「象の足」を見たら即死?チェルノブイリ原発事故・負の産物の現在に迫る

無人となった現地一帯が、野生動物の宝庫となっていることと相俟って、見学ツアーが催行されています。見学者は、2015年時点で1万7000人であったと言われ、年々その数は増えているそうです。

ツア-の入場料は1日160ドルで、米フォーブス誌が「世界で最もユニークな観光地」にも選んだことも人気の理由です。4号機付近には、事故後20年目に作られた記念碑もあり、よくその前で笑顔の記念撮影がされますが、複雑な気分にさせられます。

2019年現在も健康被害に苦しんでいる人はいる

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この原発事故の被災者は、汚染地域に引き続き居住している人も含め、約700万人とも言われてます。この汚染区域の子供や若年層の中で、甲状腺がんや白血病の発症率が増えていることが懸念されています。

例えば、原発から70Km離れたナロジチ地区の生徒407人の健康調査では、「免疫が弱い」や「時々気を失う」に「心臓が悪い」など全員が何らかの健康被害を受けているとの結果でした。

 

福島原発にも象の足がある可能性がある

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2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震による津波の影響により、福島第一原子力発電所で、メルトダウンなど一連の放射性物質の放出を伴った原子力事故が起きました。

当時、1〜3号機の各原子炉は運転中でしたが、地震で自動停止します。しかし地震による全電源喪失に至り、原子炉内部等への注水不可能から、核燃料の冷却ができず、自らの熱で溶解する事態に至りました。

チェルノブイリム原発事故との比較

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INES評価では、どちらも最悪の「レベル7」と同等レベルの事故と評価され、事故パタ-ンも外部電源喪失とメルトダウンを起こした点で類似しています。

よく「福島原発事故はチェルノブイリより酷い」といった噂も耳にしますがどうなのでしょうか? この問題は、「何を比較するのか」によって答えは様々となりますので注意が必要です。

人の放射線被爆状況では

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原発内被爆で、急性放射線障害になった人は、チェルノブイリが134名に対して、福島はゼロ。又、事故後処理作業従事者では、チェルノブイリで24万人の被ばく線量が平均100ミリシーベルトで、福島は該当者なし。

又、周辺住民では、チェルノブイリでは高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人が10~20ミリシーベルトの被ばく線量と言われている。小児の甲状腺がんで、15名が亡くなっている。一方、福島周辺住民の現在の被ばく線量は、20ミリシーベルト以下である。

大気中への放出放射線量と避難民数

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放射性元素種類が多く比較が難しいが、ザックリ、福島はチェルノブイリの1/10と言われています。チェルノブイリが約15万人で福島は約18万人とほぼ同じと言えます。又、汚染地域の広さも福島はチェルノブイリの1/10と言えます。

放射性物質密閉策や避難民対策の考え方

チェルノブイリでは7か月後には石棺を構築し、放射性物質の漏えいを防止しましたが、福島では、現在でも大気中やあるいは地下水を通じて海中に放射性物質を放出し続けています。

チェルノブイリ周辺国では事故5年後に「チェルノブイリ法」を制定し、厳しい基準で住民保護に努め、原則、避難地域に復帰させない方針をとっています。一方、日本政府は、年間20ミリシーベルト基準で住民帰還を強力に促しています。

福島第一原発2号機に象の足らしきものが見つかった

出典:PhotoAC

2号機の格納容器の内部をカメラで確認する調査が2017年1月30日に行われました。その結果、圧力容器の真下の作業用の床に、黒い堆積物が見つかりました。

この物体は、原子炉事故によって溶け落ちた核燃料が、コンクリートや金属と混ざり合い、冷えて固まった所謂「燃料デブリ」と呼ばれるものと思われました。チェルノブイリ原発で見つかった「像の足」と同じものと思われます。

この象の足に近づくと5分程度で命を落とす

2号機の格納容器内の放射線量は、2012年3月の調査で、毎時73シーベルトを観測しました。これはチェルノブイリ原発4号炉の観測値とほぼ同じレベルで、人間なら5分46秒で死亡する値です。

NEXT 2021年に福島原発の象の足を取り出す計画も?