「象の足」を見たら即死?チェルノブイリ原発事故・負の産物の現在に迫る

事故当時、4号炉は定期点検のため運転停止中であり、動作テストを行っていました。即ち、外部からの電源遮断を想定し、非常用発電機が起動するまでの一定時間、原子炉タービンの動力のみで各システムへの電力を十分供給できるかを確認するものでした。

ところが、予期せぬ事態の発生に対する現場監督者の不適切な判断のため、原子炉が制御不能に陥り、メルトダウンから爆発したとされています。この時の放射線量は、広島原爆の時の約400倍と言われてます。

事故発生原因と被害甚大化の要因

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それでは、事故発生の根本原因や何故人的被害が拡大したのかを少し詳しく見ていきます。

事故発生原因と考えられるもの

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ソ連政府は当初、「事故はオペレ-タ-の操作ミスが原因」と発表しましたが、その後の調査では、多くの複合的な要素が原因であることが判明しました。列挙すると、1)制御棒など根本的設計の欠陥。2)オペレ-タ-への不十分な教育。3)不慣れな運転下で事態予測できなかったこと。

4)もともと低出力下では不安定なのに運転を強行した。5)仕様書にある耐熱性の材料が手に入らなかったため、他の可燃性材料を使用した工事を行ったこと。などが挙げられています。

自己保身と虚偽報告

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原発の所長は、事故の1時間後に現場に到着し、線量計の値から事の重大さを認識していたものの、上司への事故第一報では自己保身から「事故が発生したが原子炉は無事」と虚偽の報告をしてしまいました。

更に、ソ連の最高議決会議の場でも、原発担当大臣が「大丈夫です」と発言していたため、対策が遅れることになりました。

避難指示の遅れ

ソ連当局が、10km圏内地域に居住する人々の避難を開始したのは事故発生から実に丸二日近くが経過していました。その間、住民は事態を正確に把握することが出来ず、結果として対象地域の住民約47000人は、放射能汚染を知らされぬまま通常の生活を送ることとなりました。

そして30km圏内の合計約14万人の住民が避難を開始したのは、それから1週間後のことでした。

適切な設備と知識の欠如

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事故直後に応急措置に当たった現場作業者や消防士などは、放射性物質の煙や残骸の恐ろしさを教えられておらず、保護具もなしに長時間高い放射線量にさらされながら作業を行い、命を落とすことになりました。

又、事故後の後始末作業は、遠隔操作のロボットや重機を使用すべきだったが、高レベル放射線により電子回路が破壊され頓挫してしまいます。そこで代わりに大量の人間が投入されますが、放射線防護服もなく、不十分な準備での作業のもと、多くの犠牲者を出すことになりました。

日本での受け止め方

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原子力発電に対する国民の不安が急増したが、政府は、「日本の原子炉は米国型で、事故を起こした原子炉とは違う構造のため同様の事故は起きない」という説明をして火消に努めました。

しかし、実はスリーマイル島原発事故で米国型原発も同様の事故を起こしていることや、日本で採用しているGE製原発の格納容器に欠点があるとの指摘があることは周知されず、こののち福島第一原発事故にも影響を与えます。

象の足への対処はどのように行われたのか?

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それではここでまた「像の足」の話に戻します。

膨大な放射線量を発するため、人間作業者にしろロボット等機械作業にしろ近づいての作業には限界がありました。又、応急処置として、石棺建造を手掛けるも、老朽化対策の課題を残しました。

象の足をコンクリートの石棺で包囲

出典:PhotoAC

事故直後の1986年6月には、放射線を密封するため、像の足を含む4号炉全体を巨大なコンクリ-ト建造物で覆う工事が始まり、11月に完成した。石棺建設には多数の作業者が関わったが、全員およそ1年後に亡くなりました。

又、あくまでもロボットなど遠隔操作を多用した応急措置的建設だったことと、耐用年数の30年も経過していることから、現在老朽化対策の課題が顕在化しています。

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