ヌタウナギってどんな生き物?
見た目がぬるぬるとした粘液に覆われていて細長い魚の形をしています。なかなか触るのも抵抗があるグロテスクな生物ですが、どのような生物なのか、ご紹介します。
ウナギと言ってもウナギではない?
細長い見た目と名前にもウナギと入っていますが、顎を持っていない無顎類に属する水生生物であることから、あまり生物学上は近い関係ではなく、それどころか魚類でもないという考え方もある生物です。
ぬめっとした液体を出し、海水と混じる様子が沼田(ぬた)のようになるようすが名前の由来とされています。英語では、ハグフィッシュ、スライムイール、韓国ではコムジャンオと呼ばれ親しまれています。
強力な粘液には気を付けよう!
皮膚にぬめっとした液体に覆われており、一旦手につくと取れにくいような感触がします。釣れた時に、道具を粘液まみれにしてしまったり、攻撃してきた魚のエラに詰まらせて窒息させたり、漁師を困らせてしまう存在でもあります。海外ではこの生物が原因のスリップ事故が起きたりするほど、強力な液体です。
実はとっても美味しい!
グロテスクな見た目からはとても想像できませんが、実は生、焼き、煮る、炒めるなど、どの調理方法でも美味しく食べられる生物です。日本ではあまり見かけませんが、韓国では人気の食材でわざわざ海外から輸入されるほどの人気で需要があります。食感は茹でたタコやホルモンなどに似ていて、様々な料理に合います。
ヌタウナギの生態について
目にすることもあまりない生物でスーパーにも普段並ぶことがないので名前を聞いてもあまりピンと来ることがないと思います。生息地やどんな食べ物を捕食するのか、詳しくご紹介いたします。
ヌタウナギの基礎知識をつけよう!
この生物は無顎綱メクラウナギ目の海産物です。皮膚の裏にたくさんのぬるぬるとした粘液が入った袋があり、危機を感じるとそこからたくさんの体液が出ることによって体がぬるぬるします。
眼に水晶体がなく眼が見えないので、イソメクラと呼ばれることもあります。口の両側あたりに4対のひげがあり、体の両側には16対の鰓孔を持っています。大部分が軟骨でできており、尾ビレ以外の胸ビレ、腹ビレは持っていません。
脊椎動物として最も原始的な一群で、硬骨魚類で体型が似ているウナギ類とは全く別の種類で現生の他の魚類からも最も遠縁のグループに属しており、魚でもありません。ヤツメウナギとは最も近しい生物とされています。詳しく紹介している記事があるのでご参考ください。
ヌタウナギの生息地と分布
浅場から水深10〜270メートルの海底の砂泥中、日本では主に宮城県仙台湾〜九州南岸まで生息しています。朝鮮半島では南部に分布しており、韓国ではメジャーな食材です。比較的浅瀬にいますが、他の種類はほとんどの種が深い海に生息しています。
ヌタウナギの生息環境と食性
夜行性であり、昼間は海底の泥の中に潜んでいて、魚類、貝類、エビやカニ、多毛類なども食べてしまいます。ゆっくりと蛇行して泳ぎ、刺激を受けると8の字に身をよじって、獲物にくっつき舌歯を獲物の体内や腐肉に突き刺して肉や内臓をそぎ取るように食べます。
せっかく漁網に入った魚が粘液まみれになり、体や内臓を傷つけられてしまうので漁師には嫌われています。
事故の原因にもなるヌタウナギの強力な粘液の正体は?
体がぬるぬるした液体に覆われている生物ですがこのぬめりが原因で様々なトラブルが起きてしまいます。この生物にとっては敵に向けて放つ大事な粘液で、その成分も本来なら特に悪いものではありません。この成分などについてご紹介します。
アメリカでは事故の原因に
2017年の7月13日、アメリカ西部オレゴン州で、この生物が原因の交通事故がありました。ヌタウナギを積載したトレーラーが横転したことで、道路に粘液が広がってしまい、後から来た車4台が次々とハンドルを取られスリップ事故を起こしました。この事故で乗用車1名が負傷しましたが、命には別状はありませんでした。
襲ってきた魚を殺すことも
心臓が複数あり、捕食者に噛みつかれれば、ぬめり液を出しながら自分の体を結び敵から逃れたり華麗な攻撃能力が備わっています。危機に陥ったり苦痛な場合に、即座に1秒あたりカップ4杯分にも及ぶ体液を放出します。攻撃してきた魚はエラを詰まらせ、窒息。他には穴に入り込んだりして撃退します。
強力な粘液の正体
ぬるぬるの主成分は、納豆や山芋の成分であるムチンであると言われていましたがその見解は間違いであったという説があり、ムチンでないならこれはなんなのでしょう?
このぬるぬるには毒がありません。現在、繊維として利用できないかの研究が進められています。近々、私たちもこの粘液からできた服に身を包むことになるかもしれませんね。
ヌタウナギはとっても美味しい
日本ではあまり馴染みがありませんが、韓国ではとてもメジャーな食材のようです。日本でも釣った人が美味しく食べているので、その味についてご紹介します。
その味は?
食感はタコやホルモン、ミノなどを食べているようなもっちりさで、コリッとしています。鳥のハツ刺しのような鉄分の風味と、新鮮なエイを食べたときに感じる塩化物由来の塩味が付いていて、何もつけない状態でも独特な塩味がしていますが、魚と違い生臭さはないため、どんな調理にも合います。
韓国では人気食材
韓国ではコムジャンオと呼ばれ、釜山では普通に食卓にも出てくる人気食材です。韓国料理にすると、コチュジャンベースのソースに絡めて調理することが多く、コチュジャンのニンニクの匂いがさらに食べやすくさせて美味しくなるそうです。