致死性の毒を持つ「スベスベマンジュウガニ」が小さくてかわいい!食べなければ危険じゃない?

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毒を体表面に分泌したり、ハチの針やヘビの牙のように毒を注入したりするようなことはないので、スベスベマンジュウガニは触る程度なら問題はなく、ハサミで挟まれてもちょっと痛いだけで済むのですが、次項で説明するように万が一口にしてしまった場合、大変なことになるので、十分注意が必要なカニなのです。

スベスベマンジュウガニを食べてしまったら!?

大前提、絶対に食べちゃダメ!!!

スベスベマンジュウガニの毒は、外骨格である殻の部分と足やハサミの部分の筋肉に含まれています。加えていずれの毒もおもに水溶性なので、身を食べなくても、それでだしをとったお味噌汁もアウトです。そもそもテトロドトキシンも麻痺性貝毒も通常の調理レベルの加熱では分解・無毒化しないので、繰り返しますが決して食べてはダメです。

食べてしまった場合の症状

テトロドトキシンと麻痺性貝毒は中毒症状がよく似ていて、どちらも神経に作用し体が麻痺するという症状を引き起こします。テトロドトキシンの場合、人間の致死量は1~2㎎と推定されており、摂取してから20分~3時間ほどで体のしびれや麻痺が起き、次第にそれが全身に広がり、重篤な場合は麻痺による呼吸困難で死亡する場合があります。

ヤバいと思ったら即、医療機関へ!!!

同じ毒を持つフグでは、例年、数名の死亡事例が報告されています。しかしテトロドトキシンも麻痺性貝毒も麻痺による呼吸困難が死亡原因になるので、人工呼吸器による呼吸確保その他の適切な処置が速やかになされれば確実に回復が見込める中毒です。万が一、中毒の疑いがある場合は速やかに医療機関に駆け込みましょう。

何のために毒を持っているの?

正確なところはいまだ謎

毒を持っていれば、外敵に襲われにくくなるといった効果が期待されますが、甲殻類をエサとして好むチヌ(クロダイ)などは、スベスベマンジュウガニも平気でエサにします。また、スベスベマンジュウガニも含むカニの仲間は、外敵に襲われたときに、自ら脚を切り離して、その間に逃げる「自切」という行動をすることがあります。

もし自らの防御のためという明確な理由で毒を持っているのであれば、有毒のカニと無毒のカニで、この自切行動の行われ方に何らかの差が出ると考えられるのですが、スベスベマンジュウガニの自切の頻度や割合は、ほかの無毒のカニとあまり変わらないという調査結果があり、彼らが毒を持つことの意義は、実は正確には分かっていません。

スベスベマンジュウガニは飼育できる!?

ペットショップで購入可能!

見た目は小さくてかわいらしいものの、実は恐ろしい毒を持っているスベスベマンジュウガニですから、ほかの水生動物のようにアクアリウム飼育など思いもよりませんが、実は水生動物を扱うペットショップでも販売されており、立派な飼育対象とされている生き物です。

また、その気になれば、生息地の岩場のある海岸で、自分で採集することができますし、ペットショップが近隣にないという場合でも、ペットショップによっては生体通信販売で扱っているところもあり、入手すること自体、そう困難な生き物ではありません。

一般的なカニ飼育の方法でOK

スベスベマンジュウガニは強力な毒を持ってはいますが、基本的な飼育方法は他のカニ類と変わりません。十分な大きさの水槽を用意して、底に砂や砂利を敷いて、海水(人工海水)を入れ、すみかや隠れ家になるような石などを配置して、水質管理用のフィルターや温度管理用のヒーターをセットして、といった基本的なカニ飼育の方法で飼育できます。

エサは野生環境では、貝類やゴカイといった肉類だけでなく海藻も食べる雑食性なので、市販の人工エサだけでなく、魚肉の切れ端や貝のむき身などで対応できます。もちろん飼育する場合、生き物を飼うわけですから、当然それなりの準備と手間はかかりますが、何か特殊な設備や技術が必要になる生き物ではありません。

水族館でも見られるスベスベマンジュウガニ

意外と多い水族館での展示

スベスベマンジュウガニを展示している水族館も多くあります。「カニ・エビ類」や「磯辺の生き物」といったコーナーだけでなく、「危険生物」や「毒のある生き物」といったコーナーで常設、もしくは特別展などの際に展示されているものを観察することができます。

スベスベマンジュウガニだけじゃない!危険な有毒カニ

ウモレオウギガニ

スベスベマンジュウガニと同様の毒を持ち、甲羅幅8㎝前後のオウギガニ科の有毒ガニで、日本では主に南西諸島付近や小笠原諸島に分布しています。近年、和歌山県沖でも発見され、生息域の拡大の可能性を指摘されています。最古のカニ食中毒公式事例とされる1965年の鹿児島県の事例は、このウモレオウギガニが原因だったと考えられています。

ツブヒラアシオウギガニ

日本では南西諸島付近に生息する、甲羅幅5㎝前後のカニで、甲羅に特徴的なつぶつぶがあるのが特徴です。やはりスベスベマンジュウガニと同様の毒を保有しており、死亡例も報告されています。スベスベマンジュウガニやウモレオウギガニ、そしてこのツブヒラアシオウギガニのようなオウギガニ科のカニは、有毒の場合が多いので注意が必要です。

まとめ

小さな外見と、人を食ったようなおかしな名前を持っていながら、その体内に恐ろしい猛毒を隠し持ったスベスベマンジュウガニでしたが、彼らも磯辺に暮らす海の小さな仲間たちの一人(一匹)です。

何度も言いますが、間違っても口にしてはいけません。しかし、軽くつついたりする程度であれば問題ありませんので、海辺や水族館でその姿を見かけたら、驚かせないように、そのかわいらしい姿を、ぜひじっと観察してみてください。