「象の足」を見たら即死?チェルノブイリ原発事故・負の産物の現在に迫る

又、写真画像も撮影当初は鮮明であっても、放射能によるフィルム劣化で、時々刻々、不鮮明になっていくこともわかっています。

事故当時は作業員60万人で象の足の処理を試みた

出典:PhotoAC

事故後に復旧作業に従事した労働者は、軍隊や予備役、建設労働者など含め、事故から2年間に30Km内の退避区域内での作業者という定義で、60万人前後とのソ連邦の推定値があります。

2016年に象の足を覆う巨大シェルター移設計画が始まった

出典:PhotoAC

2016年11月、原子炉を覆う石棺を含む原発施設を丸ごと巨大シェルターで覆う工事に取り掛かりました。シェルターは幅約280メートル、長さ約160メートル、高さは約110メートルで、総重量は3万6000トンにも及びます。

建設総費用は、約1765億円と言われ、移動可能な地上建造物としては史上最大とみられます。建造に10年近い歳月を要したこのシェルターは、今後およそ100年間にわたり原子炉と石棺を密封、管理することになります。

象の足で作業員(リクビダートル)はどうなった?

出典:PhotoAC

事故直後には、火災の消火や瓦礫除去と、汚染廃棄物の処理等が必要であったが、遠隔操作の重機やロボットなどは放射線で故障してしまうため、当時のソ連政府は膨大な数の人間を現地に投入したと言われてます。

彼らは、消防士や兵士に、鉱夫などで「リクビダートル(後始末をする人の意味)」と呼ばれ、あらゆる事故処理作業を行いました。しかしその間、レントゲン撮影の1,200倍にあたる平均120ミリシーベルトの放射線を被曝し、彼らの細胞を損ない、寿命を縮めてしまいました。

リクビダートルはほぼ全員1年以内に死亡

出典:PhotoAC

リクビダートル達のうち4,000人以上が、放射線が原因のがんで死亡しました。更に70,000人が、被曝による身体障害を負っていると言われてます。特に石棺建設に携わった人たちは、全員が1年以内に死亡しました。

リクビダートルには退役軍人としての地位が与えられた

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リクビダートルは、当時の連邦政府から表彰され、退役軍人としての地位が与えられました。即ち、危険な労働の代償として、住居や高額の年金に無料の医療などが生涯保障されたのです。

生き残ったリクビダートルを追った写真集も

出典:PhotoAC

2018年4月に、ある心動かされた英国の写真家が、ウクライナの都市スラヴィティチを訪れ、現在は老後を過ごしているリクビダ-トルの生き残りたちを写真に収めました。そして、そのポートレートの数々は、「リクビダートルたち」という忘れがたい作品となりました。

見たら死ぬ「象の足」を撮影した人たちの現在

出典:PhotoAC

このように近づいたら非常に危険な「像の足」ですが、それでも、この悲劇を二度と繰り返さないという教訓を後世に伝えねばという使命感から、決死の覚悟でその撮影に挑んだ二人のカメラマンを紹介します。

「見たら即死?」というタイトル表現は、「物の例え」でやや極端かと思いますが、彼らの内一人はすぐ他界し、もう一人も生存するも極度の障害を患っていることをみれば、的を射た表現と思えます。

象の足撮影者①ウラジミール・シュフチェンコ

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「チェルノブイリ・クライシス: 史上最悪の原発事故」というドキュメンタリー映画を撮った監督です。彼は撮影中に「急性放射線障害」で他界しました。又一緒に撮影していた作業スタッフ2名も、同じ障害で亡くなってしまったそうです。

象の足撮影者②セルゲイ・コシュロフ

出典:PhotoAC

彼は、事故後3年経過して撮影を開始しました、一時退避都市スラブチチに住みながら、毎週事故現場に通い続けています。僅か二秒で、規定の被ばく量を超えてしまう原子炉建屋内に入り、写真や動画を撮影し続けています。

しかし今では多くの障害に蝕まれボロボロの体になってしまったとのことです。

「象の足」のあるチェルノブイリの現在

出典:PhotoAC

事故後、「死の街」と呼ばれたチェルノブイリも、30年が経ちましたが、現在は一体どうなっているのでしょうか?2010年12月より、ウクライナ政府は正式に、それまで立ち入り禁止としていた、原子力発電所付近への立ち入りを許可しました。

侵入許可区域でも厳しい規則がある

出典:PhotoAC

チェルノブイリ原発から30Kmほど離れたところに検問所があります。その内側は、立ち入り禁止区域となっていましたが、ウクライナ政府に事前申請しておきパスポートを見せれば通過できるようになっています。

但し、色々と行動制約事項があります。例えば、「建物や植物に触れない」とか「地面に直接カメラなどを置かない」に「地面に直に座らない」などです。これらは、放射性物質が人やカメラ等に付着して圏外に拡散するのを防ぐためのル-ルです。

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