって様々な特徴を持っており、中には深海6000m以上の深い世界で暮らすものも発見されています。タコやクモのようにその腕を動かして行動します。
マリアナ海溝に棲む生物④ワニトカゲギス
こちらもクモヒトデ同様、いくつかの生物の総称がワニトカゲギスです。いずれも受け口の様に下あごが上あごよりも飛び出ており、鋭い歯を持ちます。中には発光器を持つ種も存在しています。推進200~1000m付近で発見されることが多い種となります。
マリアナ海溝に棲む生物⑤アンコウ
こちらはほとんどの方がご存知の深海魚でしょう。アンコウ鍋で用いられるアンコウは種によりますが浅いところでは推進200mほど、深いところにすむ種では推進1000m付近で発見されています。有名なチョウチンアンコウはさらに深く推進2500m付近でも目撃されます。ぬるぬるとした茶色く平べったい体をしています。
チョウチンアンコウについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
マリアナ海溝に棲む生物⑥ダンボオクトパス
深海魚が好きな人たちの中では有名な「かわいい」深海魚の1種でしょう。まるで耳の様に見えるヒレを映画「ダンボ」のダンボの様にひらひらとしながら深海を揺蕩うタコの仲間です。
水深1000~4800mの深海に生息しており、一部の種は7000mという深い世界で暮らしています。現在発見されている中では最も深い場所で生きていけるタコです。
マリアナ海溝に棲む生物⑦クラゲダコ
まさにクラゲとタコが一つになったような姿をしているクラゲダコはタコの一種です。透明な体に細長い望遠鏡のような眼を持っています。500~2000mの水深に生息しており日本近海でも目撃例があります。
マリアナ海溝に棲む生物⑧ベンソコドンクラゲ
水深800m以上の深海で暮らすこちらの生物は直径2~3㎝と小さな赤茶色の体を持ち、UFOのようなお椀型の形をしています。普通のクラゲの様に透明ではなく赤茶色をしていることで他の生物から見つかりにくく捕食を免れていると考えられています。
マリアナ海溝に棲む生物⑨ムネエソ
平べったい体と細長い尻尾のような尾びれが特徴となります。水深300~500mで暮らしていながら、2000mの深海でも目撃例があります。多くの深海魚同様、発光期間を持ちますが獲物を引き寄せるために発行するのではなく、カモフラージュの目的で発光すると考えられています。
マリアナ海溝に棲む生物⑩オセダックス
最後は水深4000mに暮らすオセダックスです。ミミズのような見た目をしており、岩や骨などに張り付いてゆらゆらと揺れる姿が特徴的です。ラテン語で「骨を貪り食うもの」という意味の言葉が由来になっている通り、死んで深海に沈んできたクジラの骨などを餌にしています。酸を分泌し、骨を溶かして吸収しています。
マリアナ海溝に棲む生き物②新種?まだ解明されていない生き物たち
続いてはマリアナ海溝で発見されたもののまだまだ謎に満ちていてその生態が解明されていない生き物たちをご紹介します。新種の可能性も高く名前がついていないものも数多く存在しています。
マリアナ海溝深部の生物①ソコダラ科の深海魚(5040m)
タラの仲間に分類されるソコダラ科の深海魚が水深5040mで発見されました。水圧に耐えうるようなゼリー状の目玉が見て取れます。この魚の頭部の下あたり、画像の左下に確認できるものが尾ひれになります。通常の魚のような形とは違い、ウナギのようにひらひらと細長くなった尾ひれが特徴的です。
マリアナ海溝深部の生物②キングクリップ(4998m)
南半球の方では食用ともされているアシロ科の魚であるキングクリップの仲間と考えられる種は深海4998mで発見されました。ゼラチン質を想像させるぼってり、ずんぐりした体は深海の水圧でも耐えうるためでしょう。
マリアナ海溝深部の生物③エビ(6010m)
続いて発見された場所は深海6010m。画像の通りエビの中だと思われます。通常、生きている状態で赤い色をしているエビは珍しいでしょう。エビ以外の映像との比較から考えてもかなり大きなサイズであることが想像されます。
マリアナ海溝深部の生物④キングクリップ(5050m)
今まさに餌を捕食している瞬間をとらえられているこちらの魚もキングクリップの仲間と考えられています。大きなガマグチのような口を開けて獲物に食らいついています。食べるものが少ない深海で餌を失うことなく確実にとらえている様子がよくわかります。
マリアナ海溝深部の生物⑤ソコダラ、キングクリップ、ゲンゲ科の魚(5040m)
先ほどのキングクリップが目撃されたのと同じ5040mの地点では別の深海魚も目撃されました。画像左側はキングクリップの仲間。右はゲンゲの仲間と考えられます。ゲンゲはスズキの仲間でウナギをさらに太くしたような細長い体をしています。
マリアナ海溝深部の生物⑥端脚類エビ(6141m)
ダイオウグソクムシを連想しそうな見た目のこちらは深海6141mで発見されたヨコエビの仲間と考えられています。体が白いのは光が届かない世界に暮らすため、色をもたないからでしょう。通常の世界で見かけるヨコエビよりはるかに大きな体をしています。たくさんある足をクシのようにうごめかして泳いでいます。
マリアナ海溝深部の生物⑦ソコダラ、エビ、クサウオ科(7012m)
続いては深海7012m地点で発見された3種です。左のひらひらとした尾を持つソコダラ科の仲間、餌に群がる大量のヨコエビの仲間、そして画像上わかりにくいですがクサウオ科の仲間が見られました。先ほどの赤い色をしたエビの仲間も見えますね。
マリアナ海溝深部の生物⑧新種のクサウオ科(7485m)
最後は深海7485m地点で発見されたクサウオの仲間です。マリアナスネイルフィッシュの仲間ではないかといわれていますがこちらは新種の可能性が特に高いとされています。透明な体で内臓が透けているのが確認できます。平べったい体にオタマジャクシのようなひらひらとした尾ひれを動かして泳いでいるのが見て取れます。
マリアナ海溝に棲む生き物③想像を超える新種のクラゲを発見!
アメリカ海洋太洋庁(NOAA)による海洋調査において、マリアナ海溝に存在するエニグマ海山と呼ばれる地点で新種のクラゲが発見されました。まるでCGのような空想上の生き物にすら思えるその美しく不思議な姿をぜひこちらの動画でご覧ください。
マリアナ海溝の新種クラゲは姿はまるで地球外生命体?
まるで電球のような傘と細長い美しい触手が見て取れます。UFOのようも見えますね。本当にこんな生物が存在するのだろうかと思ってしまうような美しい姿をしています。
マリアナ海溝の深海3700mの場所で発見!
発見されたマリアナ海溝のエニグマ海山は水深3700m。日本一高い山である富士山が十分収まる深さです。2016年4月の出来事でした。発光器官を有しており深海の漆黒の世界でまるでランプようにゆらゆらと揺蕩いながら光っている姿は神秘的でしょう。
マリアナ海溝で発見の新種のクラゲはヒドロクラゲの一種?
今回発見されたクラゲはその見た目の特徴からヒドロクラゲの仲間ではないかと推察されています。傘の中に見える赤い線は生殖腺で黄色い部分が発光器官、触手は通常のクラゲの様に捕食のために使用されているのではと考えられます。
しかしまだ種の特定には至っておらず、新種だとしても命名すらまだなされていません。
マリアナ海溝に棲む生き物④水深8145mに棲む魚を発見!
先ほどマリアナスネイルフィッシュの新種と考えられる深海魚が発見された深海7485mよりもさらに深い8145mでも何と生き物が発見されました。そうです、「冥王の領域」とまで言われた超深海にも生命が存在していたのです!いったいどのような生き物が発見されたのでしょうか?
マリアナ海溝の深部で発見されたマリアナスネイルフィッシュ
真っ白で透き通る体をゆらゆらとくゆらせながら深海を静かに泳ぐ様はまさに衝撃的です。アバディーン大学と米ハワイ大学の共同調査が行われ、105時間もの長い時間、マリアナ海溝を撮影した中にその姿は収められていました。
マリアナスネイルフィッシュはどんな魚?
スネイルフィッシュはクサウオ科に属する魚です。今回発見された場所がマリアナ海溝であったため、マリアナスネイルフィッシュと呼ばれるようになりました。白く透明な体を持ち、内臓が透けてみます。うろこは持たず、ぬめぬめとした粘液質に覆われており、深海でも獲物や他の生物の死骸を発見できるように発達した嗅覚組織を口の周りに持ちます。
ヨコエビを捕食する姿も今回の調査で観察されたことで肉食であることも判明しました。。吸い込むようにヨコエビを捕食し、丸呑みしながら咀嚼する頑丈な器官が口にあることが見て取れました。
マリアナ海溝最深部では他にも甲殻類や端脚類を発見
映像にはマリアナスネイルフィッシュの他にも餌に群がるヨコエビの仲間と思しき甲殻類や端脚類なども同時に発見されました。8000mを超える深海にもこれだけの生物が生態系を築き上げ、そこに世界が存在していることは多くの人を驚かせると同時に深海の奥深さを改めて伝えてくれたのでした。
マリアナ海溝に棲む生き物⑤更に深い水深1万mにも生物が!
前述のマリアナフィッシュを発見した調査により、8000mを超えた地点で生存している生物がいたことでも十分に驚きでしたが、なんと同調査によってそれよりもさらに深い、マリアナ海溝最深部に近い地点・10000mでも生物が発見されました。
【マリアナ海溝】世界で2番目に深い場所にはエビが棲む!
マリアナ海溝の最深部に近いシレーナ・ディープと呼ばれる深度10545m地点で発見された生物はエビの仲間でした。私たちが見かけるエビよりも後ろの部分の脚は長く、目や頭は退化したような見た目をしています。
【マリアナ海溝】深海の生物は群れや他の種たちと暮らしている?
この調査でもう一つ大きな衝撃だったのが超深海の世界に生きる生き物たちは群れを形成し、ほかの種と共存しながら暮らしている姿が収められたことです。これまで超深海で暮らす生き物たちは単独で孤独な暗闇の中を泳ぎ暮らしていると想像されていたのです。
群れの形成を確認した発見者のジェミーソン博士は、「本当に驚きです」と興奮を隠せませんでした。
水深1万mに魚は棲めない?
ところで、深海10000mの世界でエビの仲間は発見されましたが魚は果たして見つかるのだろうかと気になる方も多いでしょう。現在のところ、深海8400mより深い場所に魚はいないと考えられています。
世界で一番い場所に棲む魚はバッソギガス・プロフンディッシム
現在発見されている中でもっとも深い地点で発見された深海魚はバッソギガス・プロフンディッシムです。1970年大西洋・プエルトリコ海溝で捕獲されたソコボウズ属の仲間です。発見された深度は8300mで、やはり仮説として立てられている限界値・8400mに一歩届かない地点でした。
魚は8400m以上の深さでは水圧に対応できない?
そもそも、魚はなぜ自分の体液よりも濃い塩分濃度の海で暮らすことができるのでしょうか?トリメチルアミンオキシド(TMAO)というタンパク質は魚特有のタンパク質で、そもそもは海水中の塩分と体の水分のバランスを保ち、浸透圧を一定にするために働いていると考えられています。
このタンパク質の働きによって魚が海水でも生きていくことができるのです。魚特有のあの匂いはこのTMAOの匂いです。深海魚はおそらく、このTMAOを通常の水域の魚より過剰に生産することができ、そのおかげで激しい水圧から細胞やその中に存在するDNAの保護が可能になっているのだとヤンシー博士は言います。
ではこのTMAOをさらに過剰に生産することができる魚がいればもっと深い地点でも生存できると多くの人が考えるでしょう。しかしながらこのTMAOを作れば作るほど深く潜ることができるのかといえばどうやらそうではないようです。
TMAOがある一定量を超えると魚の体にとっては害をもたらす物質となってしまうと仮定されているからです。自身の体を守る物質がある一定量超えるとその命を脅かす存在に変わってしまうのがこのTMAOなのです。