陵一の父親と聴久子の父親は双子の関係であったことから、陵一と聴久子も従姉弟の関係にありました。従って、聴久子は類似したDNAを持つと考えられる陵一を種の保存のため本能的に狙っていたと考えられます。
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聴久子をホラ-漫画の歴代人気ヒロインと比較して
ホラ-ファンの間では、歴代ホラ-漫画の中でも「富江」やリングの「貞子」に呪怨の「伽耶子」など、恐ろしくも美しい人気ヒロインが支持されていますが、蟲姫の「聴久子」は彼女らと比較できるレベルでしょうか?
伊藤潤二作「富江」は出色の青春ホラ-
過去に何度も映画化、ドラマ化され、菅野美穂や宝生舞が主演した人気作品です。ヒロインは、文句なしの美しくしなやかな細身の体と艶やかな髪を持ちますが、その正体は、男達に何度殺されバラバラにされても再生、復活するという不気味な存在です。
美しい富江ですが、写真を撮ると分裂した自己が不気味な形に映ってしまいます。女性への恐怖を描きながら、彼女に振り回される男達の滑稽さも描かれていて面白い作品です。
日本を代表するホラ-ヒロイン「貞子」
こちらも映画やドラマ化され、様々な女優が貞子役を演じました。仲間由紀恵、木村多江などです。リングの原作では、貞子は化け物ではなく悲劇的な運命を辿ってきた一人の美しい女性として描かれていました。
1998年公開映画版の貞子は、非常に長い黒髪を、顔を隠すよう前方から下へ流し、一度見たら忘れらない不気味な姿をするようになりました。
日本人が選ぶ最も怖い映画「呪恐」の「伽耶子」
伽耶子の正体と出現は、「何かがいる」と視覚以外で感じます。つまり声にならない「音」です。そして恐怖感の極大化で、視覚的に闇から実体化し現実の恐怖となります。
ところで、伽耶子の顔色は悪く青白い。しかし顔の青白さすらも全て黒い長髪によって漆黒に入り込みます。この映画を観た後は、身近の闇の見え方が変わってくるかも知れません。
蟲姫のヒロイン聴久子も三傑に食い込むか?
まず、先の三人同様、ホラ-ヒロインに必須要素の長い黒髪を持ちますし、見た目の美しさや妖艶さという点では「富江」に匹敵するレベルで文句なしです。又、グロテスクではありますが、不気味さや怖さという点では、貞子や伽耶子には及ばないでしょうか?しかし哀切さでは先の3人に無いものを持っています。
結局、総合評価では、十分三傑の一角に食い込める実力があると思えます。他作品のように、今後映画化、ドラマ化され有名女優が演じれば、更にその人気は上がるでしょう。
蟲姫を読んだ人の感想や評判は?怖いけど美しい?
ここでは、読者からの主だった感想や評判を紹介します。とにかくたくさんの蟲が蠢く姿はダメだというものから、ヒロインの妖艶な姿に心惹かれる、あるいは作画が緻密できれいなど様々です。
読者からは「夢に出てきそう」「ゾワっとする」など感想が
とにかく蠢く大量の虫の描写が多く、それを気持ち悪いと感じる人は本作を見るのは控えた方が良いでしょう。
加えて、蟲姫が相手にキスして、口から触手を伸ばし、内側にねじこんで洗脳したり、あるいは、腕からトゲはやしたり、毒を打ち込んだりするシ-ンは悍ましいものです。夢に出てきそうとかゾワっとするなどの感想が多いところです。
「作画が綺麗」「美しい」「耽美」などの感想も多数
一方で、ヒロインの凛々しい顔立ちとセーラー服にストレートな黒髪をなびかす姿は美しくもあります。そして強いオーラを感じさせる彼女の立ち姿そのものが人を強く引き付けます。
これは作画を手掛ける里見有さんの絵が耽美的で、作品の雰囲気にも合っていて素晴らしいところに依ります。特にこのヒロインのちょっと病的な美しさをよく表現しているように思えます。漫画としての完成度も高くすばらしいです。
その他の「虫系」漫画のお薦め作品は?
「蟲姫」では、多種大量の虫が蠢き殺人するシ-ンが多く、苦手な人には耐えられないという感想も多かったですが、一方で「恐いもの見たさ」というか、虫系パニックホラ-漫画を好む方も多いと思いますのでその人達のためにいくつか代表作品を一部ネタバレ注意で紹介します。
食糧人類
巨大な体に高い知性を持つ虫が人類を制圧する話です。人類は虫の食糧になってしまうのか、将又何らかの策で抵抗が始まるのか今後の展開が愉しみな作品です。読み易い文章と癖のない絵でサクサク読み進めます。
テラフォーマーズ
人類が火星の地で、想定外の進化を遂げた生物と戦う話。その生物の正体は、人間並みの大きさで暴れる「ゴキブリ」でした。そして「人間自身も虫となって」対抗していくというスト-リ-が面白いですし、台詞の言い回しも恰好いいです。
蟲姫のオススメできる点・オススメできない点は?
前章で、「蟲姫」という作品に対する作画的評価をお伝えしましたが、ほかにも科学的根拠に基づくしっかりしたスト-リ-展開やヒロインのキャラクタ-の魅力を支持する評価もあり、ここではそれらも踏まえたお薦めポイントを紹介します。
蟲姫は無駄なく伏線を回収する傑作であるためオススメ!
蟲姫は、単なるホラ-漫画ではなく、科学的な知識、環境問題意識とテ-マ設定のある骨太なサイエンスものの側面も持ち、妖艶なヒロインのキャラクタ-設定と相俟って、魅力的な作品にしています。
更に、随所に伏線を敷き、無駄なく回収していくスト-リ-展開は、思わず読者を引き釣り込みます。最後の結末自体も今後の続編を期待させる秀逸な伏線となっているようです。
蟲姫のヒロインは不気味なだけでなく悲劇性が魅力でオススメ!
ヒロインがグロテスクに人を攻撃する悍ましい姿の合間に、人でなくなった自分を嘆き悲しみ、時折涙を流す姿も垣間見え、彼女の生い立ちが明かされるころから、感情移入が止まらなくなります。
蟲姫はグロテスクな描写が苦手な方にはオススメできない作品
とにかくベ-スとして、どの絵も線が細く、綺麗で描写が緻密という特徴があり、ホラ-感を増す効果があります。その中で、多種多様な虫がたくさん登場してくるので、虫の苦手な人にはトラウマになりそうです。
このほかの日本の代表的ホラ-作品にも興味のある方はこちらもご覧ください。
蟲姫の原作者はホラーとSFマンガの名手・外薗昌也さん
1961年、鹿児島県生まれの漫画家です。代表作に「犬神」や「鬼畜島」があります。初期には、おとぎ話のようなファンタジー系の漫画を出してます。その後、旧約聖書を題材にした漫画も発行しました。
後半には「犬神」で大きく画風が変わります。最近では、SF小説の題名を使うなど、SFに対する思い入れが強く感じられます。
幅広いジャンルを手掛けてきた外薗昌也さん
1980年頃から活動を開始し、デビュ-作は「月刊少年チャンピオン」に掲載された「鏡四郎! 鏡四郎! 」でした。以降、主にSF漫画やホラー漫画を描きます。
1990年代半ば頃からは、「ガールフレンド」などラブコメディ作品などもてがけます。更に2012年には実話怪談本「赤異本」を刊行します。
蟲姫の原作者・外薗昌也さんの他の作品一覧
以下、年代順に列挙してみます。「鏡四郎! 鏡四郎!」、「鏡四郎がゆく」、「Silent runner」、「ラグナ戦記」、「青の時代」、「雨の法則」、「最後の竜に捧げる歌」、「エンヴリオン」、「聖なる侵入」、「パンプキンナイト」などです。パンプキンナイトのネタバレ記事に興味のある方はこちらもごらんください。
蟲姫の作画担当はイラストレーターの里見有さん
里見有といえば、引き込まれるような一枚絵で有名ですが、本作でも初漫画とは信じられぬほどの高いクオリティを感じさせます。イラストと違い、漫画はコマ割りなどいろいろ面倒な工夫が必要ですが見事にこなしています。
webでオリジナル作品などを公開している里見有さん
例えばWebサイト「恐ろし屋.com」にアクセスすれば、里見有さんの本作を含む代表作品5点について、無料で漫画を見ることができます。
蟲姫の作画担当・里見有さんの他の作品一覧
以下に列挙します。「血海のノア」、「火傷少女 」、「海にはワニがいる 」、「赤い地獄 」、「おどって!ウズメ」、「たたらをふむ女神カナヤゴ―ゆかいな神さま」、「奇病探偵 眠れない夜」、「わたしのともだち」などです。
蟲姫はグロテスクと切なさが融合した全3巻の傑作
本作は一見、単なるホラ-漫画と思われますがそうではありません。生物学的科学的根拠に基づき、「種の保存」というテーマを持つサイエンスフィクションです。伏線の置き方などスト-リ-仕立てもしっかりしており、ぐいぐい引き込まれる秀作と言えます。
又、ヒロインの蟲姫も捕食する姿はグロテスクな怪物ですが、その裏に悲しい生い立ちの哀感を秘め、妖艶な美しさと相俟って魅力的なキャラクタ-です。そして陵一との最後の結末は、今後の新たな展開の伏線のようでもあり、続編が待ちきれません。
他の日本の代表的ホラ-作品はこちら
「パンプキンナイト」のネタバレ記事はこちら