上尾事件とは?国鉄と乗客の間で起きた大暴動の背景とその後に迫る

当日のことで、車両の手配、乗務員の確保と、懸命に対処にあたりました。1番恐れていたのは偶発的な事故でした。保線の車両が入ってしまったら大事故につながります。駅のシャッターは上がっているか?それら全ての手配を1時間で行ったのです。営団始まって依頼の臨時の終夜運転です。

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どさくさに紛れてしまいましたが、もっと評価されても良かったのではと、ちょっと小耳に挟みました。結局、国鉄線は翌25日の10時過ぎまで運行を再開できず、その後も車両や設備の復旧が済むまで一部列車の運休を余儀なくされたため、輸送を一手に引き受ける形となった私鉄・地下鉄・バスの混乱は続きました。

定員840人の列車に3000人が乗車

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息もできないほど詰め込まれて3時間耐えなければならないのです。定員840人の列車に3000人が乗り込みドアがろくろく閉まらないのに発車させました。それでも電車が発車すると駅には5000人が取り残されていました。乗客にすれば全て自分たちの都合、国鉄の都合です。料金を支払って乗っている以上自分たちは客なのです。

それを全力で押し込む国鉄の職員に腹を立てていました。自分たちが招いた怠慢だとしか思えないのです。しかし、国鉄側としては、赤字続きで、新車両を導入出来ないでいたのです。急行車両を使用していたため、つり革もなく、乗車定員数も少ないのです。高崎線のラッシュ時間帯の間隔はもはやいっぱでした。複線案も出ていました。

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住宅計画の失敗でもあります。国体の跡地に団地を建てたことで、一気に膨らむ住民に対処が遅れていたといいます。つまり、国鉄だけの責任ではなく、都市計画と鉄道整備や道路整備は同時に進行しなければならないことを指摘されて来ました。

貨物列車運転本数が平常の60%まで低下

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上尾事件の影響はいたるところに出ています。日本全国各地で、大幅な遅れが発生していました。貨物列車の運転本数は通常の60%以下になりました。中央快速線は40本の運休を出すなど多大な影響を受けています。ちなみに南武線は30本、京浜東北線は30本、それらを含め首都圏の運休は220本に母を呼びました。

関わった人数は171万人になりました。改札止めが12駅、大阪環状線が60本も運休しています大阪では32,300人に影響が出ました。このような状況は品不足、物価の高騰など、目に見えにくい部分にも被害が及んでいます。国鉄の被害ばかりが前面に出されていました。

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それらの生活に直接影響した被害については記録がありません。予想して探してて見ても、一覧にはなっていないようです。国家企業だったからでしょうか。 貨物の運行が60%減とは、前代未聞です。気になります。

上尾事件のその後

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労働側は、このような大暴動起こした以降もストは続けていました。ただ順法闘争は中止してます。国労動労の争いがなくなるのはまだ遥か先です。昭和60年スト権ストが失敗してからになります。腐敗しきっていた国鉄と言うイメージは未だに私たちの心に残ります。

上尾事件後に順法闘争は中止

 

暴動から先順法は行われませんでした。上層部は指示を出していたのですが、職員は回避していました。会社の日誌には順法を行なったと記載しましたが、実際には回避しています。会議でも、高崎線でやるのは危険だとした意見が上がっていました。

職員でさえ走り出した組合上層部を止めることができなくなっていました。乗客を無視した行いは、乗客にとっては経営側も労働側もなく、しでかしたことへの非難でした。ラッシュ時の遅れを乗客が理解すると、思ったのでしょうか。労働側は賃金の引き上げを要求しているのは理解したものの、その態度の悪さは何たること。反感をかいました。

政治が介入しての労使会議で収束した順法闘争は、誰も良い結果を得られませんでした。それが引き金となり、組合は活動が停滞して行きます。その後、国鉄解体、分割民営化の道を進みます。大変分かりやすい終焉を迎えたと呟く声が聞こえてきます。

来賓のザンビア共和国公共事業大臣F・ムリキタに謝罪

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この日はザンビアの公共事業として、ムリキタが来ていました。鉄道近代化計画を立て、カナダの援助で車両の買い付けに来たのです。日本を含めて、各国はこれに対し受注をしようとしのぎを削っていました。

ザンビアの大事な商談に対して、とんだ失態をしたものです。このときのザンビアの裁量近代化計画は国家あげての事業ですから、750両、客車56両、機関車12両を購入予定でありました。民間レベルでは大勢の役員の首が飛ぶでしょう。

「首都圏通勤交通現状打開のための提言」を発表

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1974年に国鉄首都圏本部は以下の、首都圏交通現状打開のための提言を発表しました。

III 国鉄が今後行なうべき諸施策について
(前略)第四に、異常時に対する配慮を国鉄は積極的に推進する必要がある。異常時発生の場合の旅客の心理的不安を念頭におき、ラッシュ時の混雑の限界基準、旅客制限策、異常時における無線による乗客への列車運転情報の提供を検討することが必要である。このことは、国鉄の能力、提供し得るサービスの限界を利用客に理解してもらうことにもなるし、新しい交通体系整備の必要性につき、社会一般の認識を高めることにも役立つと考えるからである。
IV 国が果すべき役割と施策について
(1) 通勤交通体系の計画は住宅地開発計画、都市計画、都市再開発計画、地域開発計画などとの連係のもとに総合してたてられなければならない。従来ややもすれば、輸送力と無関係に、大規模住宅開発計画が進められ、通勤輸送に大きな混乱を引き起こして、また、そのあと処理を鉄道が自衛的に引受けることになった例が多いが、そのようなことは避けなければならない。(後略)
(2) 各交通体系の建設コスト、運営の費用を、大きな開発利益をうける沿線の住民、土地所有者、集中の利益をうける都心の事業所、直接の受益者である利用者がそれぞれの受益に応じて、校正に負担すること、また、各交通機関間にも通路費など基礎施設費の負担の公平を期し、バランスのとれた交通体系の実現をはかることが必要である。このため、税制、政府資金の運用による財政措置、運賃制度などを効果的に考えるべきである。(後略)
VI 利用客及び関連する企業の協力について
(1) 地域別、線路別に輸送力に限界のあることを利用客にも良く認識してもらうことが必要である。効果は小さいようでも時差通勤、通学の奨励と話し合いを今後とも行うべきである。特に、高等学校の登下校の時間については国鉄と密接に協議してもらいたい。
(2) 都心における中枢管理機能の集中は、年々通過交通を激増させ、その混雑打開のために多大のコストを必要とするにもかかわらず、コストの負担は必ずしも適正ではない。勤労者の交通上のコストは、企業よりも国鉄やその他の大量輸送機関が多くを負担している現状である。一方、通勤定期運賃は企業が負担する傾向にあるので、都心部に向う大量の通勤需要を発生する企業については現在の割引制を廃止して、その全額を企業が負担することも考えられる。(後略)— 「国鉄首都圏交通体制調査会 首都圏通勤交通現状打開のための提言
(出典:Wikipedia)

打開のための提言はいくつかの項目に分かれています。異常時の配慮、都市計画、都市再生計画、住宅地開発計画、地域開発計画、等の連携のもとに総合して立てる。交通体系の建設コスト運営の費用の負担などが含まれています。

提言を実行するのには、数ヶ月から数年以上かかります。その提言が実行されたかどうかは一目瞭然です。時は令和の時代に入りました。国鉄は民営化され、駅の券売機には女性のスタッフが案内係として立っている姿を見かけます。車内の車掌にも、サービスの認識が備わっています。

上尾事件後に車両を緊急発注

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近郊型の電車115系300番42両を発注しました。冷房が完備されているタイプです。上尾事件ではすし詰め電車で乗客が圧死しています。死亡者は出ていないと発表されていましたが、ネット上では一名の圧死が囁かれています。未確認です。それを受けて国鉄は急遽輸送の改善を迫られます。

10月に導入された車両は防火対策、側窓のユニット化などが改善されています。上尾事件の原因の1つとされているのは急行用の電車を運用していたことであると言われています。長距離用の急行車両は座席に座って行くように出来ていました。立ったまま移動する作りではなかったのですが、赤字続きで、新型車両を導入できませんでした。

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急行形の電車にはつり革がありません。この電車にすし詰めにされたことがさらに状態を悪化させました。急行車両であったので車両の定員は800人でした。 115系の近郊形の電車であれば1800名が乗れるはずです。もしも順法闘争がなくても利用者の怒りは爆発してただろうとの見方もあります。

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