「象の足」を見たら即死?チェルノブイリ原発事故・負の産物の現在に迫る

東電の工程表によると、「燃料デブリ」取り出し方法を2018年度上半期までに確定し、2021年に取り出しを開始する予定となっていました。ただ、ロボット調査も1年以上遅れており、工程表通りに作業を進めるのは難しいとの見方も出ています。

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自然界への影響は?

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原発事故で約30万人が避難したあとには広大な立入禁止区域が残されました。当初そこでは動植物の生命が奪われ、生き残った生物も汚染の病にむしばまれていると考えられてきました。

しかし最近になり、この見方を覆す逆の研究結果が示されて注目を集めています。一体、チェルノブイリ周辺で何が起きているのでしょうか。

動物の楽園誕生?

この広大な立入禁止区域は、3200平方Kmにも及ぶが、人類生存に壊滅的打撃を被った後の世界がどうなるかを示す生体実験場になっていました。

最新の研究では、植物が再び育ち、動物の生態系が事故以前よりも多様性を増しているという報告がなされたのです。勿論人為的に自然を取り戻す取り組みが行われたわけではありません。人間がいなくなっただけのことです。

放射性ヨウ素の影響

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この疑問に解決を与える鍵の一つは「放射性ヨウ素」の問題です。これは浴びれば将来ガンなどの甲状腺疾患を発症するリスクが高まる放射性物質です。実際、当時の作業員は現在、白内障や白血病にガンなどの症例が多数確認されています。

しかし、この「放射性ヨウ素131」は半減期がとても短いので、その場に長くとどまることがありません。事故から数週間で消えてしまいます。禁止区域の動植物は、これには晒されずに済み発症もしないと考えられるのです。

赤い森の現状

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原発の10km圏内にあった松林は、大量の放射性降下物を浴びて枯死し、赤茶色に見えるため「赤い森」と呼ばれる地域があります。この辺りは、世界で最も汚染された地域の一つといわれています。

この地域の動植物にはどのような影響をもたらしたのでしょうか? 鳥類や昆虫などの無脊椎動物に加え、大型の哺乳類についても、調査の結果、生息数が減少していることが分かっています。更に突然変異や奇形の確率も高いことが分かっています。

正反対の調査結果 違いは?

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放射線による死亡あるいは発症サイクルと生命サイクルの違いで説明できるかもしれません。つまり多くの動物は生後1カ月内に命を落とすし、成体になっても数年の命であることから、放射線に殺される前にもともと死んでしまうということです。

更に、生物群の中で10パーセント程度が何らかの影響を受け死亡するとしても、ほとんどの場合、生息数が減少するには至らないとの仮説も存在します。但し問題は、死んだり寿命が短くならないにしても放射線による何らかの病に侵されている懸念は拭えないということです。

衰えを知らない象の足…今後の原発事故ゼロを願う

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チェルノブイリにしろ福島原発にしろ、そこで誕生した「像の足」の放射能の影響が消滅するには10万年かかると言います。残念ながら今の人類の英知や技術力では「取り返しがつかない」ことを意味します。

チェルノブイリでは、約700万人の健康と生活に悪影響を与えました。広さで言えば、半径100Km範囲に広がっています。更に直接放射線被爆を受けていなくても何世代も後の子供にまで影響が出る怖さがあります。二度とこのような悲惨な事故を起こさないよう、人類として肝に命じるべきです。

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